黒木淳のお話7 2人で水やり
理沙とデステニーランドにデートに行くことが決定した黒木淳。
真子「おっ、学校着いた。やっぱり話しているとあっという間だね。またね」
2人の女の子が真子を呼んでいた。真子はさっさと校舎に入っていった。
理沙「はあー。淳と2人きりだったのになあ」
女は不快に感じた人間の前でも基本的にそれを取り繕ろうのが上手いと思う。ほんとに。自慢ではないがそれなりに理沙と長く過ごしている俺だから分かるところだと思う。
「確かに真子は空気を読まないところがあるよね」
「なのにめっちゃモテる。よくわかんないわ。可愛いから?」
少し変な空気になった。
「まあ可愛いとは思うけど…俺は理沙の方がいいから別に関係ないよ」
「ふふふっ」
理沙はご機嫌に笑った。
なんとなく聞くように愛情を確かめてくる。ブスだとかそういうふうに貶めず、褒められた。
正直めんどくさいところはある。
・・・最近の真子への距離感がよく分からない。近づいたり離れたりする。
「あっ」
今度はなんだ。
「なあに」
「水やり当番の日なんだけど裏の花壇までついてきてくれる?」
「もち。なんだっけ。緑を増やそうキャンペーン?」
花壇に向かって手をつなぎながら歩く。少し距離がある。
「そう。というかいつも思っているんだけどさ。緑を増やすなら植林とかすべきじゃないの?花壇増やしたって全く意味ないと思うの」
緑を増やそうキャンペーンは学校の環境委員会が提案したものだ。集会で提示されて何故だか本格的に活動していた。
「植物とかどうでもいいから早いとこ球技大会を開けるようにしてほしいよ」
「めっちゃ分かる!!サッカーしたい」
「したいわ。ん?」
学校集会でうさぎを飼うようになったと報告があったことも思い出した。
確かうさぎ小屋が花壇の近くにあるはずだ。
「ついでなんだけどさ…うさぎも見ていいかな」
理沙はどこか嫌そうな顔をしたが…
「見たい」
これだけは譲れない。
「…実は私うさぎが怖いんだよね。ごめんだけど1人で見て欲しい」
…どういうことだ?
「えっとね前嚙まれたの」
えっ。
「うさぎって噛むの!?」
「噛むよ。ほらここ痕になってる」
人差し指を淳に見せた。
「ホントだ…」
「小学生の頃、友達の家に遊びに行ったらね…病院に行かなければ指がちぎれちゃってたかも」
…。
「なんかごめんね」
理沙はニコリと笑うだけで何も答えなかった。
花壇に着いた。パンジーなどの花がきれいに並んでいた。勝手に規模が小さいと思っていたが、そんなことはなかった。
「緑を増やそうキャンペーンはよく分からないけど、この花壇はすごく気に入ってるの」