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フグに転生したら勇者少女に飼われた件  作者: 空戯ケイ
第6章  いざ、港町ベーネストへ!

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第57話  場所がないなら壊して作ればいいじゃない


 ジェーンの派手な〈念動魔法〉――サイコキネティック・パンチ。

 その力の衝撃波により海を掘削し、露出させた海底にジェーンが降り立った。


 ちなみに俺は普通に海の中に、ぽちゃんと落下し、海を泳いでジェーンの元に向かう。

 パンチによって露出された海底には、普段姿を見せることがない岩肌や海藻、貝類にヒトデなどが太陽の光に照らされていた。

 

「ぷくぷく……!」


 す、すげぇ……!

 魔法の規模がそこらの人間の比じゃない。


 これが『滅びの呪海』に派遣された勇者の中で最強と言われる【念動の勇者】――ジェーン=バノアの真骨頂か……!

 しかもさらに凄いのは、露出した海底の周囲の海水が元に戻らないこと。

 まるでジェーンを中心に見えないバリアが展開されているかのように、強引に押し退けられた海水の塊は戻ることができず不自然な形で留まっている。


 俺もジェーンの元に行こうとするが、見えない壁のようなものに押し返される感触があった。

 ちょうど、磁石のS極とS極を近づけた時に互いに反発しあう磁場が形成されているのに近いだろうか。 

 ジェーンの元に近づけば近づくほど、謎の力の壁によって後ろに押し返されてしまうのだ。

 この力で、海底の露出を維持しているのだろう。


「うん! やっぱいつもより魔法の威力が強いッスね! エレナ先輩の付与魔法さまさまッス!!」


 ジェーンはぐるりと自分の周囲の海の壁を眺めて、テンション高めに独りごちる。

 ああ、これはエレナの付与魔法で強化されているのか。

 とはいえ、凄まじい力には違いないんだが。


 そう言えば、ジェーンってどれくらいの強さなんだろうか。

 まだ確認できていなかったので、こっそり調べてみよう。

 いざ、鑑定!


 ――――――――――――――――――――

 名前:ジェーン=バノア

 レベル:66

 HP:3579/3579

 MP:2405/2437


 物理攻撃力:5196(+2000【パワーブースト】)

 物理防御力:3024(+2000【ディフェンスブースト】)

 魔法攻撃力:2847

 魔法防御力:1241

 敏捷性:5545(+2000【スピードブースト】)

 器用さ:3006

 スタミナ:4251


 魔法:念動魔法、速撃魔法


 称号:選ばれし勇者、

 ――――――――――――――――――――


 おお、やっぱ凄いな!


『滅びの呪海』の最強勇者と言われるだけあって、ステータス値がバランスよく高い。

 そこにエレナの付与魔法も加わって、さらに高いステータス値になっている。


 今さらだが、エレナの付与魔法は一律で二千ポイントステータス値を上昇させるみたいだな。

 そのおかげでジェーンの『物理攻撃力』と『敏捷性』が五千の大台に到達している。

 海魔である俺からみても、五千のステータスはかなり強い部類に入ると断言できるぞ。

 少なくとも表層付近の海魔に遅れを取ることはないだろう。


「ぷくぷく」


 海の中で隠れ潜んでジェーンの動向を見守ってるのもあれなので、俺はジェーンの〈念動魔法〉の壁をぐぐぐ……きゅぽん! と突き破った。

 海水を操ってコンパクトな水の球体の中に漂い、海底に立つジェーンの元に向かう。


「あ、ぷっくん! 気にせず魔法を撃っちゃったッスけど、大丈夫だったッスか?」

「ぷくっ!」


 これくらいならへっちゃらだ!

 なんせもっと恐ろしい攻撃を何度も経験しているからな!


