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「よし、まず冷静に整理しよう。」
真星は自分の白漆みたいに血色なくした顔を叩いて、気持ちを無理やり切り替えることにした。彼は勉強机に座って、棚からピンク色のノートを取り出し、自分に起きたことを記録するためにペンを執った。
今日は6月8日。
自分が目覚めたのは、6月1日。
目覚めた後に、リハビリもあって、一週間もかかったけど、医者曰く、
『全治一か月もケガを一週間で治せるとは.......君、研究させてくれないか?』
ぐらいの驚きの速さらしい。
(まあ、まず中身は違うしなぜか他国の言葉も理解できてるから、それぐらいオカルトじみなことあっても、もう動揺しないな。)
そして事故起こったのは5月24日。
今から2週間前ぐらいだが、あの記事の続きは、なかった。
「台湾のニュースは.......いや、どこでも同じか?」
事故があって、人が死んでいないーーー>終わり。
ていう流れが普通だろう。
「だって話題性ないし、もう被害者治るのを待つしかない、かな。」
その被害者は有名人だったら、2週間どころか、2ヶ月もう報道されるかもしれない。
いや、重要なのはそこじゃない。
5月24日。
それは、この体の主が病院に入院した日だ。
脳内の記憶を掘り起こす。
入院生活の間は、勝手ながら、宿主(?)の記憶を通じて、『色々』と勉強した。
日本のこと、学校のこと、生活に必要なこと。そして、
この体の持ち主のことも。
愛野 晶。
東京〇〇区のXX高校の1年生。
自分より1個下で、大人しい性格で、学校では目立ったない感じの人。
体型も小柄で、痩せ気味というよりは、女の子に見間違われる外見ではあった。
今の時代は、そういう人受けがいいの場所もあれば、『受けが悪い』場所も、もちろんある。
この人の場合は、間違いなく後者だ。
『なんか根暗で気持ち悪い。』『男なのに、女性のものが好きなんで、ありえないー』『女々しいやつが嫌いだ。』
脳に浮かんだのは、数多の罵詈讒謗。
そう、彼はいわば、「いじめられっ子」だ。
そして、決め手になったのは、
『おまえみたいな人がな、生きてても、家族の迷惑だろうよ!!死んだ方がいいぜ!ははは!!』
その言葉を最後に、5月24日の昼頃、彼は学校の屋上から飛び降りた。
その結果、生きているけど、酷いケガして、病院に搬送されて、全治一か月の状態になった。
真星は手を止めて、棚に置いてる、もう一冊のノートを取った。
そのノートはピンクではなく、黒だった。
ピンク好きの晶は、このノートだけ黒にした。
彼はノートを開いて、最初のページには、十年前の日付が書いてるのと、あの日起こったことも。
『日記』だ。
ただ、毎日書いてるわけではない。気晴らし.......いやなことあった時だけ、書いてたと、『晶』の記憶にある。
だから、その内容は、記憶を細かく覗かなくても、大体想像がつく。
それでも、確認しなければならない。今、この体の主は、自分だから。もう他人ことじゃない。
真星はノートを自分の細い指でめくり、直近の日付までページを飛ばしてから読み始めた。
〇月×日
卒業式終わった。これで私の中学生活も終わった。やっと、解放される。その人たちから解放される。でも、
うれしくない。
小学校に続き、中学校もこれだから。きっと、高校もそうなるだろう。
なんで、私だけ.......
◇月△日
入学式終わった。高校も終わった。やだ。やっぱり同じだ。どこ行っても変わらない。ああいうヤツがいる。あんな人、しねばいいのに。なんで、なんで、なんで。
私だけ.......
ただ人と話したくないだけ。ただ自分の趣味を笑われたくないだけ。ただ自分を守りたいだけ。
自分が大事。それはきっとみんなそう思ってるはず。
なのに、なんで、
私だけがいじめられるの?
私が悪い?私のせい?だれか、教えて。
だれか、私をーーー
その後の文字は、シミのせいでぐちゃぐちゃになって、読み取れなかった。
丸くて小さいシミだか、その中にこもってる気持ちは、真星は理解できてしまった。
「あれ、なんで.......」
真星の顔に、一粒の涙が、零れ落ちた。
自分の心からの同情か、それともこの体の記憶か、わからない。
でも、今すごく、悲しい気持ちで、涙が止まらない。
「くそ、ダメだな.......これは重症だ!」
真星は服の袖で、力いっぱいで涙を拭いて、意を決したようにノートを閉じた。
「せっかくの高校生活、そんなつまらないことで壊されてたまるか。」
彼はまたノートパソコンに向けて、何かを検索し始めた。
「やられたらやり返す、倍返しだ!だっけ?」
パソコンを見てる真星の顔は、もう涙顔ではなく、愉悦に満ちた顔に変わっていた。