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最強の娘と虚名を得た俺は、乱世から逃れられないので終わらせる!  作者: 楼手印
2章 勇者なんて虚名です、神竜より強いわけ無いじゃないですか!
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036話 伯爵を殴った報い、フェリシア様からの判決! 

 さて、フェリシア様への報告である。

 この国の第二王女で俺達の町の領主様。


 レティよりも、よほど御主人様という意識が強い相手だ。

 サビーナ様は俺の後ろ盾と表現したが、伯爵を殴り飛ばしたのを有耶無耶にしてくれたんだ、そう言っても過言ではないだろう。

  

 でも今回は伯爵を殴るわ暴言を吐くわの現場に、側近のサビーナ様が居合わせている。

 詳細で正確な報告がされているはずで、怒られに来ている様なものだ。


 ちなみにミュリエルとレティはフェリシア様の強い要望で、この後お茶会を開くらしい。

 俺の報告は執務室で受けるという事なので、先にフェリシア様の私室に行って待っているそうだ。

 

 タロと傭兵達は、フェリシア様の名前で借りられた宿で宴会中。

 当然ながら代金はフェリシア様持ちだ。


 ミアは王宮の衣装部屋への入室を許可され、病み上がりを押して飛んでいってしまった。

 皆、事件解決にあたったという事で、何かしらのご褒美をもらっているのだ。


 だというのに、俺はこの執務室に怒られに来ている。

 執務室で小柄な体に見合わない、大きな机の向こうに座ったフェリシア様が真面目な顔で俺の報告を聞いているが、どんな叱責や処罰があるやら。

 ちくしょう……自業自得だけどさ!


「――サビーナからの報告と一致しますね。少し過大に表現しているのかと思いましたけれど」

「えぇまあ……治療魔法の使い手がいましたし、今頃怪我なんて跡形も無いので過大も過小も無いのではと……」

「仮にも貴族の顔を殴りつけたのです、治れば良いという物ではありません。それに傷をつけられた誇りは魔法では治りませんよ?」


 俺の言い訳に、眉をきゅっと寄せたフェリシア様から軽いお叱りを頂く。

 10歳近く年下の、見た目は娘と同世代な女の子に正論で怒られるのはやっぱりこう……なあ?


「ですが……まずは今回の拉致事件解決、ご苦労さまでした。レティシア……それにミュリエルさんも怪我一つなく帰ってきた事にとても安堵していますわ」

「ありがとうございます、ですが今回の件は娘の拉致にレティシア様が巻き込まれた形で――」


 俺の言葉をフェリシア様が首を振って遮る。


「結果が全てです。理由はどうであれ、レティシアが拉致され、あなた達が助けた――そして、伯爵を殴りつけた」


 最後にわずかに笑って付け加えたのは、フェリシア様の茶目っ気か。

 だが、それも短時間。

 すぐにまた真面目な表情に戻し、言葉を続ける。

  

「わたくしは立場上、ブロス伯爵と事を構えるわけにはまいりません。伯爵に暴行を加えたあなたを保護している事について、後ほど謝罪の必要があるでしょう」

「本当に……申し訳ありませんでした。弁解のしようもありません」


 本当にな……。

 感情的になって殴ったのは俺なのに、他人に頭を下げてもらうとは。

 

「……妹を無事に救い出した功績に比べれば些細な事です。ですが、この功績に対して報酬をというのは難しいのです。理由が分かりますか?」

「伯爵への体面上ですね。殴った者へ報酬を与えていては、謝罪など聞く耳を持たないでしょう」


 ……という俺の返答に、フェリシア様が首を横に振る。

 間違いようが無い質問だと思ったんだが、他に何かあるのか?


「レティシアはわたくしにとって、他の何かに代えようのない存在なのです。命の危険も考えられる状況から救って頂いて、物や金銭で報いるなど例え神が許そうとわたくしは許せません」

「フェリシア様のお言葉だけでも、十分なのですが」


 ミュリエルもレティも無事に返ってきたんだ、同じ被害者と言っていいフェリシア様からお礼を受け取るというのは筋違いに感じる所がある。

 より真剣な表情で、フェリシア様が席を立つ。

 暖色系で飾られたレティと対象的な白地に寒色系のドレスを揺らし、歩きながら改めて確認を口にする。


「お父様に全てを打ち明け、国内を混乱させる事も厭わないと発言したと?」

「……はい」


 机を周り、俺の前へと歩を進め。


「伯爵の顔を拳で殴り、その誇りを傷つけ血を流させたと? 拳を振るったのは一度だけですか?」

「…………はい、一度で間違いありません」


 手を伸ばせば届く距離、正面にフェリシア様が立つ。

 

「その報いを与えます。膝を付き、控えなさい」

「はっ……――⁉」


 言われるがまま膝をつき、処罰が言い渡されるのを待つ。

 でも控えるほどの時間は無かった。

 フェリシア様は俺が何をされたのかも理解できないほど素早く、顔に手を当て上を向かせる。

 ――俺の頬に、柔らかい感触が押し付けられた。


 なんだコレ?

 顔の間近に綺麗な銀髪がある。

 スゴく近い、いい匂いだ。

 ……あれ?


 混乱する俺からスッと身を離し、フェリシア様が微笑む。


「もう一撃、わたくしの分も拳を振るったと言われれば、唇にしなければいけないところでした」

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[一言] もう1発殴りにいきましょう
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