6.ミームン谷のミームン
X県のミームン谷は5年前に中山知事の号令で命名された。30人ほどのミームン一族が住んでいることになっている。川で釣りをして、山菜を採り、自給自足的な農業を営んでいる。広大な農地は、お花畑、田んぼ、野菜畑などに区分けされているが、農業を営むというより、観光目的の方が大きい。四季を通じて美しく、長閑に、景色が楽しめるように区分けされている。
ミームン達の仕事は手作業の分野だけを受け持ち、のんびりと作業をしていれば良い。重要なことは、観光客の前では絶対にミームン姿であること、そして観光客には丁寧な挨拶をすることである。ミームン達は全員公務員である。ミームンパパを除いて、中の人は交代勤務である。
丘の中腹に3棟のホテルが建っている。それぞれ100人ずつの観光客を収容できる。なぜ1棟の大きなホテルにしなかったかと言うと、長閑な景色にそぐわないからだ。ホテルから見る景色はどちらも変わらないのだが、景色の側から見るホテルには大きな違いがある。景色に溶け込むひっそりとしたたたずまいでなければならないのだ。
観光客は釣りをしたり、川沿いをジョギングしたり、山菜取りを兼ねたハイキングをしたり、お花畑の観賞や写生、写真撮影等でゆったりと時間をつぶすのである。観光客は好みに応じてコースを選ぶのであるが、そのどこにもミームンの姿が見える。それが景色を独特な味わいにしているのである。
温泉地ではなかったのであるが、2年前にホテル近くをボーリングして温泉を掘り当てた。ミームン谷を温泉地にしてしまった。ますます観光客が増えていった。中山知事の功績は大である。
ミームンパパの重要な仕事は、ホテルで夕食後「長閑な暮らし・おしゃべり会」を開くことであった。年を重ねるごとに人生相談の意味合いが増え、評判になった。5年後の現在ではミームンパパに遭いに来るリピーターも増えている。やがて、中山知事とミームンパパはⅩ県での人気を2分するようになった。
こんな状況下で<ゆるキャラ人権会議>が結成されたのである。