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最強の娘と虚名を得た俺は、乱世から逃れられないので終わらせる!  作者: 楼手印
4章 軍師いわく「乱世エンジョイ勢が発生しました」
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004話 ドドローム砦、攻撃作戦概要!

 今回の戦場はミノー王国の南東にあるアオの町から北西に進んだ位置にある。

 東西の山脈に囲まれた平野部である内側の中では珍しく急峻な山地が特徴的な地形をしていて、ドワーフ達の街なんかもあるが今回は勝手にやってろって態度だ。

 軍議の後ミアやタロと一緒に陣営を歩きながら、まだ遠い戦場を眺める。

 

「こんなとこにいきなり、こんな切り立った山が出来るもんなんだね~?」

「神話だか伝承だか……なんか眉唾な話があったはずだぞ、え~っと」


 人間の国家を異種族から守る城壁となっている、東西のセツザー山脈。

 それが出来たのはこの世界ができて間もなくの頃に、2柱の神がケンカをしたからなんだとか。

 両手を組み合い、お互いが踏ん張った足が地を押し上げて山脈を作り――。


「前に踏み出していた足の指で掴んだ土地が、この山地を作った……っていう誰が作ったんだかって話を子供の頃に聞いたな」

「ちょっと盛りすぎッスね。住んでるドワーフが街に箔をつけようとしたんじゃないッスか?」

「……太陽神と月の女神が争った時に山脈が出来たのは事実。こっちの山地はそんな事まで覚えてない……って言われた」

「リゼット?」


 後ろからかけられた声に振り向くと、白地に金糸の神官服と、まとめた黒髪を側頭部から垂らした髪型が目に入る。

 髪はともかく、この立派な神官服を着ているのは王都で聖女と呼ばれていたらしい、アオの町で礼拝所の長を務める子しかいない。

 ここにいるのは戦場には聖職者が必要だからだ。

 命をかける日々に心を落ち着かせてもくれるし……死者が出るから。


「言われたって王都の大神殿の人とかに? 神様関係なら詳しそうだよね」

「違う、神託があった……今さっき」

「神託って神様がなんか言ったッスか⁉」

 

 タロの言葉に頷く聖女様。

 ……本当に聖女だったのか、ダテの肩書じゃなかったんだな。

 でも驚く俺たちをよそに、リゼットは面倒くさそうに周囲を見回している。


「……ミュリエルは?」

「ミュリエルに用だったのか? 今は軍議の報告で自警団の方に行ってるぞ」

「そう、ありがとう」


 一応王都の大神殿育ちということで礼儀は叩き込まれているらしく、こちらに頭を下げてから自警団が構えている天幕の列に向かうリゼットを見送る。


「リゼットがミュリエルに用とか珍しいな」

「というか、仕事でもないのに出歩いてるのが珍しいッス」

「ん~……でも、ミュリエルが士官候補生に応募する時に、一番熱心に勧めたのがリゼットらしいよ?」


 リゼットが?

 あの2人の接点って何かあったっけ、そんなに仲良くもなかったはずなんだが。

 ミア達とそんな事を話ながら歩いていると、結論が出る前に目的地についてしまった。

 まあ、覚えてたら後でミュリエルに聞いてみれば良いだろう。


「フェリシア! もう出るのか?」

「まあユーマ様、お見送りに来て頂けたのですか?」


 俺たちが向かっていたのはフェリシア率いる黄頭巾の陣営。

 親衛隊もいるが、数でいうと精々5百なんで完全に埋もれてるな。

 天幕はもう片付けられ始め、専用の馬車を前にした所を見るともう出発するとこだったらしい

 今回の作戦では、フェリシアの部隊が一番距離を動かなければいけないんだが、少し早い様な気もする。


「わたくしに付いてきてくださる方々は、あまり訓練などをなさっておられませんし、あちこちから駆けつけてくださっていますので……」

「なるほど、それでか」

「要は寄せ集めだもんね~」


 妖精さんは寄せ集めさん達の前で、ぶっちゃけ過ぎだ。

 有象無象とも言える黄頭巾な連中は士気だけは高いが、統率が取れているとは言い難い。

 部隊分けも参加してきた集団をそのまま使っているし、いざ出発! と指示を出した所で整然と行進できる訳もないからな。

 しかしそれでも、数は脅威だ。

 

