表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フグに転生したら勇者少女に飼われた件  作者: 空戯ケイ
第6章  いざ、港町ベーネストへ!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/63

第53話  魔装具:『魔除柱』


 ジェーンの口から飛び出た、アホみたいな名前の作戦。

 長くて一回で全部把握できなかったが、なんて言ってたっけ?


《『海魔に嫌がらせしてどっかに追い払ってやろう作戦』です》


 ナイス、アドバイザー!

 いつも冷静沈着で形式張った口調でしかものを言わないアドバイザーの口からアホみたいな台詞が飛び出てきてすごい新鮮な気持ちになるぜ!


 そんなことを思いながら、俺たちはベーネストの港へと向かっていた。

 前を歩き先導するのは、今回の作戦の企画者であるジェーン。

 意気揚々とスキップをしながら港に向かい、やがて到着。

 今日の取引はあらかた片がついたのか、港にはまばらに人がいるばかりだった。その誰もがジェーンを見ると挨拶をして通りすぎていくので、この港町におけるジェーンの立場が良く分かる。

 ジェーンも「今日もお疲れ様ッス!」と応え、元気良く挨拶を返していた。


 そして、ジェーンは大きな船舶と広い海を背景に、俺たちに向き直った。


「エレナ先輩! わざわざ着いてきてくれてありがとうございますッス!」

「私は大丈夫だけど……なにが始まるの?」

「ふっふっふー、それは見てのお楽しみッスよ! カギレレさん、例のブツを一本、出してくださいッス!」

「……あいよ」


 カギレレはため息混じりにリュックサックを地面に起き、中に手を突っ込んだ。

 パンパンに膨らんだそのリュックはマジックバッグであり、見た目以上に大量の物品が積み込まれていることが予想される。


 ひとしきひリュックの中をまさぐったカギレレはピクンと反応した。


「んじゃ、取り出すぜ。結構デカイから、ちょっと俺から離れてくれ」


 言われて、エレナは距離を取る。

 エレナに水槽ごと抱えられている俺も同じく距離を取る形になった。


 そして、カギレレは逞しい右腕の筋肉を張り、まるで巨大な大根を一息に引っこ抜くようにして踏ん張った。

 すると、リュックの中に突っ込んでいたカギレレの右手が露出し、その手にガッチリと握られた細長い形状の黒い物体をズルルルルル!! と引きずり出した。


「な、なにこれ!?」

「ぷくくっ!?」 


 何が飛び出るのかと身構えていた俺とエレナは、同時に困惑めいた叫びを漏らす。

 いや、マジでそれなんだよ!?

 見ても全く何か分からないんだが!?


 混乱する俺たちをよそにカギレレは最後のもうひと踏ん張りと言わんばかりに体を反らせ、やがてその物体の全貌が露になる。


 それは、五メートルほどある黒光りした細長い物体だった。

 いや、最初に思った感想と全く同じなんだが!


「カギレレさん、これは何なんですか?」 

「それは『魔除柱モノリス』ッスよ、エレナ先輩!!」

 

 カギレレに聞いた質問は、ジェーンが答えた。


 で、『魔除柱モノリス』って何なんだ?


《『魔除柱モノリス』とは、魔除けの効果を付与した魔装具です。その物によって効果・効能は多岐に渡りますが、主に魔物や呪いなどの悪しき存在を打ち払うために使用されます》


 ふむふむ、なるほど。

 つまり、この細長い柱みたいなのは魔物避けの魔装具ってことか。

 ちなみに、魔装具ってのは魔道具的な認識で合ってる?


《はい。何らかの魔法的な仕組みが組み込まれた物の総称として、『魔装具』と呼称されます》


 何となく情報を把握していると、エレナが控えめに手を上げた。


「『魔除柱モノリス』ってことは、もしかして海魔対策の一環だったり?」

「さすがッス、エレナ先輩! その通りッス!」


 ジェーンはカギレレが置いた『魔除柱モノリス』に手を向けた。

 するとその手が淡く光り、その光が『魔除柱モノリス』にも伝播。

 それと同時、まるでサイコキネシスのように重厚な素材を匂わせる『魔除柱モノリス』がふよふよと浮かび上がり、ジェーンの手元まで空中を這ってきた。

 おお、あれが〈念動魔法〉か!

