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最強の娘と虚名を得た俺は、乱世から逃れられないので終わらせる!  作者: 楼手印
3章 動乱! 火付け役? なってやりますよ!
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016話 反乱の狼煙は3日後! ……それはそれとして

「ではサビーナさんも、フェリシアの救出に参加されると?」

「むしろ私が行かないで誰が適任なのだ、ユーマ殿」


 いつも通り、アオの町領主ジローの館での協議ではあるが、今日は少々参加者が違う。

 ゲストとしてフェリシアの側近であるサビーナさんと、レティシアがいるのだ。


 フェリシア救出に当たり、彼女が何を考えているのか、どう行動するのかという参考意見を聞くためにレティシアに参加してもらってたんだが――。

 フードで顔を隠した怪しい客人が来てるという報告を受け、会ってみれば軟禁されていると思われていた人物がそこにいた訳だ。


「フェリシア様は、ご自分と親衛隊が拘束されるのを見越しておられたからな。潜伏させた大部分に指示を出す人間が必要だろう?」

「しかし側近であるあなたがいないなどと、すぐに気が付かれるのでは?」

「不名誉なことに、逃げ出した事になっている。それに私を拘束しそこねた者も、失態を広めたくはなかったらしいな」


 なるほど、今まで主人の意向を外で実行してたのか。

 軟禁中でも手紙はいくつも出してると聞いてたが、その中に指示も含まれていたのかもしれないな。


「潜伏中であったあなたが我々に接触してきたという事は、そろそろ頃合いという事でよろしいでしょうか?」

「そう思ってもらって構わない。私の任務は君達に接触し、共にフェリシア様の救出に当たるという物で最後だ」

「妾達の下準備は間に合わせてみせるが、フェリシア王女は公爵の息子を籠絡し、敵方の情報を引き出していると伺っておる。……そちらは良いのかの?」

「フェリシア様が軟禁され、既に1ヶ月以上が経過している。必要な情報を得る事も与える事も、フェリシア様であれば終えておられるはずだ。それに……」


 サビーナさんが表情を歪め、はじめて口を濁す。

 その様子から、アイシャと顧問は何事か察したみたいだが。


「あまり時間をかけては、フェリシア様が公爵家の世継ぎを身籠ってしまわれる可能性が高くなる」

「確かにそうなっては後々極めて面倒です」

「子は産まれてから処理すれば良いが、それまでの間は民衆の前に王女が姿を出し難くなるのは厄介よの。噂がその後付きまとうのも避けられんのじゃ」

「幻影で姿を誤魔化すのは可能だが、多数の前だと魔法が打ち破られる危険もある。やはり――」


 今まではっきりと口に出してはこなかったが、嫌な可能性だ。

 おまけに赤ん坊を処理とか冷淡な手段が当然の様に出てくるのは、さすがは元王族のアイシャというか……。

 貴族にとって血筋が重要なのは分かるが、よくある事だったりするのか?


「ユーマ……」

「そうなってないと良いな、すぐに助けに行くよ」 

 

 比較的親しいはずのサビーナさんにも今は近づき難いのか、ずっと隣にいるレティが袖を引いて見上げてくる。

 事が事だけに大丈夫だ、なんて言えはしない。

 その肩を抱き寄せると、不安のあまりかレティが胸に顔を埋めてくる。

 この場で泣いたりしていないのは褒めてやりたいが、ミュリエルにそうするように頭を撫でて落ち着かせるくらいしか今はできない。

 

「今聞いた通りフェリシア側の準備は良いらしい、こっちはどうだ?」


 レティを抱いたまま、頼りになる――というかもう任せっぱなしの参謀達、それに指揮官達に確認をとる。

 

「軍備、糧食は来年の冬までを見越しておる。それ以上となれば南からの輸入となるが、高く付くのを覚悟した方が良いの。兵の数次第では現地調達も視野に入れるのじゃ」

「アオと周辺の町の住民は、むしろ神竜殺しはまだ兵を挙げないのか? と言った雰囲気ですね。近隣はまだあなたを待っていますが、遠方となると小規模の暴発も起きているようです」 

「私の実家は向こうに付くかもしれないが……私はこの町の領主だ。領民を守るのに最善と思われる事をするよ」

「そろそろ働かないと契約金を減らされるんじゃないかと、傭兵共は不安がってますよ」


 みんなの返答に大きく頷く。

 緊張に震える喉から言葉を絞り出し、俺の意思を伝える。

 これでもう後戻りは出来ない、首謀者の俺は何があっても進むしか無い。


「3日以内にフェリシアの救出を決行する、準備を頼む」


 フェリシアを救出すれば、後は反乱一直線だ。

 思わずレティを抱く腕にも力が入って、胸元からの小声に慌てて腕を緩める。

 おまけに緊張で忘れてたが、レティの保護者に近い立場の人がこの場にいるじゃないか。

 王女であるレティを抱いているというのは、ひょっとして不快に思われてやしないかと視線を向けると、サビーナさんはひどく真面目な顔でレティを見て、改めてみんなに向き直った。


