最もあり得ぬ話第1話 1.ゆるキャラ人権運動勃発
諸君は「最もあり得ぬ話」だと言うであろう。ところが「最もあり得る話」なのだ。その為にあえて架空の所在地や名称を使います。Ⅹで始まる県はない。主役のミームンが活躍する県をⅩ県と表現します。便宜上、実在の名称も出てきますが、全てフィクションであり、現実の名称とは関係ありません。
くまマン、ぷなっしー、ひこちゃんとミームンの4人が集まった。どうやらまじめな話をするらしい。
くまマンは言った。
「私は観光大使として活躍している。大変忙しい。休む間もない程、全国を飛び跳ねている。しかし私が言いたいのは、休みが欲しいのではない。生身の人間としての時間が欲しいという事でもない」
くまマンは少し勿体をつけてから次の言葉を発した。
「私は自分の仕事に誇りをもっている。しかし、残念なのは私には人格が無いのだ。中に人間が入っていることを知っているのか、知らないのか、中の人間に人格が無いのだ。それならばくまマンに人権を与えるべきだ。くまマンは公人として働いている」
ぷなっしーが言った。
「私も毎日いろんな会場に行ってライブをしてるなっしー! 体を張ってるなっしー。疲れるなっしー、それより人格がないのが、もっとなっしー!」
ひこちゃんが言った。
「私は歴史的建造物の案内や保護のために働いている。中には建造物を傷める観光客もいるが、私は注意をすることができないんだ。私は人間として扱われていないんだ」
ミームンが言った。
「私は知事の思い付きからミームン谷のミームンを真似て創られたゆるキャラです。私の仕事は県民をほんわかな気持ちにさせる事です。しかし人格のない状態では何もできません。私は皆をほんわかにしたいのに、このままでは本当に、ただの着ぐるみで終わってしまうんです」
くまマンが言った。
「我々にはたくさんの仲間がいる。みんなゆるキャラの自分に人格を求めているのだ」
ぷなっしーが言った。
「我々は市長や知事よりも多くの人に接しているなっしー。しかし人間としての人格が無いので意見も言えなっしー」
ひこちゃんが言った。
「大きな声では言えないが、家に帰っても人として扱われていないのだ」
「ヒャッハー。僕も同じだっしー」
ミームンが言った。
「人としての仕事ができていないから、家に帰っても影もないパパなんだ」
話はもう少し続くのであるが、この日重大な決定が下された。
くまマンが纏めた。
「ゆるキャラに人権を与えよの運動を全国の同志に呼びかける。全国のゆるキャラの皆さんと、私たちの運動に賛同してくれる人を増やすのだ」
ミームンが補足した。
「具体的には、ゆるキャラ名で選挙にも出られるようにするという事ですね」
「ヒャッハー。僕は市長に立候補するなっしー」