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最強の娘と虚名を得た俺は、乱世から逃れられないので終わらせる!  作者: 楼手印
1章 拾った娘と美人の為に生きたいだけなのに、アレもコレも俺の手柄にしないで!
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057話 捕虜の始末

31話と32話の間にキャラ紹介を設けてみました

「気分はどうだ?」

「最高だね、寝覚めに良い酒があれば言う事ない」


 師匠との貴重な時間を切り上げるという苦悩に満ちた決断の後で、俺は民家のひとつに来ていた。

 野盗の大部分は難民などの烏合の衆だったが、それを集めた頭目とその側近には警戒する必要がある。 

 そこで20人ほどを住人の居なくなった民家などに押し込めたのだ。

 俺が向かったのはその内の1軒で、中に入ると先客が頭目と会話していた。


「む、ユーマ……君だったか? しばらくだな」

「サビーナ様でしたね、お久しぶりです」


 師匠がスカウトを受けていたので、フェリシア様関係の人が来ているだろうと思ってたけど、この人だったか。

 終わってから何しに来たんだ、と言いたいとこではあるが決定打になった傭兵団はフェリシア様の紹介だ。

 契約金は村の自腹だが、サビーナ様の主であるフェリシア様が村の危機に何もしなかった、なんて事は無い。

 でもタイミングを考えたら、終わるまで見てたんだろうなとは思う。


「王女様直属の騎士が来てるとは目論見が甘かったな。どこで失敗したかねぇ」

「敗因? 決まってるでしょう、そんな事も分からない人についてきたとは……」


 この民家には野盗の中心人物だった頭目と、その副官らしい男を監禁している。

 目を覚ましたらしいイーヴという名の副官が、敗北した頭目に吐き捨てるように恨み言を――。


「何が王子ですか。鏡見た事ないんですか?」

「それか! 怪盗にでもしときゃ今頃逃げ切ってたぞ、紙一重だったな……」


 この状況でもふざける二人組に、サビーナ様が苛立ってるのが分かる。

 でも手討ちにしてくれる! と腰の剣を抜く事が出来ない事情もあるらしい。


「村の者達の心情なら自分達の手で処刑をと望むだろうが……」

「そういう者もいるでしょうが、引き渡しを拒否まではしないと思いますよ」


 これだけの規模での襲撃だ、しかも襲われた村は名ばかりとはいえ王族の直轄領である。

 その首謀者が、なんか死んでましたでは後始末に困るらしい。

 捕虜についてはサビーナ様が、王都へ護送してくれるという事である。

 殺さないなら食事を出さなきゃいけないし、成人男性20人分の量を考えると正直ありがたい申し出だ。

 殺すにしても村やその周囲で無抵抗な20人を、リンチにかけて次々殺して明日からも清々しい毎日を! というのもな。


「外で傭兵団が見張っている200人ほどについては、国王陛下率いる近衛騎士団が引き受けてくださるだろうという事だ」

「え、国王……陛下が来るんですか? この村に」

「この村もそうだが、この近隣の都市を周る予定だと聞いている」


 なるほど、事態が終結したアピールも兼ねてとかかな?

 そういやフェリシア様が手紙書いてくれてたんだっけか、忘れてたや。

 しかしその間200人の食料と寝床どうしたもんかな……。


「心配せずとも近隣から人手と物資が集まる手はずは整っている、捕虜の一部は他の街へ移送もされるだろう」

「そりゃ助かります……どうされました?」


 俺を見るサビーナ様が、小さく笑っているのだ。

 俺の見た目のせいか、サビーナ様は俺をかなり年下に見てる節があるなあ。


「いや、陛下自らが今回の騒動を近隣でご説明して回られるのだ。どうなるか想像がつくか?」

「想像……ですか」


 大軍に囲まれた村がそれを撃退した! というのが端的な事実だよな?

 でもこういうのは人の話の種になる、何より大きい事件な訳だし。

 物語風になったりするか? 

 例えば目立つ所で不思議な力を持った小さな子が成長して、強力な魔法で大軍を蹴散らすなんてのは、いかにも好まれそうな――。


「いやいやいや! 困るんですけど⁉」

「そ、そうか? 王女の治める村が陥落間近の所に傭兵を率いて現れ救ったというのは、実際に英雄的な活躍だと思うが……」


 うん? ……なんか食い違いがある気がするな?

