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第13話  異世界のお日様キンモチイィィ!!


 半魚人魔の群れを追い払い、海面への浮上を続けていた俺は、ついに念願の瞬間が訪れた。


 頭上に煌めく、日の光。

 上空から降り注ぐ太陽光が海面を乱反射し、俺の体に光の斑模様が不規則に移り変わる。


「ぷくく――!」


 俺は一直線にその光源に向けてヒレを動かし、ついに――――


《表層エリア最上部――水深ゼロメートルです》


 ザブァアアアン!! とトビウオのごとく水面からジャンプした。


「ぷっくぅぅううううううううう!!」


 一気に開ける視界。

 燦々と輝く太陽光が直にフグのボディを照らした。


 うっひょおおおおおおおおーーー!!

 空だっ!

 異世界の青空が広がっているっ!!

 うわぁ、暖かい!

 初めて感じるお日様の暖かさが身に沁みるぅぅ!!


 二万メートルを超える深海から苦節数時間――幾重もの死線を乗り越え、ようやく俺は異世界の青空を拝むことができたぞーー!!


《おめでとうございます、マスター》


 キミも祝ってくれるかアドバイザー君!

 ありがとう!

 ここまで来れたのはアドバイザーのおかげだ!


《しかし、海面付近であまり大胆な行動を取りすぎるのは推奨できません。他の捕食者に狙われる可能性が高まります》


 え、他の捕食者だって?

 アドバイザーの忠告を受けたと同時、上空から怪しげな鳴き声が渦巻き始めた。


「ギュー、ギュウ!」

「ギギュー!」

「ギュウウー!!」


 青空を旋回する大量の黒い鳥たち。

 なんだろう。

 海鳥の群れだろうか。

〈鑑定〉を発動する。


 ――――――――――――――――――――

 名前:闇カモメ

 レベル:34

 HP:1531/1531

 MP:850/850


 物理攻撃力:2456

 物理防御力:1362

 魔法攻撃力:2631

 魔法防御力:1433

 敏捷性:3664

 器用さ:3766

 スタミナ:4681


 スキル:高速飛行Lv.10、長距離飛行、旋空、捕獲

 ――――――――――――――――――――


 闇カモメ……カモメか。

 異世界のカモメは黒いんだなぁ。

 まるでカラスみたいだ。

 

 だが、ステータスを見た感じ俺の半分以下のレベルしかないし、特に気にすることもないな。

 アドバイザーの忠告通り、俺を捕食しにやって来たのか。

 だが、何かを窺うように上空を旋回するばかりで俺を襲ってくる気配はない。

 なんかちょくちょくこっちに急降下しようとしては、すいーっと方向転換して上空を飛び回るばかりだ。


《マスターの〈暴君〉の射程距離が関係しているものと思われます。闇カモメの群れが飛んでいる上空は〈暴君〉の影響範囲外ですが、マスターに接近すると〈暴君〉の影響を受けるため、怯んで逃亡した結果、奇妙な動きをしているものと推測します》


 そういうことか。

〈暴君〉は一定範囲内に存在する俺よりも格下の生物を怯ませる効果があるが、闇カモメたちはその〈暴君〉の影響範囲のギリギリ外側と内側を行き来していると。

 だから不自然な飛行をしているんだな。

 まあ闇カモメの視点からすれば、獲物だと思ったしがない小魚フグが、近付いてみれば強大な化物のような威圧プレッシャーが襲ってくる感じなのだろう。


 異世界の鳥とは初めて出会ったものの、パッと弱そうだし放っておいても問題なさそうだな。


《基本的にこの表層エリアではマスターよりも強い海魔を探す方が難しいと思われます。深海域に生息している海魔が浮上してこない限り、この表層エリアにおいてマスターは最強クラスでしょう》


 おおっ、やっぱそうなのか!

 周辺にいる海魔のレベル感からしてそんな気はしてたが、実際にアドバイザーに太鼓判を押されると説得力が違うな!

 深海生活で経験したあの底知れない死の恐怖とはもうおさらばなのだ!


「ぷくぷく~!」


 ほっと胸を撫で下ろしながら海面にぷかぷかと浮かんで気持ち良くお日様を浴びていると、ふと思い付いたことがあった。

 これまではとにかく危険地帯から逃げ延びるのに必死であまり落ち着いて考える時間がなかったが、今はこうしてリラックスした状態を満喫できている。

 この間に、獲得したスキルの詳細を把握しておこうかな?


 まずは現状の俺のステータス確認からだな。

 ステータスオープン!


 ――――――――――――――――――――

 名前:フグ(仮)

 種族:バルーンパファー

 レベル:80

 HP:4183/4183

 MP:9501/9501


 物理攻撃力:10411

 物理防御力:6329

 魔法攻撃力:7803

 魔法防御力:6001

 敏捷性:3446(+1000【種族補正】)