 今回の作戦の肝はこちらの旗頭であるフェリシアが、ユベール将軍の籠もるドドローム砦をスルーする事にある。

 それなりに広い急峻な山地ではあるが、そこを避けて王都へ向かえない訳では無いのだ。

 ドドローム砦をそのままにしておけば、こちらの補給路が断たれてしまうし、最悪だと劣勢になった時に背後からユベール将軍が襲ってくるなんて可能性もある。

 なので、フェリシアを除いた俺とジローと顧問の部隊が砦に蓋をする形でこの場に残る。


 もちろん有象無象である黄頭巾とフェリシアの親衛隊だけが王都に付いた所で、陥落させるのは不可能だ。

 先行すればこちらの不利になるだけである。

 だが、ユベール将軍はその後を追って砦から出陣せざるをえない。

 何故ならフェリシアの部隊は、数が多いからだ。


 一度ケチの付いたユベール将軍を重要拠点の守将に置いたのは、トゥアール公爵が混乱の隙に人事を強行したんだろうというのが顧問達の予想である。

 だが数だけで言えば反乱軍の本隊にしか見えない上に、旗頭であるフェリシアがそこにいる部隊が王都へ向かうのだ。

 それを黙って見逃せば、貴族達から疑惑の目で見られているユベール将軍や、その人事を強行した公爵の立場がどうなるか、という話である。

 

 結果、ユベール将軍は待ち伏せされているのを覚悟で、有利な籠城策を捨てなければならない。

 将軍個人の能力とは無関係に、下策を取るしか無いようにするのだ。

 顧問いわく「戦術で勝てないのであれば、前提条件を変えれば良いのです」だ、そうだ。

 

「顧問も軍師も、俺たち皆こっちに残るんだ、気をつけてな」

「えぇユーマ様も御武運を」


 抱き寄せようかと思ったが、さすがに自重して馬車に乗り込むその手を取――れなかった。

 俺を遮るように控えていた親衛隊の若い男……というか、少年がフェリシアの手を取ってエスコートしたからだ。

 フェリシアの眉が一瞬動いて叱る様な視線を向けたが、その手を跳ね除ける事もなく馬車へと乗り込んだ。


「それではユーマ様、勝利のご報告を心待ちにしております。ミシェル、あなたもこちらへ」

「はっ」


 フェリシアに続いて馬車へ乗り込む少年が、一瞬こちらへ視線を向ける。

 ……こんにゃろう、何勝ち誇った顔してやがる。


「なかなか美少年だったッスね、親衛隊は大体そうッスけど」

「う~ん、たまに見かける顔だったけどフェリシアのお気に入り? いつもならサビーネが一緒だと思うけど」

「サビーネさんは実質的にフェリシア率いる部隊の総指揮官だからな、護衛とか身の回りの世話まではさすがに手が回らないんだろう」


 でもそれなら女性を置いて欲しいもんだ。

 フェリシアが身近に置くくらいだ、実力はあるだろうし気に入ってもいるんだろう。

 俺に敵対心を向けるか……そういうガツガツした欲求とか上昇志向とか?

 いかにもフェリシアが好みそうではある。


 まあ、顔では負けて無かったけどな!

ブクマ、評価、感想、誤字訂正等いつもありがとうございます!

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俺とポンコツ幼馴染と冒険とパンツ
― 新着の感想 ―
[気になる点] 月の女神は何をやらかしたのか [一言] なかなかの策士ですね。ガラ空きになった拠点を制圧したら拠点ごと爆破されるみたいなのはないだろうし…
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