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最強の娘と虚名を得た俺は、乱世から逃れられないので終わらせる!  作者: 楼手印
1章 拾った娘と美人の為に生きたいだけなのに、アレもコレも俺の手柄にしないで!
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031話 水!木材!

 父さんから受け継いだ、魔道具を自在に操る能力。

 ミアやジローさんが初対面の時に反応したように、これは強い魔力を持っていれば生物に対してもある程度効果がある。

 ミュリエルと出会ったのはこの能力のおかげだ。

 かなりの遠距離から俺の能力と繋がり、遺跡へと導かれた。

 ……んだが、その時の俺は正気には見えなかったらしい。

 その原因がミュリエルと繋がったこと。

 普段俺から一方的に魔道具を操作したり、魔法使いに声をかけたりといった使い方の逆をされたのだ。

 ミュリエル側から俺の能力を操作し、指向性を持たせる事で繋がりを強化、さらにロックをかけた。

 解除して欲しいとミュリエルに言ってみても、悲しそうに首を振りながら「わからない」と言われてはどうしようもない。

 師匠に相談すると「同じ能力の持ち主が作った遺跡にそういう機能があったか、ミュリエル本人の意識とは無関係な物だったのかもしれないわね」というご意見。

 あの緑の円筒の中でミュリエルが生み出されたのだとして、その際に同じ能力を持った物を呼び寄せ、繋がる機能を持たされていたとするならミュリエルを責めても意味がない。

 

 そう、仕方ないのだ。

 そんな事の事実究明や解決に割いている時間が惜しい、やる事はいくらでもある。

 ゴーレム製作は魔法を使えばなんとかなるし、師匠に近づく口実もできた。

 能力の封印解除は火急の用件とは言えない、解決は後回しにする。

 今は――。


「実験は成功……だな!」

「本当に水が溜まっているわね……」


 二体のゴーレムを埋め、その境目の上に底の抜けた陶器の壺を置く――というか、筒状の陶器を地面に刺したという方が近いな。

 ここに師匠が魔法で水を注ぐという予定だったが、実験日に雨が降りそうな天気だったので実際に雨が溜まるのか現物で試そう、となった翌日である。

 底部分に土の見えていた陶器の壺、その中には多くはないが確かに水があったのだ。

 

「これを大規模に、ですか。埋め方のパターンを作った方が良さそうですね」

「出来るだけ広範囲をカバーできる効率の良い配置か、図に描いて相談しようか?」

「秘密を守るのであればそういった物は残さない方が良いのですが――」

「ユーマ、お客さんだわ」


 弟子になってしばらく、師匠は俺を呼び捨てにしてくれるようになったのだ!

 前進! 素晴らしい!

 まあ師匠の中で俺との距離が縮まったかというと微妙ではあるが。

 それはともかく、お客さん――あれは薪割りのゴーチェと木こりのジルだな。

 俺と師匠、テオドールさんの前にある壺に興味を示しながら挨拶してきた2人は、農家のガエルと同じく俺と同世代で自警団のメンバーだ。

 

