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あなたの慈愛とともに  作者: りんた
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黒木淳のお話 回りだす運命



目を開けると見知らぬ白い部屋に立っていた。そして眼前には見たことのない美しさで妖艶な雰囲気を持った白人女性がこちらを見つめている。


緑色で露出が少ない緩やかな服装だが、それでも体が強調されている、×印の髪留めがついた鮮やかで長い艶やかな赤い髪の毛。十字が刻まれた青色主体の独特な目をしている。

 

 ???「初めまして」

 



 淳「…」


あれ?俺は確か真子と…いや理沙と?家で寝てて。いや学校で。うん?記憶がはっきりしない。

 


その人はこっちに歩いてきた。前嗅いだことのあるような何かの花のいい匂いがする。


何だっけ…


そんなことを考えているうちにリリスは淳の正面に立った。…理沙くらいの身長はあるか?


目が吸い寄せられる美しさだ。


   「初めまして。私はリリス。…大半の地球人が観測できない高位の存在、つまり神様です」


…。起きていきなりこんなことを言われてどう反応すれば良いか分からなかった。

   

   「…はっ、はい」


リリスはバツが悪そうな顔をした。


   「まあそうなるわよね」


 「あの…ここってどこですか」



 「ここはね。人間がたどり着くことは決してない場所、神域」


リリスは指を鳴らした。すると真っ白い部屋の中央の壁がいきなり窓ガラスのように透明になって宇宙空間が映った。


CG!?


  「窓を開けてみるわ」


空いた瞬間、音がすることはないが窓の外に広がる宇宙が強烈に室内の空気を吸い込み始めた。淳も体が浮き外に放り出されそうになるが、リリスが淳の服を掴んだ。リリスは全くぶれずに立ち続けている。


「うわああ!!」


リリスの腕にしがみついた。死ぬ、死ぬ!


   「申し訳ないけど時間がないのよ、無理やりでも納得してもらうわ、分かった?」


    「わっ分かりました分かりましたから!!」


淳は頷いて素直に従って話を聞いた方がいいと悟った。少なくともこいつは人間ではないことが。リリスは部屋を元に戻し淳を椅子に座らせると話し始めた。


淳はゼーゼーと荒く息を吐いた。


 「あなたは神候補になりました…自らの罪を注ぐ機会と同時に、訪れる困難に立ち向う義務を負ったのです」

 

リリスは悲しそうな顔をした。

   

   「…?」


淳にとって状況はさらに謎になっていたが。


「我々は優れた人間から神を選ぶ儀式を行っていて、あなたはその最終選抜者になったの」


 「…なんで俺がそんな大層なものに?」


 「ハデス様直々の推薦ね」


ハデス…?ギリシャ神話のやつか?


その時淳は気づかなかったが、リリスの目の模様が回転した。


「というかさ…あなたの恋人に罪悪感とかはないの?いやあんまり言いたくはないけど…」


    「…?」


理沙に?全く罪悪感を抱えるようなことをしていないしひどい言われようだ。


 「…いや、分かりません」


  リリスは真顔になっていた。そして何かを責めるようなそんな目つき。



えっ俺が本当に理沙に何かしたっていうのか…?


リリスは机の上にあった紙を持って見た。


 「黒木淳17歳。国籍は日本人。でもアメリカ出身のハーフ。受験を控えた高校2年生。彼女持ちで交友関係は広い。それに…すごいきれいな顔ね。性格は人当たりよく誰に対しても優しい。趣味はボーリングとテニス。得意科目は英語…一般人にしては出来すぎてるくらいね…」



「…何が言いたいんですか?」


リリスはため息をついて言った。


 「彼女…桜木理沙はあなたに殺されたの」


一瞬何を言っているのか分からなかった。俺が?


  「…は?は…」


ドクンッ。頭の中で何かが巡る。血や何かの悲痛な叫びがザワザワと脳みそを蝕む。しかしあと一歩思い出せなかった。心臓の鼓動が急速に早くなった。


猛烈な吐き気に襲われるが耐えた。


リリスは首を傾げた。


とぼけてるの?…いや思いだす寸前ってとこね」


彼女はいつのまにか金色に輝く沢山の宝石が埋め込まれた手鏡を持っていた。

 

  「仕方ない。これを使うわ」


キラキラしていて眩しい。


  「何ですかそれ…」


息が荒い。

  

  「これは彩宝色鏡といって、姿を映した人間の記憶を取り戻させる神器」


そんなものが…?


  「記憶を失くしていたのね」  


どこか納得したような表情だ。

   

  「この道具を使っても死にはしない、だけど脳に負担がかかるの…それでもいいわね?」


ここで見なければきっと俺は後悔するだろう。


   「…分かりました」


リリスは鏡を俺に向けてきた。

鏡が青く光り始める。ズキズキッ。急に激しい頭痛に襲われた。

  

  「ぐわあ痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!」


あまりの痛さでうずくまってしまう。


段々と意識と痛みが薄れ深い闇に落ちていった。



  







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