 傭兵団は確かに決定打ではあったが、師匠とミュリエルの活躍で村自体はわりと何とかなってたはずなんだが。

 俺が来た時に危なかったのはミュリエル個人の身柄であって、村ではない。

 それにジローの実家からの援軍だってあったんだし。


「サビーナ様は今回の件について、どの様に聞いておられるんですか?」

「村長とテオドール殿、それにこの者らからの話では今言った様な内容だったが」


 俺の知らない所で口裏合わせがあったのか。

 ミュリエルは元より、師匠もあまり表に出たくない人だからな。

 しかしこのふざけた連中まで、それに乗ってくれるってのは?

 視線を向けると露骨に目を背ける二人組、でも仲は良さそうだったなこいつら。

 ……副官を救けたのは、意外と無駄でもなかったかもしれないな。


「何だか俺の手柄ばかり大きな扱いになってませんか? ジローの実家も救援に来てくれてますし、あの傭兵団はここにいるのが知れるとマズい事情も……」

「勿論カステル殿の働きには相応の褒美があるだろう。おそらく陛下の到着と同時に、騎士叙勲の話でもあるのではないか? しかしやはり唐突に現れた名もない個人の活躍ほど噂に上る物もない、新たな勇者ではないか――とな」


 勇者――もしくは転移者。

 どこからかやってくる特殊な知識や能力を持った人達。

 かつて大陸を制覇して統一、帝国を築き上げ人間に繁栄をもたらした存在。

 異種族との戦争で劣勢に陥っている世の中で、その出現が待望されているのは知っている。

 俺がそれ⁉ いやそんな事言われても⁉

 あぁいや、でも……ミュリエルが大活躍なんて噂になるよりは……。


「傭兵団についても……まあ、どうにかなるだろう、功績を立てたのは事実なのだ。不慮の事態に備えての戦力が実際に事に当たった、書類上は先にそう勅命が出ていた事になるだろう」

「良いんですかそんなので……」

「私の主はおねだりで騎士や兵士を動かせると言われるのだぞ? 実の父君が聞かぬとでも?」


 そうですね……村一個ぽんとあげるくらいですしね……。

 しかし、おねだりで人を動かせるという内容で思い出した事がある。

 俺にそれを言った子の事だ。


「あのサビーナ様、レティシア様に会う事は出来るでしょうか? あまりおおっぴらに言える事ではないのですが、今回の件で助けて頂いたのでお礼を言いたいんですが」

「レティシア様か……王都を度々出歩いておられるが、声をおかけするのは私の立場からは肯定しがたいな」


 名前を出したとたん、サビーナ様の表情が苦々しいものになる。

 やっぱりあの子、かなり立場が特殊らしい。

 他の王族について一応知ってた俺が、名前も聞いた事無いなんて変だしな。

 ジローも知ってる節があったな、今度問い詰めよう。


「だがフェリシア様には落ち着き次第、直接報告へ来る事だ。運が良ければその際にレティシア様も同席している……可能性はある」


 あからさまに可能性が低そうな様子だ。

 まあ嫌われてるって言ってたしな、フェリシア様本人が。

 

「では、その時を楽しみにしています」

「うむ、私はこの2人に確認すべき事があるが、実は村に手土産がひとつ――」

「離せ! あの男はここにいるんだろう⁉ 私は関係無いと……!」


 民家の扉をけたたましく開き、姿を現したのは……誰だっけこのおっさん?

 なんか見た事はある気がするんだが……?


「おぉ、わが恩人バダンテール商会の不肖の息子殿ではありませんか! ご命令は失敗しましたが、それとは無関係に捕まったようですな!」

「一応隠す気はあったんですけどねぇ……何やってんだか」

「きさっ⁉ 貴様らが勝手に――!」


 口から泡を吹いて頭目らに食ってかかるおっさん。

 バダンテール商会……思い出した。

 態度の悪い二代目が経営する、傾いてた魔道具屋か!

ブクマ、評価、感想、誤字訂正等いつもありがとうございます!

明日の投稿は昼12時過ぎ予定です

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俺とポンコツ幼馴染と冒険とパンツ
― 新着の感想 ―
[一言] 商売敵みたいな感じでしたか…もう少し大きな相手かと 思っていましたが傾いているとはいえそこそこの勢力…?
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