028話 ニーネ攻略戦、前日!
「斥候によればニーネに籠城している敵兵はおよそ2000、街に所属する衛兵が500に住民から徴募された者が同数ほど……残りは使い捨ての難民ですね」
「質はともかく、街の防壁で有利な防衛側が兵数でも上回ってるわけだ。フェリシア、援軍のアテとかは?」
翌日には穀倉都市ニーネに着くという場所まで行軍し、宿営地を定めた俺達は作戦会議に入っている。
参加者は旗頭であるフェリシアとオマケの俺、それぞれの部下が2名ずつ。
俺の方の部下は当然ガエルとフランツ、フェリシアの方はサビーナさんと何故かミシェルだ。
「神竜殺しと呼ばれながら街ひとつを恐れると? フェリシア様、お与えくださる僕の部隊に先陣をお命じください。必ずやお傍に侍るに値する働きをしてみせましょう!」
……ウザい、面倒くさい。
いちいち俺に絡まないと気がすまないのか。
そもそもなんで参加してるんだ? 他の3人はそれぞれ500人以上の部隊をまとめてる隊長格なのに。
フランツ団長も他人事だと思って、なんか楽しそうにニヤニヤ視線向けてくるし。
「少し控えなさいミシェル、皆様申し訳ありませんでした。この者の名はミシェル、わけあって家名は明かせませんが、いずれサビーナと並んでわたくしの片腕にと望んでいる者です。経験を積ませたく思い、今回一部隊を預ける事としました」
フェリシアの紹介に、ミシェルが貴族も唸るだろうほど優雅に一礼してみせる。
歳はフェリシアのひとつ下らしいが、背は頭半分ほど高く体格は悪くない。
親衛隊の中でも武術、戦術、教養でトップの成績を収めているエリートだとか。
オマケに容姿も良くて野心家、はっきり言ってフェリシアの好みのタイプだな。
特に実績で遥かに優る神竜殺しとかいう奴に、臆せず挑むあたりとかが。
「心強い味方が増えるのは結構なんですが、ウチの大将が言った援軍はどうなんです? 戦は若いののやる気だけじゃ勝てませんからね」
フランツの言葉を嫌味ととったのか、ミシェルが鋭い視線を向けるが傭兵隊長は全く気にした様子もない。
ちなみにガエルはなんで俺がこんな場に、とでも言いたそうに仏頂面のままで不動の姿勢だ。
自警団の長というアオの町でも重鎮と言って良いポジションに就き士官教育も受けていたが、基本は農家の生まれのプロ農民だからな。
忙しい団長業の合間に農業指導の仕事が入ると、ちょっと嬉しそうだし。
分かるぞ、俺もなんでこんなに話が大事になってるんだって思うからな。
「この地方で活動していた黄頭巾の方々、そしてそれを扇動していた黒毛皮の一党は味方と見て良いでしょう。ですがユベール将軍との戦闘によってその数を減らし、少し前から潜伏中であるとか」
「……正直な所、出てきてもそのまま味方には加えたくはないという事情もあります。ユベール将軍の追撃で略奪が間に合わないと見るや食料庫に火を放つ、戦死者の遺骸を街や敵陣に投石機で投げ込む等々……この地方の者達に悪名が轟いていますので」
「ろくでもないな……確かに関わりたい人種じゃなさそうだ」
この場で言わないだけで、もっと酷いこともしてそうだし。
しかし……そうなると、増援は無しだと思って良さそうだな。
「作戦としては例の物を採用するんだろ? ならメンバーは見た目的に――」
「ユーマ様はダメですよ? 万が一があっては困りますし、何より顔を知られているじゃありませんか」
「では、やはりミシェルに?」
俺に任せろー! と名乗り出る前に、釘を差された……。
人選は若いヤツが良いって事になってたから、童顔を活かすチャンス! だと思ったんだけどな。
ほら、またミシェルが勝ち誇った顔でこっち見てる。
危険度と重要性を考えれば、その任務が一番功績大きいからなあ。
「えぇミシェルが適任でしょう。その後、敵と正面から一戦交えることになります、皆さんの健闘を期待していますよ」
フェリシアの激励に、その場の各員がそれぞれの返礼を返す。
所属がバラバラなんで全く揃わないが、まあ俺達らしいと言えばらしいだろう。
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