 ジェーンは無傷で元気にヒレと体を動かすフグを見て、ニコリと笑う。


「大丈夫そうなら良かったッス! それじゃあ早速――」


 ジェーンは背後にふよふよと浮かばせて展開させた六本の『魔除柱モノリス』に目を向ける。

 そして〈念動魔法〉を操り、一本の『魔除柱モノリス』を自身の前に持ってきた。


「『魔除柱モノリス』を打ち込む場所ッスけど、どこがいいッスかねぇ~? あんまり凸凹してる海底だと固定が甘くなるんで、できるだけ平坦な場所が良いんスけど。あと、地盤のチェックも大事ッスね。砂場だとすぐに倒れちゃうッスから」


 なるほど。

 たしかに海底に『魔除柱モノリス』を打ち込むと一口に言っても、打ち込む場所は重要だ。


「なんとなーく、この辺りかなって目星はつけてたんスけど……いざ実際に打ち込むとなるとちょっと不安になってくるッスねぇ。もっと良い場所があるんじゃないかって思っちゃうッス」


 ジェーンは付近の海底を練り歩きながらキョロキョロと地面を見た。

 だが、人力で一つ一つ確認していたら時間がかかってしまう。


 よーし、ここは俺に任せろ!


「ぷくぷく~!」

「ん、どうかしたッスかぷっくん?」

「ぷくくっ!」

「……もしかして、ウチの代わりに『魔除柱モノリス』を打ち込みやすい場所を探しに行ってくれるッスか……?」

「ぷくっ!」


 よく察してくれたジェーン!

 その通りだ!


 ジェーンはパアッと表情を明るくさせた。


「それは助かるッス! 海魔のぷっくんなら、ウチよりも海には詳しそうッスもんね! あ、できたら一本目の『魔除柱モノリス』はこの辺りに打ちたいんで、近場で探してもらえるとありがたいッス! ……できそうッスか?」

「ぷっくく!」


 ジェーンの要望を聞き届けた俺は、水の球体を動かして再び〈念動魔法〉によってせき止められている海中へと戻った。

 ゴボゴボッと水中の鈍い気泡の音が響くのを感じながら、すいすい~と海を泳いでいく。

 比較的キレイな海なので、見通しは悪くない。


 俺は海底付近に移動し、良さげなエリアがないかチェックしてみる。


「ぷくぷく~」


 ひとしきりジェーンがいる周囲の海を泳いでいると、ひしめくように丸みを帯びた岩窟の集合体を発見した。

 下を見ると硬い岩盤に覆われていて、地盤も安定していそう……なんだが、『魔除柱モノリス』を打ち込むにはちょっとガタついてるか。


 残念だが他を探そうとした瞬間、脳内で音声が響く。


《岩の凹凸が気になるのであれば、その一部を破壊することを推奨します》


 アドバイザー!

 破壊ってどういうこと?


《マスターの予測通り、この岩の海底であれば『魔除柱モノリス』を打ち込むには申し分ないと考えます。ただ、『魔除柱モノリス』を打ち込むのに最適な部分がないのも確かです。ゆえに、マスターの攻撃によって『魔除柱モノリス』を差し込めるぐらいの大きさの穴を開けるのはいかがでしょうか》


 つまり、最適な場所がないなら破壊して最適な場所に作り替えてしまえ、ということですな?

 なかなか脳筋な戦略ではあるが、合理的であることも間違いない。


 よし、それでいくか!

 この岩の集合体のできるだけ中央部に移動して、と。


 俺はおもむろに体内を空気で満たした。

 フグの体が、ボコッと途端に膨らむ。


 岩の一部を砕いて破壊するくらいなら、あまり大規模なスキルはいらない!

 威力を調整しての、発動!

〈空気弾〉!!


「ぷくっ!」


 俺は口からボッと空気砲を射出。

 海を直進する空気の塊はそのまま岩肌に衝突し、ドドォォオオオン……!! と鈍く海を揺らした。

 たちまち視界を覆い隠す岩の残骸。

 粉塵のように舞う細かく砕かれた岩の粒を〈水属性の大器〉で吹き飛ばしたら、あら不思議!

 さっきまで岩でひしめいていた場所に、一ヵ所ポツンと穴ができたではありませんか!


 あとはジェーンを連れてきて、ここに『魔除柱モノリス』を打ち込めば良いってことだな!?


《はい。周囲に形成された岩窟も自然の防壁になることで海流の勢いも多少減衰するでしょうし、『魔除柱モノリス』を打ち込むには適したエリアであると推測します》


 よーし!

