2.Ⅹ県のミームン
Ⅹ県はこれといった特徴のない県であった。財政も豊かではない。そこで思いついたのがミームン谷である。穏やかな川が流れ、深い森が広がり、季節の移ろいが感じられる。のどかな景色の中に、近代的な建物は何もない。この何もない景色を長所にするのだ。それにはミームン谷と姉妹提携をするのだ。
5年前に中山知事が自らフィンランドのミームン谷を視察に行き、ミームンの権利者と協定を結んだ。ミームン谷は小説の中の地名であるが、そのモデルとなった地域をミームン谷として保存されていた。
協定では、フィンランドのミームン谷とⅩ県のミームン谷をお互いに宣伝をして、観光客を交流するという内容だった。
中山知事は言った。
「君の仕事がどんなに重要か、分かっているのか?」
ミームンは言った。
「分かっています。だからこそ、ミームンに人権を与えて欲しいのです。今のままでは只の着ぐるみです」
「何を訳の分からん事を言っているのだ。君の代わりなどいくらでもいるのだぞ」
「私は公人と同じ仕事をしています。Ⅹ県を代表しているのです。それに相応しい人格を与えて下さい」
「首だ、首だ。着ぐるみを置いて出て行きなさい」
ミームンは着ぐるみを着たまま無言で知事室を出た。とぼとぼと首をうなだれて庁舎を出た。職員達が何かささやきあっているのは分かっていた。
<こんな時どんな歩き方をするのだろう?>
ミームンは小説の中の本物のミームンの歩き方を思い浮かべた。
ミームンはスマホを取り出してくまマンに相談した。
「どうすれば良い?」
「他の皆も似たような状況だ。嫌なら辞めろ。変わりはいくらでもいると言われている」
「それでは困ります」
「とりあえず謝って修復してくれ。もっと緻密な作戦を立ててからやり直そう」