 器用さ:5631

 スタミナ:5972


 種族スキル:旋風力せんぷうりき

 ユニークスキル:異種変形メタモルフォーゼ

 エクストラスキル:咬撃こうげき、水属性の大器、毒属性の大器、思念伝達、奪食だっしょく

 スキル:鑑定、知者の導き、逃走Lv.4、高速遊泳Lv.5、瞬転しゅんてん探索サーチ、暗視


 スキルポイント:1950


 称号:転生者、フグの加護、特異成長、格上殺し(ジャイアントキリング)幼体特攻ベイビーキラー、暴君

 ――――――――――――――――――――


 残りのスキルポイントは千九百五十か。

 最初は三千ちょっとあったが、結構減ったな。

 まあ一番の原因はエクストラスキルである〈思念伝達〉を購入したことだろう。

 これが千ポイントもしやがったからな。

 まあリヴァイアサンと対話ができ、戦闘に発展せず平和的に逃亡できたから安いもんだけどよ。


 その〈思念伝達〉のスキルポイントを差し引いても二百ポイント減ってるけど、これは〈探索サーチ〉と〈暗視〉のスキルを購入したからか。

 どちらも百ポイントずつで、合計二百ポイントの清算ってところかね。

 ……なんか、最初にスキルを購入した時よりも値段が上がってね?

 今になって思うけど、スキルポイントの相場ってどうなってんの?


《『スキルポイント』は、〈転生者〉の『称号』を有する者だけに与えられる特異な概念です。そのため明確な相場というものをお答えすることは難しいです》


 あ、そうだったのか。

 スキルポイントって転生者にしか与えられてないんだ。


《ですが、転生当初にマスターに与えられていた二百ポイントは、〈転生者〉の称号効果によりボーナス特典が与えられており、通常よりも格安でスキルを購入することができるようになっておりました》


 え、そうだったの!?

 初耳なんだが!

 つーか、そんな重大なこともっと早く言ってくれます!?


 そういや、今まで何だかんだこの〈転生者〉の称号の効果って確認できてなかったよな?

 これの効果を教えてくれ!


《〈転生者〉:異世界の魂を有する者に与えられる称号で、レベル上昇と同時に一定確率でスキルポイントを付与。スキルポイントを消費することであらゆるスキルを入手することができる。※転生直後に与えられる二百のスキルポイントはボーナス効果が付与されており、通常よりも格安でスキルを購入するこが可能》


 うわ、マジだ。

 ※印で記載されてるわ。


 ちなみに、もし今アドバイザーのスキルを買おうと思ったら何ポイントかかんの?


《現在〈知者の導き〉を入手する場合、スキルポイントは千ポイント必要となります》


 おおう……!

〈思念伝達〉と同じお値段なのですね……!!

 それを俺はたったの百ポイントぽっちで入手できたのだから、かなり得してるな。


 にしても、スキルポイントの価格だけで言えばエクストラスキルである〈思念伝達〉と同じなのに、〈知者の導き〉はただのスキル止まりなんだな?

 ぶっちゃけアドバイザーはエクストラスキルの枠でも通用するくらい利用価値がある存在だと思うけど。


《スキル区分は、スキル、エクストラスキル、ユニークスキルと階層的に上昇していきます。階層が上のスキルほど強力な効果を獲得しやすい傾向はありますが、スキル区分はスキル効果の強度や有用性ではなく希少価値で分類されています。そのため稀に"エクストラスキル"より強力な"スキル"、"ユニークスキル"より強力な"エクストラスキル"などが存在します。ただし、『種族スキル』に関しては別系統のスキル体系であるため、通常のスキル区分に当てはまりません》


 そうなのか。

 スキル区分は階層化されてはいるものの、絶対に下位のスキルが上位のスキルに勝てないとは限らないということだな。

 ということは、〈知者の導き〉って意外と他の魔物も持ってたりすんの?

 階層的には一番下のただの『スキル』の枠に収まってるわけだし。


《はい。ですが、〈知者の導き〉は獲得条件が非常に複雑で困難を極めるため、一般的な魔物や人間はほとんど有しておりません》


 ん?

 じゃあ誰が有してんの?


《マスターと同じ――()()()の者たちです》


 ドクンッ、と心臓が跳ねる。


 心の片隅で密かに考えていた可能性。

 まさか、この異世界にはいるのか……?

 俺以外の、転生者が――!?


《歴史を遡れば、転生者の存在は数知れず確認できるでしょう。そして転生者の多くが〈知者の導き〉か、それに準ずるスキル、または上位互換スキルを保有していることが多いです》


 じ、じゃあ今この時代にも俺以外の転生者はいるってことか!?


《可能性としては高いと思いますが、この世界の人口比と転生者の絶対数を考慮すれば非常に微々たる割合になるでしょう。そのため、一般的な暮らしを営んでいる限りは転生者と邂逅する機会は少ないと判断します》


 ま、まあそれもそうか。

 異世界とはいえ、さすがに転生者まみれってことはないもんな。

 圧倒的に現地人の方が多く、転生者の割合はごく少数だろう。


 だが、他にも転生者がいるかもしれないというのは良い情報を聞いた。

 俺の生きる希望が一つ増えた気がする!

 異世界で同郷の人間と出会えるならぜひ話をしてみたい!

 ……まあ、俺はフグの体だから転生者であることを説明するのに時間がかかりそうだけど。

 ちなみになんだが、転生者って俺みたいに人間以外の生物に転生してることが多いのか?


《いえ、転生者のほとんどは人間、または人間に近しい亜人の種族として転生することが大半です。マスターは転生者の中でも稀なタイプと言えるでしょう》


 ですよねー。

 俺も薄々そんな気がしてました。

 フグに転生した人間とか未だかつて聞いたことないもん。

 ネット小説でも見たことないぞ。

 うん。




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