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最強の娘と虚名を得た俺は、乱世から逃れられないので終わらせる!  作者: 楼手印
4章 軍師いわく「乱世エンジョイ勢が発生しました」
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027話 進軍中の補給!

「ありがとうございます! この様な村が王女様直々に、このようなご厚情を頂けるなど……」 

「何を言うのですか、元より国の乱れは王族の責任。平時は民あっての国と申しますが、この様な世情になった時こそ力になるのがわたくし達の務めですわ」

「勇者様にも厚く感謝申し上げます……この御恩は決して、決して……!」

「そこまでだそんちょう。フェリシアのいうとおり、とうぜんのことをしたまで。かならずやこのそうらんをそうきにしずめ、たみにやすらぎをあたえるとちかおう」


 行軍中に立ち寄った村は直前に野盗により襲撃を受け、人的被害こそなかったものの物資――主に食料を略奪されていた。

 そこへ偶然立ち寄った俺達は奪われた食料全てとまではいかないが、その半分を供出することを決め、村人達の前で村長に感謝されている。

 ……そういう筋書きである。


「ユーマ様も元は平民の出、この様な場ではまだ緊張なさるのですね」

「それはそれは……ぉぃ、あんたの筋書きだろうちゃんと演技しろ、俺が村人に怪しまれるだろう!」


 ちげぇよ、こんなあくどいこと考えたの俺じゃねぇよ!

 小声で村長に脅されて顔が引きつるが、慣れた人間相手とか戦場ならまだしも、完全に人を騙すための演技なんてなぁ……。

 それも敵意や悪意の無い村人相手に、である。

 必要とは分かっていても良心が――!


「あの村の人口がおおよそ200人、1年分の備蓄と言っていましたから、その半分を返して我々1500人の20日分程度の糧食を確保できました」


 村を出て再び行軍を開始した俺達。

 俺の部隊には先に行ってもらったので、しばらくはフェリシアの馬車に一緒に乗ろうと誘われたんだが。

 サビーナさんとフェリシアは、さっきの村での収支を計算中である。


「本体では黄頭巾の方々も増えていますからね、可能な限り余裕を持っていたいところです」

「村に残してきたのが半年分……それまでに王都を落として食糧事情も好転させないと……」

「あの村長も成算がなければ買収など受けないでしょう。穀倉地帯であるニーネに近いこともあり、先程の村は人口に比して農地が肥沃な立地でした。この時期に1年分もの備蓄を貯える余裕があればなんとかなるでしょう」


 だと良いんだけどな。

 息のかかった偽野盗に村を襲撃させ、そこで得た食料の半分を通りがかった俺達が返す。

 スムーズに事を進めて出立できる様に事前に村長を買収し、後の証拠隠滅や誤魔化しも任せる。

 

 ……軍隊を動かしてる以上、食料は必要だ。

 それは分かるが……発案者が俺になってるとこが納得いかねぇな⁉


「申し訳有りませんユーマ様、わたくしのイメージに傷を付けると悪影響が大きすぎるのです」

「そりゃ分かってるよ、大体村長もフェリシアは全く疑ってなかっただろ。近くの人間に姑息な奴がいるって匂わせたら、村長が勝手に俺を疑っただけだしな」

「そのような役回りは私が受けるべきでした、次回よりは注意致します」


 サビーナさんはこの地域で見ない肌の色をしてるから、色々といらぬ誤解を受けやすいらしい。

 でも今回は俺のヘッタクソ過ぎる演技のせいだろう、汚れ役が回ってきたのは。

 

「サビーナさんには恩もあるし、俺がいる時はもう俺でいいよ。それより、この先もああいうのを続けるのか?」

「そうですね……サビーナ、地図を」

「こちらにございます、フェリシア様」


 ミノー北西部の地図を広げ、フェリシアが進軍ルート上にある小さな町や村の名前を指でなぞっていく。

 

「……この先の予定、王都への転進も含めて、買収に応じる人物や誤魔化しの効く人材を配置している場所はありませんね」

「さっきの村長がよっぽどアレな人間だったみたいに聞こえるな。フェリシアが反乱を計画しだしてから、2年くらいか? よくそこまで調べたもんだな」


 国王が崩御した直後には、レティの為に俺達を追い詰めて反乱を起こすよう仕向けていたフェリシアだ。

 さすがの準備と手の早さ……だと思ったけど。

 フェリシアが俺の顔を見ながら、ちょっと残念そうな顔をしてるな? 


「フェリシア様、お顔に出ています」

「ユーマ様には、もう少しわたくしをご理解頂いている物かと思っていました。でも……そうですね、あの村長の人柄などを調査したのは確かにここ2年ほどの事でしょう」


 やれやれ、まだ努力が足りなかったか。

 夫婦仲は仲良く出来てたつもりだったんで、ガッカリされると中々のダメージだ。

 

「理解できるようにこれからも頑張るよ。せっかく手に入れた尊敬できる妻を、他の男に取られちゃたまらないからな」


 馬車の席から腰を浮かして向かいの席に手を伸ばし、長い銀髪をひとすくい手に取り、口づける。

 そんな軽い言葉と行動で少しご機嫌を直してくれるくらいには、心の距離を縮めているんだけどな。


「今好意のみで夫を自由に選び直せと言われれば、わたくしはユーマ様と再び式を挙げましょう、消去法ではなくです。ですが、あまりに不満が溜まるようでしたら……」

「フェリシアは誰にも譲らない、その言葉の続きは来ないよ」


 俺はソフィアとフェリシアという2人の妻を持ってるからな。

 フェリシアが、ではわたくしも――とか言い出したら拒否できる立場じゃない。

 前にフェリシアが大切なモノはひとつに絞れってな事を言ってた気がするけど、身に染みるな。

 あれもこれもは本当に大変だ。

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俺とポンコツ幼馴染と冒険とパンツ
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[一言] 汚いなさすが王女きたない ユーマにはジュースをおごってやろう
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