特別
この主人公は私自身です。これは私自身の懺悔です。目を止めてくださった方は、どうか憐れみにて読んでくだされば幸いです。
私は特別だ
特別な人間だ
特別にならなくてはならない
皆とは違うのだ
誰かが私を称賛した
当然だ私は特別なのだから
素晴らしい成績を収めた
当然だ私は特別なのだから
誰かが私を好きになった
当然だ私は特別なのだから
誰かが私を咎めた
不当だ私は特別だから
失敗をした
不当だ私は特別だからだ
誰かが私を嫌った
不当だ私は特別だから
特別、特別
特別なのに誰かが私を批判する
特別なのに失敗する
特別なのに誰かが私を嫌う
おかしい
私は特別嫌われているのだろうか
特別出来が悪いのだろうか
私は特別酷い人間なのだろうか
そんなことはない
ありえない
認めない
私は特別なのだから
もっと特別にならなくてはならない
もっと特別な人間にならなくてはならない
皆が私を特別に扱うように
苦しくなった
誰もかれも私を避ける
失敗は多く重なった
誰もかれも私に笑顔で返さなくなった
他の人には笑顔で話すのに
私には笑顔がなくなった
私は特別になったのだ
それとも皆が特別なのか
私は皆とは違うのだ
あの人のように、思いやりのない事はしない、親切な人なのだ
あの人のように、ミスをしない、完璧な人なのだ
あの人のように、自分の事だけ考えるようでなく、自己犠牲の人なのだ
なのに、何故、私の周りから笑顔が消えるのだ
辛い、辛い、分からない
どうしてよいのかわからない
苦しんで苦しんで苦しんだある日
一つの言葉が心に浮かんだ
私は特別な人間じゃない
私は特別な人間じゃない
だから、皆と同じくらい好かれもするし、皆と同じくらい嫌われもする
だから笑顔になれるのだ
私は特別な人間じゃない
だから、皆と同じくらいの失敗はする
だから、皆もするように、それを改善していくことができるのだ
私は特別な人間じゃない
だから、皆と同じくらい褒められるし、皆と同じくらい貶される
しかし誰も不当に貶されるのは嫌だから、私も自分と皆を大切にできるのだ
ああ、こんなこと、皆はとうに知っていたのだろう
ああ、自分はどれだけの時間を特別に費やし、どれだけの人を傷つけ、どれだけ自分を傷つけ、どれだけ無駄な努力をしてきたのだろう
どれだけの笑顔をつぶし、どれだけの喜びを拒んだのだろう
ああ、莫迦だ
莫迦なのだ
本当に…
私は特別じゃない
そして初めて、自分と皆を大切にできるのだろう
今更ながらどの口が
こびりついた傲慢さ
今ここに懺悔します