030話 汚い作戦内容!
「良い具合に外してるッスよ、走ってる子供が結構よろけたり転けたりしてるのに」
「ミシェルはともかく、他の子は作戦内容に同意を貰ってるとはいえ現地徴用の普通の子供だからな……」
万が一にも当たったりしたらと思うと、気が気じゃない。
「ウチでも腕利きの連中なんで、そうそう失敗はやらかしませんよ」
「本当に腕は大したもんだと思うけどね、事故ってのはあるもんだから」
それは否定しませんが、と肩をすくめるフランツだけどその顔に心配の色は無い。
騎射で食ってきた団員の腕を信じてるんだろう。
俺も射手がギーだったらもう少し落ち着くんだけど、失敗が怖すぎてとても出来ないって断られたので仕方ない。
走ってる子供の中に泣き出してる子もいるけど、あれは演技じゃなく心底恐怖で泣いてるぞ……。
「この作戦、ミアもあんまり乗り気じゃないな~」
「後々の生活を保証するって契約したとはいえ、子供に危ない真似をさせる内容はな」
ミシェルと共にニーネの街に潜入する、そのエキストラ要員として雇ったのはそこらへんにいた難民の子供達だ。
作戦内容の大事なところは伝えてないが、危険である事と将来の生活や就職先を保証する契約を交わしている。
汚れ役なら任せろー! とフェリシアとサビーナさんに言ってしまったので、その契約に立ち会ったのは俺だったりする。
「契約した、説明したって言っても子供相手だからなあ……どうにも騙して危ない事をさせてる気にしかならないんだよ」
「でもフェリシアは子供でも自分の意志で行動するなら契約相手として尊重すべき、とか言ってたんでしょお父様」
「そりゃフェリシアはな」
双子の妹が生きていくだけでも困難を伴うと理解したのは、フェリシアがまだ幼い頃だったらしいし。
それからどうすればレティの安住の地を作れるか、守っていけるかを第一に活動し続けた人間からすれば、子供だからというのは理由にならない。
経験不足ながら、己の持てる最後の財産である命をかけて舞踏会に臨む子供達には、相応の敬意をというのがフェリシアの本心だろう。
でも皆さんで舞踏会を楽しみましょう! という部分にはあの子達は当てはまらないと思うぞ? 滅茶苦茶怖がってるし。
「子供の頃の村を思えば、俺も契約に飛びついたと思いますよユーマさん」
「黄金の熊も親に売られた奴らがいるんでね、良いバクチでしょうよ」
パトリスにフランツもそっち派か。
作戦内容に心を痛めてるのはどうやら少数派らしい。
俺もこの作戦の重要性については分かっている。
ミシェル1人を追い立てるよりも、あの子達がいた方が敵の良心に訴えられるってのもそうだろう。
そして潜入したミシェルの活動により敵兵は大きく弱体化、まともに防戦できなくなり味方の損害を減らすことができる。
具体的には、敵の水源に毒を仕込むのだ。
潜入メンバーも毒の投入後に同じ物を口にする事が考えられるため、毒は致死性の物ではなく激しく腹を下すという物である。
常にズボンを下げて、トイレに駆け込みたい状態で戦える奴はまずいない。
街の陥落までその状態なら、実質的に死んでいるも同然だ。
パーツの状態で運んできた攻城兵器もあるし、後は城門を破り街の庁舎を抑えるだけ。
その上でフェリシアが戦の終わりを布告し、住民の安全を保証すれば全ての作戦は完了だ。
ついでに汚い手を使う神竜殺しと反乱軍の行為に心を痛め、特に酷い軍律違反を犯した者の処刑を決断するという演出もある。
俺達が来る前に、この辺で暴れてた連中がちょっとやり過ぎてたからな。
フェリシアが女王になれば、ちゃんと神竜殺しや暴徒の手綱を握れそうだという印象は残しておきたい。
でも神竜殺しって奴の評判もちょっと補正が必要じゃないか? とか思わないでも……。
「なんにせよミシェルが上手くやれば、ニーネの陥落はほぼ疑いない」
任務遂行能力に関してはフェリシアのお墨付きもある、上手くやるだろう。
そう信じて攻撃開始予定日に臨んだ俺達だが。
――ミシェルの任務遂行能力は確かに高かった。
しかしその高さは、俺達の予想を超えすぎていたのだ。
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