「フェリシア様の救出協力に対し、礼を言わせて欲しい。そして――遅れましたが、レティシア様の保護に力を尽くされた皆様へ、主に代わり深く感謝を致します」


 主に代わり……か。

 言い含められていたのかもしれないが、真摯に頭を下げるその姿は本心からでもある気がするな。


**********


「レティシア様はユーマ殿の屋敷に保護されていると聞いているが」

「その通りだよ、俺の家族として扱ってるし町の人間にもそう言ってる」 


 もちろん本人次第だが。

 その本人は協議後、迎えに来て待っていたミュリエルと手を取り合って遊びに出かけた。

 その耳にはハーフエルフの耳を隠す、幻影の魔道具が付けられている。

 そしてレティを見送った俺は、サビーナさんを呼び止めたんだが。

 

「それはレティシア様を、妻として迎える気があるという発言と受け取るが?」

「いや、そういう意味じゃないかな。ウチの家族は血縁関係も無いし、法的に言えば一緒に暮らしてるだけ。大体種族もバラバラだしね」


 寄り合い所帯で偶然だが、人間いないしな。

 国内有数の都市だった旧マダーニと同等以上の規模になるのを想定してアオの町は再整備されたが、町の顔である俺は服装と同じく相応の屋敷に住めと数回目の引っ越しを余儀なくされていた。

 ソフィア師匠との同居や、その後に増える家族の事を考えても……という事で移ったが、将来の町における一等地と呼べる場所に建てられたそこは家というより屋敷。

 当然部屋には余裕があるどころか、設計に口を挟めたのもあって隠し部屋まであったりする。

 なのでレティに個室を用意するくらいは、大した問題じゃない。

 ちなみに掃除洗濯なんかは、小型のゴーレムの仕事だ。


「そうか……フェリシア様からはそのつもりがあるのであれば、レティシア様との結婚を認めるとお言葉を頂いているのだが」

「押し付けられなくてもレティは俺の家族ですよ、大切な友人でもある。フェリシアに何かを言われなくても、保護する気に変わりはないです」

 

 それはありがたいが……と言葉を濁すサビーナさんには、俺からも聞きたい事がある。

 というか、その為に呼び止めたんだ。


「単刀直入に言いますが、南の諸国が難民に対して国境を閉ざしたのは――フェリシアが手を回してないですか?」

「……それなりに確信があるようだな、その通りだ。伝手を頼り、噂と金を流して連中の欲を煽った結果だな。もちろん難民を受け入れたくは無いという、向こうの事情があった上での話だが」


 俺はフェリシアを他の皆より少しは知っている、俺よりフェリシアを知るレティよりも汚いやり口についてを知ってもいる。

 

 俺達は元々、公爵にある程度従うつもりだったんだ。

 それが予定外に公爵が態度を硬化させ、こちらの思惑と外れていったのは、ミノー王国が想像以上に追い込まれたから。

 特に厳しかったのは、南に国境を接している国が難民に対して国境を閉ざした件。

 

 難民と彼らに接さざるを得ない民衆の生活は、物資の不足という目に見える形となって逼迫していった。

 そして戦災によって逃れてきた難民達の恐怖は、こちらの住民にも伝播する。

 俺達が流した吟遊詩人の詩もあって、神竜殺しの虚名はうなぎ登り。

 公爵側も警戒感を露わにし――。


「俺達は選択肢を減らす事になり、反乱を起こすまで追い詰められたと」

「選択肢か……フェリシア様も、そう数多くの選択肢をお持ちではないのだ」

 

 だろうなあ。

 多分これは俺達が公爵に敵対しない事で、レティを救出しない可能性を考慮したんだと思う。

 フェリシアからの手紙には「お願い」としてレティの保護について書かれていた。


 軟禁状態のフェリシアからの命令には、実効力って物がない。

 町を守れという命令なら俺達の利害に直結しているので聞くが、レティの保護となると俺個人の感情問題でしかないからな。

 万が一を考えて無理矢理自分側に引っ張り込む様に、裏から手を回していたんだろう。


 潜伏した親衛隊にレティの救出を命じた所で、その後に自分が不自由なまま外に支援者も居ないでは、お先が真っ暗だ。

 それなりの規模の拠点を持った俺達を巻き込んで、自分が実権を握らなければ双子の王女の将来は暗い。

 そういう事かな。


「君達を嵌めて内戦に持ち込んだフェリシア様には不満を抱くだろうが――」

「いや、ウチの舵取りをしてる顧問に軍師に領主様も、公爵が頭じゃ異種族に滅ぼされるだけってのは一致してたから、そこまでの不満ってのはないですよ」


 内戦に持ち込まれた事についてはね。

 確認を取りたかったのは、俺が不満を持っているのは。


 家族の命がかかった決定を、他人に誘導されて選ばざるを得なかった事だ。

 もっと早く、フェリシアの様に事前に、自主的に動けていれば――。

 フェリシアはやるべき事をやった、俺の不満は、俺自身への物だ。

ブクマ、評価、感想、誤字訂正等いつもありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[一言] 産んだ後に処理するのは太陽神の怒りに触れない感じですか? 確か中絶はアウトだったような気がしますが
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