014-自由への代償
「でも、私は彼女を殺していないし、殺すつもりもなかったんです。」
私は真っすぐな目で彼の同意を求めた。
「本当に、私はただ彼女に興奮剤を手配しただけで、あとのことは全部森太郎が仕組んだことなんです!」
松田壮磨はしばらく沈黙し、眉をひそめたまま真剣な眼差しで私を見つめた。
「坂本美絵、続けて話してくれ。」
私はゆっくりと口を開いた。声は少し沈んでいた。
「あの日は偶然の連続でした。」
「隣の個室の客たちが何を食べたのか分からないけど、突然次々に服を脱ぎ始め、ソファの上で服を振り回して遊び、場は一時騒然となったんです。」
「私は怖くなって、すぐ隣の森太郎と近藤結を探しに行きました。」
「扉を開けた瞬間、近藤結が森太郎の上に乗っているのを見てしまいました。薄暗い灯りの下、森太郎の顔には獰猛な表情が浮かんでいて、まるで火の中に追い詰められた狼のように、いつでも襲いかかろうとしているようでした。」
「その場の私は、入るべきか引き返すべきか分からずに立ち尽くしていました。」
「扉の音に気づいた近藤結は振り返り、落ち着いた表情で森太郎から降りながら、何事かと尋ねてきました。」
「私は言葉を詰まらせながらも隣の個室の異様な様子を伝えると、近藤結は嘲るように笑いながら言いました。」
『まだ私が見せたものが足りないみたいね。そんなことで慌ててどうするの?これじゃあ両親の前で反抗なんてできないわよ?』
「私は呆然としました。まさか近藤結は、私と森太郎の計画を既に知っているのか?」
「近藤結は森太郎のズボンを踏みながら彼の後ろに回り、手首を縛っていたネクタイをほどきました。」
「森太郎は低い声で答え、手首を動かしながら言いました。」
『彼女にはきちんと説明するつもりだ。』
「二人が身支度を整え隣の個室に戻ると、部屋は静まり返り、若い男女があちこちに倒れていました。」
「近藤結はまるで慣れた様子で酒卓に近づき、小瓶を手に取り私に眉をひそめて言いました。」
『見て、この人たちの状態はこれのせいよ。試してみる?』
「私は顔色を変えた。彼女は笑いながら言いました。」
『冗談よ。これは絶対に使っちゃだめ。両親にバレたら終わりだから。』
「彼女は瓶を灯りの下でじっと見つめ、森太郎に一瞥を送り、それから瓶を私に投げ渡しました。」
『彼らが目を覚ましたら、これがどこから来たのか聞いてみて。私も試してみるわ。』
「その夜、森太郎は私に、近藤結が真相を知った理由を教えてくれました。――あの冷酷な男は彼女に、私が彼女の代わりに家に戻り、操り人形になると偽の情報を流していたのです。そして彼女自身は自由に羽ばたけると思わせていたのだと。」
「自由への渇望と家庭への反抗が、近藤結に即座にこの計画を承諾させたのです。」
「彼女は何の疑いもなく、私の教師となり、整形を教え、彼女の生活に溶け込ませ、時には意図的に、時には無意識に私の言動を指導しました。」
「彼女はまったく気づいていなかった。森太郎の最終目的が、彼女自身を完全に消し去ることだとは。」
「そして当然のように、私は彼女に興奮剤を届け、彼女が森太郎に強化された毒を飲み込むのを目の当たりにしました。」
「彼女は死んだ。――最も幸福な瞬間に、だ。」