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最強の娘と虚名を得た俺は、乱世から逃れられないので終わらせる!  作者: 楼手印
1章 拾った娘と美人の為に生きたいだけなのに、アレもコレも俺の手柄にしないで!
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014話 国境破り・逃走

「よせ! 止めるんだフローラ!」

「クソッこんな鷹くらい!」

「やめろ新入りぃーっ‼ フローラはお前なんかより古参なんだぞ!」


 唐突に場に飛び込んできた鷹の急襲により、傭兵団は大混乱を起こした。

 他にも手はあったんで、そんなに期待してなかったんだが予想外の効果だ。

 あの鷹、愛されてるな……怪我しないように動かそう。


「いいか! 絶対にフローラを傷つけるなよ!」

「俺が(おとり)になる! 来いフローラ!」


 体を張って(フローラ)の攻撃を引き受け、捕獲しようと試みる勇敢な傭兵。

 でもこの混乱で包囲に大きく穴が開いた!


「タロ、全力で走れ!」

「はいッス!」


 魔法の素質を持っていないタロには、能力を使った俺の声が届かない。

 一番心配だったんだが、ちょっとばかり臆病な性格が幸いしてか、いつでも逃げられる体勢を取っていたらしい。

 俺の声に弾かれた様に走り出した――四足で。

 

「あいつクッソ速い⁉」

「言葉遣いが下品すぎる!」


 あっけに取られながらも、走り出すのを忘れてはいなかった俺とほぼ同時にジローさんがスタートを切っていた。

 マナーのお叱り付きの余裕まである。

 鷹の目でこの先の状況も把握済み、近くにいる傭兵はこの場の12人のみ!

 既に包囲の穴を抜けて後は振り切れれば――。


「えっ? ちょっちょっと待ってよ⁉ 待ってってば~!」


 俺たちから遅れてスタートを切ったらしい妖精の声が後方から聞こえてくる。

 能力を使った俺の声は特殊な聞こえ方をする訳じゃない。

 空気の代わりに魔力を震わせて声を伝えると父さんは言っていたが、聞こえ方としては普通の声とほぼ変わらない。

 ……あいつ口喧嘩に夢中で聞いてなかったな?


「逃したぞ! せめてその小さいのだけでも!」

「えぇぇっウソッ⁉ やだっ助け――⁉」


 かなり切迫した様子のミアの声を聞いた瞬間、後方で意識を繋いでいた物にスイッチを入れる。

 直後、空気を震わす轟音と爆風が後ろから追ってきた。


「なんだ⁉ 敵襲か!」

「後ろからだぞ! おい大丈夫か⁉」

「フローラは無事だ!」

「落ち着けテディ! 大丈夫だ! 大丈夫だから!」


 傭兵団が持っていた魔道具のひとつに、火をおこすという物があった。

 火打ち石より簡単に着火できるという、ちょっとした便利アイテムだ。

 だがそんな物でも作成に必要な魔力は人間10人分程度にはなる。

 この混乱はその魔道具の魔力を暴走、爆発させた物だ。

 傭兵達は爆風から(フローラ)を身を挺してかばったり、繋がれていた(テディ)が驚いて暴れだしたのを必死でなだめていて、俺たちに構う余裕がなさそうだ。

 

 もうちょっとピンチになった時の切り札にしようと思ってたのに!

 ミアの速度が遅いのは把握してたが、追いつかれるのが早すぎる。

 爆発自体にはミアも驚いていたが、どうにか距離を開く事ができたみたいだ。

 これで後は逃げるだけ!


「ねぇちょっと待ってよ! 肩とかに止まらせて欲しいなって思うんだけど!」


 後ろからミアの声が聞こえるが、全力疾走を緩める訳にはいかない。

 こんだけ混乱を起こしといて、捕まったらどんな扱いを受けるか分かったもんじゃない。


「ちょっとホントに怒るよ⁉ ほらまた追いかけてきたし! ねぇ……? か、かわいい妖精さんを見捨てたりしないよね⁉」


 前を行く3人が全くスピードを緩めない事で不安になったのか、声に余裕が無くなってきた。

 今はミア以上に囮に適任なのがいない、頑張ってもらおうか。

 俺からやや遅れて走るジローさんも、足を止めないのは同意見なんだろう。


「き、君はヒドい男だなユーマくん! 仲間を置いていくなんて!」

「そっちもだろ、今更止まれるか! 遅れたアイツが悪い! 大体――!」


「や”だあ”あ”ぁぁぁぁっ! ま”っでえ”え”え”ぇぇぇぇっ‼」


 背後から手のひらサイズの体に見合わない絶叫が聞こえてくる。

 声からしてガチ泣きしてる事が察せられる。

 追っ手からの「ケツに藁差し込んで破裂させてやれ!」だの「羽もいで、寄生する虫の巣に放り込んでやる!」だのいう声が聞こえてくる恐怖に耐えられなかったんだろう。

 ひょっとしたら全部演技で囮を務めてくれてるんじゃないか? と思わないでもなかったんだが、どうも本気で気がついてないらしい。


「ミアくん! 上だ!」

「上だ上! ミア! お前飛んでるだろ、上に逃げろ!」

「え? あ~……とあー!」

 

 背後から聞こえる声からすると、どうやら無事に逃げられたらしい。

 それはそれとして、今度はこっちが追いつかれる危険が出てきたな。


「おい待てよタロ。前じゃなくて一緒に走ろうぜ、出来れば俺の後ろに!」

「いやッス! ごすじんがもっと早く走れば良いッス!」


 半分冗談だったが、即答で拒否しやがった!

 山で走る限り自分の足には自信があるが、ジローさんはちょっとばかりヤバい。

 いざという時は3人で戦わないと厳しそうなんだが――。 

 

「や~いバーカバーカ! いぎゃあああ⁉ なんか投げてキター‼」


 良い囮役だミア!

 その気があったかどうかはともかく、ミアの献身的な活躍で俺たちは国境破りに成功したのだった。


読んで頂き、ありがとうございます!


面白かった、先が気になると思って頂いた方がおられましたら

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[一言] 付き合いの浅い妖精は守りきれない!
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