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小説サイトで「尻ドンラブコメ」とかいう狂気を投稿したら後輩女子に読まれました\(^o^)/

作者: 蹴神ミコト



 キーンコーンカーンコーン


 帰りのホームルームも終わり、ガヤガヤと周囲が部活や遊びにと学校を飛び出すこの時間。俺はまっすぐ家に帰ろうと決めていた。

 5限目に『ある天才的な思い付き』をしてしまってすぐにでも帰りたかったんだ。最低限メモはしたが6時間目のことなんて全く記憶にない。


 階段を降りたところで後輩の文学女子に袖を掴まれ小声で囁かれる。めっちゃ帰りたい。



「あ、あの!先輩ちょっといいですか?」

「ごめん。今日は忙しいんだ」

「明日の放課後に時間貰えますか!?」

「明日ならいいぞ」



 適当にあしらってすぐに駐輪場まで小走りで移動する。誰にも止められてなるものか、こういう思い付きは勢いのままに作り上げるのが好きなんだ。勢いを止めてはならない。


 自転車をすっ飛ばして帰宅、手洗いうがいをしっかりとしたら自室のPCを立ち上げたまに投稿している小説サイトに跳ぶ。そう、俺は天啓を得たのだ。これを形にせねばならない。



 壁ドンという胸キュンワードをしっているだろうか?

 かつては別の意味があったが現代では男が女の子を壁に押し付ける好きな異性にやられたらグっとくる仕草?いいや必殺技だ。

 だけど壁ドンはどちらかといえば男がやる必殺技だ。女の子からできる必殺技があってもいいんじゃないかって思ったんだよ。




 尻ドンだ。



 思いついた瞬間天才だと思ったね。

 女の子がお尻を突き出して男の股間に当てて、そして男を壁に押し付けるんだ。

 

 お尻でドンと壁に押し付けて告白、完璧すぎる。

 一見品が無いようにも見えるがこれで落ちない男のほうが稀じゃいと断言できるくらいには破壊力が高い、想像してみろ尻ドンだぞ。好きな子にでもされてみろ死ぬぞ。壊れた心で告白を受け入れるしかないんだ俺達男は。




 狂ったテンションで狂った尻ドン小説を書き上げる、告白シーンは尻ドンからの「えへへ、捕まえちゃった」だ。最高かよ死ぬわ。絶対バカなのに尻ドンは強すぎる。男なら落ちるってこんなの。

 捕まえるってナニでドコを捕まえちゃったんですかねぇ!心理的には逃げられないどころか逃げたいと思わない程ガッツリ心が捕まってるよな。やばいな壁ドン。



 完成した小説を投稿!シャットダウン中のPCを眺めながら満足げに息を吐く。

 いやあいい仕事をしたぜ…なんだろうな、この小説で人気が出たら嬉しいけどそれは尻ドンを公開して布教できたことへの嬉しさだろうな。SNSで流行ったらあれ考えたの俺なんだぜって自慢してやろう。



 お風呂に入っても布団に入っても、次の日学校に行っても俺はふわふわとした気持ちでやり遂げた誇らしさのような満足感がずっとあった。放課後になって階段を降り、今日は駐輪場じゃなくていつものように図書館の方へ行く。校舎からは独立している図書館の扉をキィっと押して開くとバッとこっちを振り向いて緊張した顔の後輩女子がいた。そういや昨日呼び出されてたっけ。

  呼び出されていた事なんて忘れてたけどいつも通り図書館へ来たらいつも通り彼女と遭遇しただけなのは黙っておこう。そういえばなんで昨日はわざわざ俺を待ち伏せしていたんだろう?



「せ、先輩。ちょっとこっちに来てください」



 彼女に袖を引かれて書庫の方へ連れていかれる。


 書庫に入ると普段開いている扉が閉められ、俺と彼女2人だけの空間が出来上がる。

 これでもう中でどれだけ騒いでも外には聴こえない。

 

 図書館に篭っているから俺が独り占めできるけど、以前は彼女目当てに図書館に来る男が何人もいたくらいには可愛いのでこういう空間に引き込むのはやめてもらいたい。本にしか興味が無いとキッパリ男たちを振ってからは本の話ができる俺とばかり放課後を過ごしているけど自分の可愛さを自覚してくれ。



「あの、先輩…ちょーっと、そこの壁に背を付けて目を瞑ってくれます?」

「なんだよ変な事するなよ?」

「私は変だと思っているけど、先輩は変だと思ってない事なので安心してください」



 赤みの入った顔で可愛らしく指を立ててウインクをしてくる。だから可愛さを自覚しろ。

 とりあえず言われたとおりによく分からない言い回しに従って壁に背を付け、目を瞑る。

 目を瞑ると音だけが良く聞こえるようになる。

 彼女が深く呼吸をしているのが伝わる…


 もしやこれはあれか!?まさかキスとかだったりするのか!?いやまて変にガッつくな心を落ち着けて先輩らしい態度でクールにいよう。現実恋愛投稿勢の恋愛実技の力よ今都合よく目覚めよ…!

 ドクンドクンと心臓の音と、深く深呼吸をしている彼女の呼吸音だけが聴こえる……




 ドンと下っ腹に何かがぶつかる。



「せ、先輩、目を開けていいですよ?」



 目を開くとそこにあったのは彼女がお尻を俺にくっつけ、上半身を軽くひねってそれは体の細さを強調するようで、顔が半分だけこっちを覗き込んでいる姿だった。



「……捕まえちゃった」

「グホゲハァ!!!」


「ず、ずっと前からこの図書館で、ほぼ2人でのんびりと読書をして、創作論なんかも語り合ったりする関係が好きでした。先輩…私とお付き合いしてくれませんか?」

「ゴホッ、げほ、ンゴッホゥ!!」



 そういえばこいつ俺のアカウント知ってるから読むよなアレ!?でもそれ使ってくる普通!?いやでも…大変すばらしい光景をみさせていただきました。心はもうありがとうしか浮かばない。





 …俺、昨日告白をお預けして尻ドン投稿してたの?

 しかも彼女からしたら告白をお預けされて1日悩んでいる間に尻ドン見せられたの?



「(なんかもう、本当に心の底から)ごめんなさい…」

「そ、そうですか…ごめんなさい先輩…私、勘違いしちゃったみたいで…」

「違う違うそっちじゃなくて!!」



 本当に色々締まらなくてごめんな。

 その後、幸せそうにめっちゃ尻に敷かれたのは言うまでもない。

尻ドンを世に送り出せたので満足です(深夜テンション)

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― 新着の感想 ―
[一言] 深夜だから仕方がナアよねっ( ^ω^ )
[良い点] ふろんてぃあ [一言] 素晴らc
[良い点]  深夜テンションならしょうがない。  結局くっついてやがるし! [気になる点]  流石に日中素面でこの作品を創ってたら慄くw
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