「どうした? 今日は自警団の会合の後は木材の運搬って言ってたのに」

「へーこれが……うおっマジで水たまってんじゃん⁉」

「その運搬に井戸から水を運んでいる人形を借りられないか、聞きに来た」

「アトラスを? 俺が王都で買ってきた荷車じゃダメか?」

「木材だって言ってんじゃん、重量があるしバランスも悪いだろ。車輪がハマると面倒なんだよ」


 なるほど、でもアトラスは凄く体格の良い人間程度の体力なんだよな。

 馬に牽かせてる荷車とじゃ運べる重量が違うし、何より水の供給を減らせばそれは師匠の負担に直結する。


「いやーソフィアさんに負担をかけるのは心が痛むんですよ? マジで。でもここ数日で俺らの仕事超増えてんですよ」

「新しい住居を建てる木材を確保しろと言われたが、木は薪割りにも必要だ。俺たちが働く時間を増やした程度じゃ追いつかん」

「新しい住居……私も無関係とは言えませんね」

「私の負担はこの際いいわ、アトラスと荷車の両方を使って早く終えた方が良いんじゃないかしら? ユーマ達の家も後回しになっているんでしょう?」

「屋根とベッドがあるんです、十分ですよ。さすがに冬までには移りたいですが」


 俺たちが住んでる小屋、窓や煙突が無いし天井も低いからなあ。 

 火を焚くと煙を逃せないから、もし冬まで今のままだと暖を取れなくなる。

 食事も外で作って中に持ち込むのを、この先ずっと続けるのは流石に不便だ。


「分かった、両方使ってくれ。荷車は村長に預けてあるから持ってくといい、アトラスは戻り次第命じておく」

「うぃー助かるわ、さすがにこれはガキ連中使えねぇからさぁ」


 木こりのジルはノリの軽い奴だが、任されている仕事は重要な上に危険度も高い。

 倒れる木の下敷きになって死ぬなんてのはよくある話だと、俺は父さんにやらせて貰えなかったんだよなあ。

 それに薪は生活必需品。

 日常の煮炊きの燃料、傷んだ道具の再生を行う鍛冶の燃料、たまに行う陶器の製造、それに冬場の暖房用の備蓄も必要だ。


 この2人は毎日毎日木を切り、10km離れた森から運び、斧で割って薪にするという作業を延々と続けている。

 体力があり斧の取り扱いにも慣れているという理由で、俺と村長から半強制的に自警団に入れられてもいる。

 言ってしまえば改革だ! と叫ぶ俺からのしわ寄せによる犠牲者だ。

 俺の私物といえるアトラスと荷車で今回は収まりそうだが、ここにも手を入れなきゃいけないだろう。


「労働力としてゴーレムを使えば楽にはなるでしょう、例の問題はありますが」

「労働力なあ……ゴーレムじゃなくても良いんだけど、人間は食料と薪を追加で消費するんだよなあ」

「でも人は必要よ? 今の村の住民だけでは将来寂しくなるでしょうし」


 それもあるんですけど、師匠が言うと俺の心がざわめくので控えてください。

 将来寂しいというのは子供が少ないという意味だ。

 村の若い人口は男女比が偏っていて、未婚の女性が少ない。

 おまけに美人の師匠は競争率が高いのだ、ジルが声かけてるとこも何度か見たし。

 他の連中も……これ以上考えるのは俺の平穏が脅かされるのでやめよう。

 ゴーレムを量産できた所で人間が少なければ、無言で働くゴーレムの村なんていう不気味な場所が出来上がるだけ。

 だが人を増やせば食料と住居と燃料でさらに水や木材が……。


「その為にはまず食料です。さあ次は農地ですよ、まずは土壌の改良、そして豆類とトウモロコシ以外の作物も試します。今年実験し、来年が勝負となるでしょう」

「行ってらっしゃい、私はもう少し精霊の状態を確認しておくわ」

「師匠、お昼はぜひご一緒に! 好物を教えて貰えれば無理矢理でも栽培しま――」

「昼食の相手なら私とガエル殿がいますよ」

「じゃあ俺らも行こうぜゴーチェ」

「あぁ、ユーマ荷車は借りていく。助かった」


 ゴーレムは知能はあるが自我はない、命じられた事しかしないのだ。

 この先師匠と2人きりの時間を、俺はちゃんと持てるんだろうか?

 食料増産の為の水を確保して、住居燃料の木材を確保して、衣服の生地や道具を買える交易品を作って――それからやっと移住者を受け入れられる?

 実際に取り掛かると問題が多すぎやしないか、しかも同時進行でやらなくちゃいけない。

 いや俺が言い出した事だし、そのせいでしわ寄せを食ってる村人を見たばかりだ。

 ちくしょう、やってやる!

 家族と師匠と俺の幸せの為に、吐いた大言壮語を実現させるんだ!


感想やブクマや誤字訂正など、いつもありがとうございます!


ここで一区切り、次の話で3年経過します

自警団員として名前の出てきたガエル、ジル、ゴーチェなどですが

特に重要キャラという訳でもないので居たなそういうの、くらいの認識で問題ありません

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