 

「『魔除柱モノリス』って外側から衝撃を受けても倒れないように地中に埋め込んだりして使うんスよ。だから、コイツをベーネスト近海の海底に片っ端から打ち込んで、周辺の海魔をこのベーネストに近付けないようにしようって考えッス! ほら、海底に打ち込むために純粋な円柱じゃなく、先っぽを尖らせて貰ったッス!」


 ジェーンは〈念動魔法〉を操り、真横に浮かんでいた『魔除柱モノリス』を半回転させ、その片方の切っ先を俺たちに向けた。

 たしかに一見細長い円柱状の物体に見えたが、片側が先に行くに連れて緩やかに削られており、先端は鋭利に尖っていた。


 形としては、『杭』のような感じだろう。


「やれやれ、【念動の勇者】様もドワーフ使いが荒いぜ。その『魔除柱モノリス』一本作るのに結構な手間がかかるってのに、それを当たり前のようにダース単位で発注してくるんだからな」

「はっはっはー! カギレレさんの腕を信頼しての要望ッスよ! それに、『魔除柱モノリス』の素材はウチの方から提供してるんですから、製造だけに集中できて効率的だったッスよね?」

「まあ、そうだがよぅ」


 端から話を聞く限り、ジェーンの無茶振りにカギレレが付き合わされていたようだ。

 しかし、これもベーネストの人々のためならば納得もできるか。


「あ、そうだ! 『魔除柱モノリス』に必要な素材もまたストックできてきたんで、また『魔除柱モノリス』の発注お願いしていいッスか!」

「ま、またかぁ!? ううむ、個数と納期によるだろうが……代金はあるのか?」

「お金は心配しないでほしいッス! 倒した海魔を売ってだいぶ懐は潤ってるッス!」

「……はあ、分かったよ。詳細はまた後で詰めさせてくれ」

「はいッス!」


 頭をポリポリと掻くカギレレに対し、ジェーンは無邪気に笑った。


「さて、本当はここから海に潜ってこの『魔除柱モノリス』を海底にブッ刺しに行こうと思ってたんスけど……」


 ジェーンは空を見上げ、言葉を区切った。

 すでに太陽は大部分が沈みかかっていて、空は夕焼けから夜へとその姿を変えようとしている。

 薄暗くなり始めた空を見上げて、エレナが言う。


「今日は一旦宿に戻った方がいいかもね。ジェーンちゃんの作戦は、また明日やらない?」

「そうッスね! 本当はこのまま夜通しこの杭を海底にぶっ刺してやろうと思ってたんスけど、エレナ先輩がいらっしゃるなら話は変わるッス! 今日はどうかウチの家に泊まりに来てくださいッス!!」

「えっ、ジェーンちゃんのお家に!?」

「ぷく~」


 ジェーンは驚くエレナの腕にすり寄り、少し顔を赤らめながら悩ましげな瞳を向けた。

 そして、仮面のような笑顔でもう一人の人物を見る。


「あ、カギレレさんはどっか適当な宿でも取ってくださいッス」

「……最初からそのつもりだったから別に良いんだけどよぉ。なーんかそうあからさまに態度を変えて言われるとモヤモヤするのが残るぜぃ……!」


 同じくハブられているフグとして、その気持ちは分かるぞカギレレ。

 てか、カギレレは『魔除柱モノリス』を作ってくれた立役者なんだから、もう少し優しくしてやれよ!


「んじゃ、早速ウチの家に行くッスよ~! 『魔除柱モノリス』も一旦お返しするッス~!」

「ち、ちょっと、ジェーンちゃん!?」

「ぷく~!」


 ジェーンは〈念動魔法〉で浮かしていた『魔除柱モノリス』を動かし、開かれたままだったカギレレのリュックの口の中に先端からゆっくりと押し込んだ。

 マジックバッグであるリュックに、絶対に収まらない大きさの『魔除柱モノリス』がするすると収納されていく。


「ったくよぅ、明日は朝にこの港集合でいいんだなー!」

「はいッス~! それで大丈夫ッス! ね、エレナ先輩♡」

「そ、それは私が口出しすることじゃないと思うけど。て、ていうか、ジェーンちゃん、ちょっと離れない……?」

「え~? 何でッスか~? こうしないとウチの家まで案内できないッスもぉ~ん!」


 ラブラブ(?)な様子で夜の港町へ消えていくエレナとジェーンの後ろ姿をカギレレと並んで呆然と眺める。

 ま、俺はエレナの使い魔なんで必然的にエレナに着いていくけどな。


「ぷく」

「ああ……ぷっくんも行っちまうんだな……」

「ぷくぷく」


 俺は寂しげなカギレレに水槽の中で振り返ってこくりと頷く。

 悪いなカギレレ、許せ……!


 俺は涙を飲んでカギレレを置き去りにし、ジェーンに腕を掴まれるエレナの元へと急いで行くのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