005話 道を塞げ!
俺たちの攻略目標であるドドロームの関所と砦は山地の中に造られた、ひとつの繋がった建物だ。
関所が開いていれば”ト”の様な形の道となって王都へ向けて北上でき、閉じていれば”『”という形の道になる。
砦があるのは関所の左手に位置する角の部分だ。
「ユベール将軍が討って出るならば、我々の拠点へ続く南の道ではなくフェリシア王女の部隊へと向かえる東の道。ですからまずジロー殿の部隊でこれを迎え撃ちます。2倍の数といえど将軍麾下の精鋭相手では苦戦するでしょうが、後に伏兵として私の率いるゴーレム隊によって挟撃、痛撃を加えます。将軍の強さはその意思を迅速に伝えて動く精鋭部隊によるところが非常に大きい、ここで打撃を加えておけば以降の脅威は薄れると言って良いでしょう」
という手順で東側から砦に向かい、布陣したジローと顧問。
ちなみに万が一が無いようにと、自警団からドラゴンハーフのイェリンがジローの護衛に付けられている。
本人は最前線で暴れたいらしかったが、アオの町領主であるジローは中々の大将首なので狙われる可能性も高い。
その場合は腕自慢が来る事が予想されるぞ、という説得でどうにか納得してもらった。
俺はというと――。
「出番が来るまで待ってるしか無いってのは……こう、モヤモヤするな?」
「そうは言っても大事な役目なんで、こらえてくださいよ大将」
「私が前に出てドーン! ……ってやっちゃダメなのかな?」
「独りで活躍しすぎると危ないって言われてるでしょ、我慢ができない父娘だね~」
新たに歩兵部隊を加えた傭兵隊『黄金の熊』。
その団長、フランツをアドバイザーにした俺の部隊はこちらが進軍してきた南側の道を塞ぐのが役割だ。
自警団に加え少数のゴーレムとミュリエルもいて、総勢で1千ほどになる。
南側の道は東に比べてやや細いために守りやすく、戦力的には十分だろう。
東に向かうユベール将軍をジローと顧問が迎え撃つ段取りだが、俺たちの役目はその後に待っている。
将軍が敗走あるいは撤退した場合、追撃する2部隊と挟撃するという物だ。
それ以外にも将軍がこちらには窺い知れない事情で、南側へ進軍するという予想外の事態を防ぐという目的もある。
「……出番が無いなら無いで、良いんじゃないか?」
「それじゃジロー達に負担が大きすぎるでしょ、パトリスは私が守ってあげるから大丈夫だよ」
ミュリエル……その発言は少年を傷つけるから止めてあげなさい。
それと腕をとって笑いかけるのもだ、友人とはいえ距離が近いぞ。
パトリスも顔を赤くしてるんじゃない。
ちょっと心配ではあるが、この2人を身近に置いてるのは命の危険を減らそうって理由からだ。
娘と知人の中でも若い奴を、出来るだけ安全な場所へ……という利己的な理由だが、それと比べればちょっとイチャついてる様に見えるくらい――。
「パトリス、こっちへ来て向こうの山を見て感想を聞かせてくれ」
「は? はあ……え~っとあの辺ですか? やけに切り立ってて、あんなのを背にしてれば砦の背後は万全だな……とか?」
「大将……それは少々大人気ないんじゃ?」
ちげぇよ⁉ 仕事の話だから!
でもそうか、やっぱりそう見えるんだよなあ。
「何か腹案でも? 俺達の役割はこの道をキッチリと塞ぐ事ですぜ」
「うんまあ……それは分かってるんだけど」
作戦を聞いた時から気になってるのは、将軍をこの作戦で叩いた後の事だ。
その部隊の数を減らせたとしても、討ち取れるとこまではいけないと顧問も軍師も予想している。
そして砦には将軍の精鋭以外にも、元からの守備隊が残っているのだ。
引き上げた将軍率いる砦の攻略方法だが、実のところ力攻めである。
ドワーフ達をこちらに引き抜ければ……という意見もあったが、あの強欲種族は中々に頭が固くて他所の権力争いになんでワシらが関わらなきゃならん、という意見を崩さない。
これが獣人やゴブリン王国相手なら相応の報酬で協力も期待出来たんだろうが、今回は完全に余所事を決め込んでいる。
それでも攻城兵器をしっかりと準備し、ゴーレムがいれば砦を落とす事は可能だ、俺もそう思う。
でも……損害は大きくなるだろう。
顧問達に言わせれば、必要な損害という事だし納得しない事もない。
しかし今まで何度もこの関所を通る度に目にして、今もそういう目で見て疑問に思う事があるのだ。
「経験豊富なフランツ団長の意見をよく聞くのじゃぞ?」と顧問も軍師も別の場所に配置される以上、そう念を押された訳なんだが――。
「団長……ミュリエルとゴーレムは残していく。俺と自警団であの山地に登っちゃダメか?」
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