5.チャッピー君が奮闘する
突然、チャッピー君が自己紹介を始めた。スポットライトを浴びて、なぜか軽快なファンファーレと共に登場したチャッピー君。キュッと体を捻ってポーズを決めた後である。当然、予定にはない行動である。
「は~い!みんなー!ぼくチャピチャピチャッピーです!拍手ありがとうチャッピー!いつもぼくのこと見てくれているけど、自己紹介をさせて欲しいチャッピー」
観客に向かって手を振る。いつもより身振り手振りが大きい。
「えーっとね、よく『チャッピーって、中に誰が入ってるの―?』って聞かれるんだけど、残念、それは言ってはならないことになっているチャッピー」
観客は黙って聞いている。
「でもね、中に人間が入っているのは間違いない。チャッピーは県のPRの大事な仕事をしている、公人なのだチャッピー。中の人間とチャッピーは同じなのだチャッピー」
観客は黙って聞いている。
「だからチャッピー、チャッピーを人間として扱ってほしいんだ。28才の男性として認めて欲しいチャッピー」
観客は黙ったまま周りを見る。
「ぼくは県を良くするアイデアをたくさん持っている。もしも、もしも、ぼくを知事にしてくれたら、県を良くする自信があるチャッピー。考えて置いてねチャッピー」
キュッと体を捻ってポーズを決め、お辞儀をした後、速足で退場した。長い挨拶をしていると、知事側の人間からクレームが付くかも知れないのだ。ファンファーレがなり、幕が下りた。少し遅れて拍手が鳴り響いた。
短い自己紹介であったが、大変大きなインパクトを与えた挨拶であった。今までタブーであった内容に踏み込んだのである。
日本全国にはいろんなゆるキャラがある。生まれては消えて、正確には幾つあるか分からない。およそ1,000体位あるのではないか。著作権で保護されていたり、いなかったり、商標登録の有無など、千差万別である。
チャッピー君の冒険は全国に知れ渡った。都道府県、市町村のゆるキャラや、企業、団体に所属するゆるキャラのそれぞれが、それなりの意思表示をする運動が巻き起こった。それは大きなうねりとなった。