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セレスタン

シンデレラは拳で、ウィリーは大鎌で、フェルディナンドは剣で次々に現れる魔物を撃破する。


やがて、奥に鉱石の発掘場が現れて、ウィリーはハンマーを取り出した。





「燃える石だ。発掘すんぞ」


「硫黄か」





ウィリーは黄色い鉱石……燃える石を採取すると腰の革袋に入れた。





「さ、用事は済んだな。一旦師匠の家に戻るぞ。お前ら俺に捕まれ」


ウィリーの言葉に、シンデレラとフェルディナンドはウィリーに捕まった。


ウィリーは転移呪文を唱え、三人は光の渦に包まれた。





そして、三人は森の中、ベリンダの家の前に到着した。





「では俺はカンパネルラ城へ戻る」





フェルディナンドはそう言い、カンパネルラ城の方へ足を向けたが、ベリンダが家から出て来て杖をフェルディナンドに向け呪文を唱えた。


フェルディナンドは再びねずみのアビーになってしまった。





「ふう。全く危なっかしいったら。シンデレラ、そのねずみをポケットの中にでも入れときな」


「ええ……でもフェルディナンドが可哀相。いつか戻してあげるんでしょう?」


「こいつから国を奪還したらだろ」


「その通りだよ。さあ中へお入り」





「離せー!貴様らー!」


「ごめんなさいねフェルディナンド」





シンデレラ達はベリンダの家に入った。





「燃える石を採って来ましたよ」





ウィリーは黄色い鉱石、燃える石をベリンダの作業机の上に置く。


「プネウマ塩の方はどうですか?そういやアブドゥルは?」





女装したアブドゥルが呼ばれてやって来た。


「あ、僕ここにいます」


「プネウマ塩なんだけど全然出来なくてね。プネウマと塩から探す必要があるね」





「えー……また俺らに採って来いって話っすか」


「うん」


「今度は僕も同行します!」


アブドゥルが笑顔を浮かべる。





「ふむ。そうだね。プネウマと塩を採って来ておくれ。プネウマはそうだね……エガリテ王国の大聖堂に吹く風がいいと思うよ」





「フランスか」


ねずみ姿のフェルディナンドがすっぱり言う。


「ノートルダム大聖堂に行くか」


ウィリーが言う。





「ここでこの世界について話すと西暦は四千年ぐらいで反物質を用いた世界大戦で文明は後退した世界が今だ」





ベリンダが突然説明し出した。





「何だ突然」とフェルディナンドが突っ込む。


「ベリンダ。ねずみのアビーの魂はどこに行ったのかしら?」


「アビーの魂はここにいるよ」


ベリンダが指を指すと近くのねずみのぬいぐるみが喋り出した。


「おいらここだよシンデレラ。何不自由なくやってるよ」


「早くノートルダム大聖堂に行きましょう。エガリテ王国には友人がいるんです。久しぶりに会いたい」


アブドゥルの言葉にウィリーは肩を竦めた。


「いやもういいんすけどね。今日は一旦休ませて貰いますよ」





その日一日はベリンダの家で休み、翌朝エガリテ王国に出立となった。


ベリンダの家は狭くベッドが足りないと思ったがベリンダは魔法で部屋とベッドを増やしてしまった。





朝、ベリンダが作った朝食のパンケーキを食べて、シンデレラ一行はエガリテ王国へ移動した。


アブドゥルは男の格好…アラブの王子様風の格好をしていた。


シンデレラとアブドゥルがウィリーに捕まり、ウィリーが転移呪文を唱える。





シンデレラは周囲を見渡した。


石や煉瓦が詰まれた美しい町並みが広がる。


「さ、パリだ。ノートルダム寺院にはどう行ったらいいかなあ……」


ウィリーは魔法でGoogleマップを目の前に出して、行き方を調べる。


半透明な地図がウィリーの目の前にあった。


「ちなみに今アメリカではアップルもグーグルも魔法会社になった」


「誰に対して言ってるんだ。お前」


フェルディナンドが突っ込む。





「あっ。待って下さい。僕、友達に会いたいんです。まず、友達に会わせて下さい。エガリテ王国の王子なんです」


