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アブドゥル

「初めまして。僕はアブドゥル・マムルーク。バイバロスの三十番目の子です。特技は暴走です」


夜の宴の席でアラブの王子様という感じの服に着替えたアブドゥルが、シンデレラ達に言った。





ねずみ姿のフェルディナンドは砂糖の塊をかじり、ウィリーはアイスクリームを食べていた。


薄着の踊り子達が楽団の音楽に合わせて踊り、あちこちランプで香が焚かれている。





バイバロス王はたくさんの女達に囲まれて酒を飲んでいた。





「最近イタリア北部ミラノで煙突掃除夫をした夢を見るんです。魎呼りょうこって宇宙海賊になる夢とか」








「煙突掃除夫のやつって幼なじみの赤毛の女の子と結婚の約束してたのに後から出て来た親友の妹と結婚したあれな」


「今なら林原めぐみが声あてそうな妹よね」


「ツンデレ幼なじみより林原が良かったんか」


「アルフレッドが死んだときは悲しかった……」


「僕が殺したんだってパイプ椅子で欝りそうね」


「俺が女なら声は林原めぐみだな」とフェルディナンド。





「僕は暴走癖がありますが、普段は余り暴走しないようにしています」


「お前前髪真ん中で分けたら妖怪見えるんじゃないか」


「ヴェーとか鳴くんじゃないか」





シンデレラが葡萄をつまみながら「良くわからないけど」と呟いた。


「でもあなた女装が凄く似合うわ。また女装して下さいね」





「え……そう言われたら仕方ないな。まあいいですよ。そのうちにまた女装しても」





「特技は暴走と女装だな」


「私特技はクレヨンしんちゃんの物真似です。けつだけ星人~ブリブリ~ブリブリ~」


「ちょ、おま、シンデレラ、クレヨンしんちゃんに声めちゃくちゃ似てねえ?いや俺も忍たまの土井先生出来るけど!」





シンデレラが「ねえウィリー」と呟く。


「私達どこへ向かっているんだったかしら」


「あっ、そうだった。材料集めしねえと。このネズミからうちの国を奪還するために!」





フェルディナンドがニヒルに笑う。


「ふっ……馬鹿な連中だ。……メガ……」


再びウィリーがフェルディナンドの口を抑える。





「自爆呪文を唱えんなああああああ!」





クスクスとアブドゥル王子が笑っている。





「いやあのな。笑い事じゃねぇんだって。こいつ本気で自爆する気なんだって」


「あ……ああ、すみません。いえ、おかしくてつい……」





コホンとウィリーが咳ばらいする。


「シンデレラ、賞品の辰砂は手に入れたな」





「ええ。ほら、ここに」


シンデレラが赤い鉱石、辰砂を懐から取り出す。





「よし、それでいい。今夜一晩はここで泊めて貰って、明日の朝カンパネルラの師匠の家に戻るぞ……ってフェルディナンドがいるところで話すのも変な話だが」





「わかったわ」





興味深そうにアブドゥル王子が辰砂を見つめる。


「辰砂?水銀を抽出するのに使う鉱物ですね。錬金術でもするんですか」


「あー。まあそんなとこだな。今うちのカンパネルラ王国、こいつ……ソール王国のフェルディナンド王子に乗っ取られてるんだよ。国を奪還しねえとな」


ウィリーはフェルディナンドを指差し、フェルディナンドは「ふっ」と口元を歪めた。





「俺はただ任務を遂行するだけだ……」





「そんな大変な事が起きてるんですね……僕にも何か出来ませんか?是非お力になりたいのですが」





「じゃあアブドゥル王子も一緒に来るか?」


「はい、是非!」





アブドゥル王子は嬉しそうに顔を輝かせた。





シンデレラ達はその晩はバイバロスの宮殿に泊めて貰い、翌朝出立となった。


フェルディナンドは見張るためにウィリーが一緒に寝た。





翌朝。





アブドゥル王子は街娘風の衣装に女装していた。


アブドゥル王子の姿を見たウィリーが突っ込む。


「おいおーい……」





「アブドゥル可愛い。似合うわ」


「いやーそんな……。お褒めに預かり光栄です」


「何故女装する気になった」


「父上に外は危ないから念のため、身分がばれないように女装しなさいって言われまして」


「いや女装の方が危なくねえか」





「とにかく、ウィリー。一旦ベリンダの家に戻りましょう」と言った。





「仕方ねえな。おい、お前ら俺に捕まれ。瞬間移動の呪文使って師匠んとこ戻るから」





