表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

4

6月12日(月)


晴れやかな日。学校行くには絶好日和。

「本当に大丈夫?無理してない?もう何日休んだ方が.......」

玄関で、晶は母に見送られながら、最後の身だしなみを整えてた。

ショートヘアで爽やかな顔立ち、制服の姿が小柄の関係で、かっこいい感じ全くないか、賢くかわいいという雰囲気が自然に出てる。

陽キャまでいかないけど、これで根暗の感じはなくなるはず。

と、晶が思った。

「大丈夫だよ。お医者さんもびっくりするぐらい完全に治ったといi言ったから。」

晶は母を安心させるために、元気いっぱいの笑顔を作った。

(これから、学校で完全に安心できないことをしに行くけどね.......)

そう考えると、晶は母の顔を見つめた。

自分が入院してた時よりは、元気になった様子だけど、長年の仕事と生活のストレスによる疲れが、さすがに取れない。

目の下に見て分かるぐらいひどいクマ。腰まで伸びて、長くて黒い髪の中に隠れてる、若干の白髪。肌のツヤもあまりなく、30代後半だけど、見た目はもう40代に見える。


母がそうなった理由は、とても単純だ。

(母子家庭の辛いところ、というべきかな.......)


晶の父は、彼がまだ小さい頃に、もう車事故であの世にいった。

仕事の終わりに車で自宅帰る途中で事故にあったらしい。

あの時まだ幼すぎるから、事故の話は母から聞いたものだけ。それで記憶は結構曖昧になっている。


たぶんそこからだろう、母が仕事と子供の世話を一人で全部しないといけなくなり、晶は母に迷惑かけたくないことを考え始めて、学校のことあまり話さなくなった。

そして学校いる時もまた、周りとの違いを感じたくなかったから、何も話さないようにしてた。

それを小学校からずっと続けて、その結果は、


今の自分のこの状態だ。


ただ、こういうことはきっと、世の中どこでもあるだろう。知られてないだけで。

でも、自分が知った以上、さらに当事者になってるから、見て見ぬふりはできない。


「晶、どうしたの?ぼっとして、大丈夫?」

「あ.......うん、大丈夫。ちょっと考えこと。」

「平気?なんか病院で目覚めてから、たまに変なところあるけど.......」

「えっ、へ、変?どこですか?」

そう言われて、晶は明らかに狼狽えた。

「ほら、そういう感じにたまに口調変わってるし。」

ぐさ。

「先みたいに、なんか心がここにあらずの感じもあるし。」

ぐさ。ぐさ。

「そもそも性格がなんか変わった感じもなくはないし。」

ぐさ。ぐさ。ぐさ。


「は、はは、そうなの?気のせいだよー」

鋭い。

晶は冷や汗をかきながら、わざとらしい明るい声で誤魔化そうとした。

いや、まあ、本人じゃないから、記憶あっても、所詮モノマネでしかない。

なにより、2週間も満たない時間で、知らない人の16年の人生を真似するというのは、無理があると思う。


「.......ふふ、でも、元気になってくれて、よかった。あのまま目覚めなかったら、それを考えると私.......」

母が途中まで話して、涙目になった。

「あ、お、お母さん、泣かないでよ。」

「だってー」

「あ、学校行かないともうやばいから、出かけるね!」

晶は逃げるように玄関のドアを開けて、走り出した。


そうでもしないと、母を落ち着かせるために、ハグされた状態で、お説教と昔話、色々聞いてあげないとまず落ち着かない。それで1時間ぐらいかかるかもしれない。病院で目覚めた後、ほぼ毎日そういう感じに過ごしてきたから。


そうしたら完全に遅刻だ!

「あ!晩ご飯ちゃんと帰ってきて食べてねー」

「分かった!行ってきますーー!」


そして晶が青空の下に、新しい一歩を、踏み出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