 アドバイザーのお墨付きもいただいたことなので、俺は急いで踵を返す。


 素早く海を横切った俺は数秒たらずでジェーンの元に辿り着いた。


「あ、ぷっくん! もう帰ってきたッスか!? 速かったッスね! それで、良さそな場所はあったッスか?」

「ぷくぅ!」


 俺は全力で首肯し、こっちに着いてくるように、ということをアピールする。


「……もしかして、着いてこいってことッスか! 了解ッス!」

「ぷくく~!」


 意外とジェーンの察しが良くて助かる。

 ジェーンはダッシュで俺の後ろを着いてきた。

 それに合わせてジェーンの〈念動魔法〉の発動ポイントも変化し、露出する海底も移動していく。

 まさにジェーンを中心として海を割っていると形容するのが正確だろう。


 そしてジェーンを目当ての場所に案内した。


「なんかゴツゴツした岩が多いッスけど……あ、ここだけちょうど良さそうな穴が空いてるッス! ここに『魔除柱モノリス』を打ち込めってことッスね!?」

「ぷくっ!」


 バッチリその通りだー!


 ジェーンは手にしていた一本の『魔除柱モノリス』を片手で担ぎ、切っ先が尖った方を下にしてその穴に狙いを定めた。


「じゃあ行くッスよー! まずは一本目の『魔除柱モノリス』……打ち込むッスー!!」


 ジェーンが勢いよく『魔除柱モノリス』を振り下ろした。

 ズゥン! という鈍い音と振動を感じつつ、『魔除柱モノリス』がどんどん穴に身を沈めていくのを眺める。

 途中でつっかえたりした時も、ジェーンが魔法で上から押し込んで無理やり『魔除柱モノリス』を地中にめり込ませていく。

 そして本来の『魔除柱モノリス』の六割くらいまで穴に沈めたところで、ジェーンがパッと手を離した。


「よっしゃ! 『魔除柱モノリス』打ち込み完了ッス! あとはこれで起動すれば――!」


 ジェーンは打ち込み終わった『魔除柱モノリス』に触れた。

 すると、ブォン! と重低音の振動が発揮し、黒光りしていた『魔除柱モノリス』に幾何学的な模様が走っていった。


「……ぷくっ?」


 なにか大々的に凄いギミックでもあるのかと思っていたんだが、特に何も発動はしなかった。

 ただ、『魔除柱モノリス』に魔法陣みたいな幾何学的模様が発生しただけだ。


《この『魔除柱モノリス』は、魔力を乗せた特殊な周波数を発しながら振動を続けます。魔力が乗った振動が海魔が不快になる周波数帯に設定されており、魔物避けの効果が発揮されるタイプのようです》


 そういうことか。

 人間で言うなら、常に黒板を爪で引っ掻く音が鳴り続けてるようなモンってことだよな……。

 想像しただけでぞわぞわっとする!

 絶対近寄らないわ!


《ちなみに、魔物に錯覚を引き起こす視覚に作用する『魔除柱モノリス』や、魔物が不快に感じる臭いを放出するような嗅覚に作用する『魔除柱モノリス』など、その性能は多岐に渡ります。恐らく今回は海底に打ち込み、常に海中に沈んでいるという環境下であるため、『音』という聴覚に作用する『魔除柱モノリス』のデザインにしたのでしょう》


 なるほどな。

 たしかに水中だと音が伝わる速度は地上よりも早いなんて豆知識をどこかで聞いた覚えがある。

 にしても、『魔除柱モノリス』も色んな種類があるんだな。

 まあこれだけ魔物や海魔による被害があれば、こういうテクノロジーやアイテムは積極的に開発製造されているのかもしれない。


「これでオッケーッス! あとはこの調子でどんどん『魔除柱モノリス』を打ち込んで行くッスよ! 全部で二十本くらい打ち込む予定なんで、引き続きよろしくお願いするッス、ぷっくん!!」

「ぷくぷく!」


 白い歯を見せてニヒヒと笑うジェーンに、俺も最大限の笑顔で応えた。

 ……フグの顔だからニタニタした感じになってるかもだけど。



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