シンデレラもアブドゥルもウィリーに捕まり、シンデレラはしっかりとフェルディナンドを抱きしめ……ウィリーは瞬間移動の呪文を唱えた。





シンデレラが目をつぶって開くと、そこはカンパネルラ王国の森の中で、ベリンダのひしゃげた家が目の前に建っていた。





「へえーここがカンパネルラ王国かー」


アブドゥルが物珍しげに辺りを見回す。


「そんなにじろじろ見ても何も出ねえぞ。さ、中に入れ入れ」


ウィリーはベリンダの家の扉を開き、一同を中に入るように促した。








中でベリンダはお茶飲んでくつろいでいた。


「師匠、辰砂は取って来ました。プネウマ塩の方は終わりましたか」


ウィリーはベリンダの机に辰砂を置いた。


「んーまだだね。神聖な息ってのがなくてね……あっ」


ベリンダはアブドゥル王子を指差した。


「そこの君、ちょっと息を貸してくれない?神聖そうだ」





「えっ……あの僕ですか」





「ウィリーとシンデレラは燃える石を持ってきておくれよ。私はこの子とプネウマ塩の作業を続けるよ」





「そんなあ……僕も旅について行きたい……」





「それよりおい貴様」


フェルディナンドがシンデレラの肩口から降り立ち、ベリンダの机に立つ。


「貴様だな……俺をこんなねずみに魂を入れたのは。元の身体に戻してもらおうか」


「駄目だね。レギオーサ軍がカンパネルラで悪さしないようにあんたという命令系統を遮断させて貰うよ」





「くっ……俺が駄目なら代わりの者が寄越されるだけだ」





「時間稼ぎにはなるだろ。さ、ウィリーとシンデレラは燃える石を採って来ておくれ。燃える石はジャッカローブ山で採れるよ」





「わかったわ。行きましょう。ウィリー、フェルディナンド」





「俺もか」


「フェルディナンドにもねずみはねずみなりに戦えるようにしてやるよ。ウィリーもパワーアップしてやる」


ベリンダは指をちょちょいと動かして、フェルディナンドとウィリーに呪文を掛けた。


「じゃあジャッカローブへ瞬間移動するからお前ら俺に捕まれよ」


シンデレラはしっかりとフェルディナンドを抱き、ウィリーの腕を掴んだ。


ウィリーは腕を振り呪文を唱える。





そこは巨大な森林で、向こう側には煙りを吐く大きな岩山が見えた。





「ジャッカローブ山だ。まずはジャッカローブの街に向かうぞ。ここから暫く歩きだ。魔物に注意な」





歩くと魔物が現れて襲い掛かってきた。


巨大なトカゲの群れだ。





シンデレラは素手でトカゲを殴った。


フェルディナンドはなんと鼠の背中から天使のように翼が生え、剣でトカゲを切り裂いた。


ウィリーは正に死神といった感じの大鎌で、トカゲを切りまくる。





トカゲ達は無惨に倒れ、シンデレラ達は先を急いだ。





随分魔物を倒したところで、シンデレラ達はキャンプをした。


ウィリーが呪文で薪を集めて火を点ける。





「さーて。夕飯にしますか」


シンデレラとウィリーは弁当箱を開ける。


シンデレラとウィリーの弁当箱の中身はマカロニグラタンとサラダとパンだった。





「フェルディナンド~。お前も何か欲しいか~」


「俺はこいつでいい」


フェルディナンドは砂糖の塊をどこからか取り出すとかじり始めた。


「フェルディナンド、貴方それだけで足りるの?」


「いや……足りんだろ」


「俺は充分な糖分が摂取出来ればそれでいい」


「ウィリー、これからどうするんだっけ」


「ああ、ジャッカローブの街に行って、一先ずそこを拠点にしてジャッカローブ山に登る。ジャッカローブ山で燃える石の採取だ」





「辰砂にプネウマ塩に燃える石か……。なるほど、お前達賢者の石を作るつもりか……それで俺に盾突くつもりか……」


ギロリとフェルディナンドが睨みあげる。


「ビッグアメリカなめんなよ」





一晩キャンプし、朝旅立ちとなった。


魔物と出くわして早々にフェルディナンドは魔物の群れに突っ込み「メガンテ!」と叫んだ。


閃光がほとばしり大爆発が起きる。


魔物は全滅したが、フェルディナンドも黒焦げで倒れている。





「あーあやりやがったな……仕方ねえ。まずジャッカローブの街に行って教会だな……」





「フェルディナンド……何故……」


「何か知らんが自爆したくなったんだろ」




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