「フランスの王子か」


フェルディナンドの言葉にアブドゥルは「今はエガリテ王国です」と返した。





一行はアブドゥルに案内され、暫くパリの街を歩いた。





暫くするとサーカスのテントが見えてきた。


ピエロが子供達に色とりどりの風船を配っている。





「サーカスよ」


「サーカスだぞ」


「サーカスだな」


シンデレラとフェルディナンドとウィリーが連呼する。


「何だよ。城に行くんじゃねーのかよ」


「そうね。私もてっきりお城だと」


「僕の友達はサーカスで働いてるんです。さ、入りましょう」





シンデレラ達はチケットを買ってサーカスのテントの中に入った。


ショーは既に始まっていた。


シンデレラ達は席に座る。


シルクハットを被った男がマイクを手に紹介する。





「さ、こちらは我がサーカス団の花形スターアデリーヌ。こちらのピエロ、セレスタンと今回のメインイベント、空中ブランコをいたします」





アデリーヌと呼ばれた茶色い髪の女が、大きく手をふる。


半分、道化の仮面を被ったピエロの格好男が無表情で立っていた。茶色い髪で前髪がやたら長い。





二人はそれぞれ空中ブランコの脇に立ち、空中ブランコを掴み、足場を蹴った。





両者、空中ブランコを駆使して宙返りをしながらあっちへ行ったりこっちへ行ったり。





会場から拍手が沸き起こる。


その後も、ナイフ投げや玉乗り、綱渡り、ライオンの火の輪くぐりなど、様々な技を二人を交えたサーカス団はこなし、ショーを終えた。





ショーが終わると、アブドゥルは走り、関係者以外立入禁止と書かれた紙の張られたドアからテントの外へ出た。


シンデレラ達も後を追う。





セレスタンがいた。


傍の檻にライオンがいる。





「セレスタン!」


アブドゥルの声に気付いてセレスタンが顔を上げる。


「アブドゥル!お前アブドゥルじゃなかいか」


「会いたかったよセレスタン!」


アブドゥルがセレスタンに抱き着く。





「後ろの者達は……」


「僕の友達のシンデレラとフェルディナンドとウィリーです。フェルディナンドはソール王国の、ウィリーはカンパネルラ王国の王子です」


「そうか……」


「お前ら良くライオンの檻の傍でくっちゃべってられるなあ」





ウィリーが言うと、セレスタンはライオンの頭を撫でた。


「獣は素直だ」


「ライオン?可愛いもんよ」


そう言うとシンデレラはライオンを二頭檻から出し、両手で二頭の首根っこを掴んだ。


「何してんだよー」


「ライオンが哀れだ。離してやってくれ」





皆セレスタンをじっと見る。


「前髪が長いな」


「鬼太郎だな」





関係者以外立入禁止のドアからアデリーヌが入って来た。


「セレスタン……。あら、友達?邪魔しちゃ悪いわね。私は引っ込んでるわ」


そう言い、アデリーヌはドアを閉めた。


「姉のアデリーヌだ。俺もアデリーヌもエガリテ王国の王室の者なんだが趣味でこのサーカス団で一緒に働いている」





「へー。姉弟でねー。アブドゥルの友達なのか」


「第三十五回十字軍で友達になったんです」


「……ふっ」


「十字軍ってフランス負けっぱなしだよな」





ウィリーがそう言うと有無を言わさずセレスタンがウィリーの腹にパンチを食らわせた。


「げはっ」





「馬鹿な奴だ」


「ウィリー、あなたいらないことを言うから……」


フェルディナンドとシンデレラが冷たい。





「今、コーヒーでも煎れて来る。そこのパイプ椅子で座っていてくれ」


セレスタンはそう言うと去り、コーヒーを入れたカップをお盆に乗せて戻って来た。





シンデレラ達はパイプ椅子に座ってコーヒーの入ったカップを受け取った。


フェルディナンドはシンデレラの肩でカップを受け取った。





「何故ソール王国の王子がねずみなんだ?」


セレスタンの問いにウィリーが答える。





「今こいつうちの国を乗っ取ってるんだよ」


「日本がアメリカを乗っ取ってるのか?」


