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旅立ち

「で、どこに行けばいいの?」


「燃える石はカンパネルラ王都の北にある森の奥深くにあるジャッカローブ山、辰砂は王都の南にあるマムルーク王国の都に売っている」


「ふーむ。どっちから先に行くべきかね。てか待って。本気?本気でこの子連れてくの?俺一人の問題で別にこの子は関係ないんじゃ」


「行くわ!私も絶対に行く!お義母様とお義姉様を助けなきゃ。そのために力をベリンダに貰ったんだもの」


シンデレラは腕を構えた。


「もう一発喰らってみる?」


「いや、いい!もういい!もう充分!」


ウィリーはブンブンと首を振った。


「頼むから俺をサンドバックにはしないでくれよ~……」


「あはは。シンデレラは行く気満々だから連れてっておやり、ウィリー。何、大丈夫。シンデレラはちゃんと強くしといたから」





「チョコレート沢山持って行きますからね!」


「チョコレート?」


「俺の大好物で魔力回復薬」





「大体のことはウィリーに任せな」


「はい!」


ぱちんと鼻ちょうちんが弾けて、アビーが目を覚ました。


「何だ?どっか行くのか?どっか行くならこのアビー様も一緒に行くぞ!」





シンデレラはアビーをエプロンのポケットに仕舞うと、ベリンダにお辞儀をしてウィリーと共に歩き出した。





「まずどこに行くの?」「マムルーク王国。砂漠の国だ。瞬間移動の呪文を使う」


「あ、うん」


「その前にちょっと軽く腕をならしてこうな。この森はスライムやデブコウモリが出る」


「スライム?デブコウモリ?」


「魔物だよ。本当はうようよしてるんだけど来たとき何もなかったろ。お師匠がお嬢さんに結界を張ってたんだ。あ……ほら出た」


話ながら歩くうちに、スライムと太ったコウモリが現れた。


シンデレラは腕まくりをすると、深く腰を落とし息を吐き、スライムを殴り、デブコウモリに回し蹴りした。


すぐにスライムとデブコウモリは目を回し、倒れた。


その後も、シンデレラは次々に現れるスライムとデブコウモリを撃破した。





「あーいや。あの。お見事。お見事」


ウィリーは手を叩いた。


「この程度なんてことないわ」


「あのー……何かキャラ変わってません?」


「そうかしら」


日が暮れると、ウィリーは杖を振って薪を集め、杖で火を点けた。


「夕飯は?」


「ああ、お嬢さんにこれを渡しておこう」


ウィリーは四角い木箱をシンデレラに渡した。


シンデレラが蓋を開けると湯気が立ち込めた。


蓋の部分には銀のスプーンがくっついて、中には美味しそうなスパイスの香りのする茶色い料理とパンが入っていた。


「何これ?」


「カレー。のちの世の食べ物だ。その箱は開けば色んな食べ物が現れる魔法の弁当箱なんだ。持っとくといい。さ、食いな」


ウィリーに言われて、シンデレラはカレーを食べた。





「美味しい」


「だろ?俺好きなんだよなカレー。魔物避けの結界を張ったから今日はここで寝て、明日の朝、マムルーク王国に行くぞ」





食事を終えると、ウィリーは毛布を出して、毛布に包まってシンデレラは寝た。


毛布はふんわりして温かかった。





翌朝、起きるとシンデレラは傍の河原で顔を洗い、水を飲んだ。





キャンプ地に戻ると既にウィリーは毛布を小さく折り畳んで荷袋に仕舞い、旅立ちの用意をしていた。





朝食に弁当箱を開くとサンドイッチが入っていて、シンデレラとウィリーはサンドイッチを平らげた。


「さ、マムルーク王国に旅立つぞ。お嬢さん、俺の服を掴んで」





シンデレラはウィリーの服を掴んだ。





ウィリーは杖を振り、何か呪文を唱えた。


光がシンデレラとウィリーを包む。


眩しさに、シンデレラはぎゅっと目を閉じた。





シンデレラが目を開くとそこは辺り一面砂漠だった。


「な……何これ」


「マムルーク王国だ。ほら、目の前に広がってるのが王都」


白い町並みの向こうに、丸い黄金の宮殿がでんと建っている。





アビーがちょこんとシンデレラの肩の上に乗っている。





「へーここがマムルーク王国か」


「砂ばっかりね」


「ま、砂漠の国だからな。でも飯は美味いんだ。入るぞ。あ、そうだシンデレラ」


「何?」


「しっかり俺の腕掴んどけよ。中は人混みが酷いからな」


「うん」


シンデレラはしっかりとウィリーの腕に捕まった。





王都にはターバンを巻いた男や、壺やかごを頭に乗せた女、らくだを連れた者などでごった返していた。





白い建物の町並みをキョロキョロ見回しながら、シンデレラは懸命にウィリーの後をついていった。





「砂漠の国は危険だって聞くけど……奴隷の扱いが酷いって」


「戦争中だからそりゃ悪くも言うさ。でも今の王様バイバロスは出来た人で、元々奴隷の出自なんだ。それでか奴隷ばっかりの奴隷王朝を作り上げた。皆奴隷なんだ。つまり皆自由で不自由なのさ」


シンデレラはびっくりしてウィリーを見上げた。


「皆奴隷なの?」


「ああ。それにハーレム制なんだが、雇用主が女奴隷を雇ってハーレムに派遣してる形なんだ。女奴隷はハーレム主が嫌なら雇用主に言って自由にハーレムを変えられる。数十人のハーレム主に仕えたことがある女奴隷もざらにいるぜ」


「そうなんだ」


「先進国だよ。先進国」


やがて街中から市場に出て、人混みは更に増した。


人々がぎゅうぎゅうで、ウィリーとはぐれそうだった。


アビーが「ぎゃあああ」と叫ぶ。





「ほら、しっかりつかまってろよ」


ウィリーに言われて、シンデレラはしっかりウィリーに捕まった。


ウィリーは鉱物を取り扱っている商人一人一人に辰砂を扱っていないか話を聞いていたが皆、答えは無いの一言だった。





「おっかしいなー。辰砂だぞ。なんで扱っていないんだよ。錬金術に必要だろ」


「今、水銀の市場の値段が上がってて錬金術師達が皆材料の辰砂を買い集めてるんだよ」


「そんな……」


「あー……壁にぶち当たったな。マジかよ……」


「本当に無いの?」


「いや……そうだな。武闘大会に出場すれば……。賞品が辰砂なんだよ」


「……武闘大会かー」


「わかった」


シンデレラが意を決して言う。


「ウィリー、私、武闘大会に出るわ」





店の男がおいおいと口を挟む。


「屈強な男ばかり集まるんだぞ!そんな、いいとこのお嬢さんが出るなんてとんでもない!」


「どうせ私なんて侍女扱いなんだもの。いいとこのお嬢さんなんて柄じゃないわよ」


「どうせなんて自分をそんな風に言うな!シンデレラ、そうだ。俺、あんたの力をまだちゃんと良く見極めてない。どこからOKでどこまで駄目なのか、ちょっと腕試ししよう。おっさん、この辺で腕試しにちょうどいい場所はある?」





「あー。アクラブの谷だな。王都の西にある。毒蠍が沢山出る。ただ毒には注意しろよ。腕試しするなら毒消しは必需品だ」





「毒消し買ってかなくちゃね」





アビーが喋り出したので、店主が驚いて声を上げた。





「ねずみが喋った!」


「こら、アビーってば出て来ないの」


シンデレラはアビーをエプロンのポケットに仕舞った。


「気楽な奴だぜ。アビー」



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