「うん」


「それは凄いな……」


そう言うとセレスタンはフェルディナンドに言った。


「俺は日本のアニメのファンだ。頑張れ日本」


「おい何言ってんだよお前」


「ふっ」


「フェルディナンドは凄いのよ。クールジャパンなのよ」





「いやー僕も聞いたときは頑張れ日本て思いました」


「フハハハハ!アメリカは日本になるんだ!ハハハハハ!」


「お前らな……」


ウィリーはがっくり溜息を吐いた。


「フェルディナンド素敵ー!」


「おいシンデレラ、こら、義母さんと義姉さんを助けたいって言ってたのは誰だ」


シンデレラはハッとした。


「そうだったわ。義母様と義姉様を拉致監禁している悪い奴をやっつけないと」


「いやそいつ。それそこのそいつ。肩のところのねずみ」





「感情のままに行動することは正しい人間の生き方だ」


フェルディナンドはフッとクールに笑い、セレスタンは「ははははは」と笑った。


「何がおかしいんだか」


「いやすまない。ついな……」


「フハハハハ」


フェルディナンドも高笑いする。


「いや、だから何がおかしいんだよ……まあ、いいや」


ウィリーは仕切り直す。


「で、プネウマを取りにノートルダム寺院に行くわけだけど。いつ出発するんだよ」


「ノートルダム寺院は今は水没していて水の底だぞ」


「えっ……そんな……どうすれば」


シンデレラが口を抑える。


「魔法で水の底も歩けるぜ~」


「……ふっ。取り敢えずこいつに魔法を使わせるとしよう」


「お前誰のせいでこんなことしてると思ってんだよ」


「僕も是非ついて行きたいです。セレスタン、君も一緒に行こう」


「ああ……別に俺は構わないが。しかし邪魔になりやしないか?大体水の底にそのプネウマというのはあるのか?」


「聖なる息なんだよなぁー」


「多分都合良くあるわよ」





シンデレラ一行はセレスタンを引き連れサーカスを出ると、ノートルダム寺院が沈んでいる沼に到着した。





ウィリーとシンデレラの魔法で皆水の中に入って行く。


「言わせて貰うぞ。気持ちいい気持ちいい気持ちいい気持ちいい気持ちいい」


ウィリーが突然気持ちいいを連呼し出したので、シンデレラが「どうしたの」と眉を寄せた。





「とにかく気持ちいい」


一行は沼の中の魔物を倒しながら歩いた。


アブドゥルはエチオピアの両手剣ショーテルを、セレスタンはマシンガンなど銃火器を使い、魚類の魔物を倒し進んだ。





そして一行はノートルダム寺院の中へと入った。





「プネウマどこかなープネウマ」


ウィリーがキョロキョロと辺りを見回す。





「そうやすやすと落ちてるものなのか」


フェルディナンドの問いに、ウィリーが「知るかよ」と返す。





「ん……?おいあれ……」


セレスタンが指を差した先には、壁に紙が張ってあった。


何か字と下に矢印が書かれている。


矢印の先には木箱がある。


「フランス語でプネウマって書かれてるぞ」





「マジか」


「本当に都合良くあったな」


「ね、都合良くあったでしょう」


「開けてみましょう」





アブドゥルが率先して箱をそっと開けた。





中には透明なオーブが入っていて、オーブの中には風が渦巻いていた。





「プネウマか」


フェルディナンドが言い、ウィリーが「多分」と答える。





アブドゥルは「はい」とウィリーにオーブを渡し、ウィリーはオーブを腰の革袋に仕舞った。


「じゃあベリンダの家に戻りましょ」


シンデレラの言葉に一同は頷いた。


「師匠の家に戻るから皆俺に捕まれー。転移呪文を使うぞー」


「何だ?俺も一緒に行くのか?」


「一緒に行こうセレスタン」


きょとんとしたセレスタンにアブドゥルが言い、一同はウィリーの服につかまった。


「行くぞー」


「メガンテ唱えてもいいか?」


「突然何を言い出すのフェルディナンド」







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