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最強の娘と虚名を得た俺は、乱世から逃れられないので終わらせる!  作者: 楼手印
3章 動乱! 火付け役? なってやりますよ!
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005話 フェリシアの開拓村……そして誘惑

「すごい人数だな……これを1ヶ所の村に?」

「いいえ、ひとまず5つの候補を選定していますので、そこへ振り分ける予定です」


 俺達は現在アオの町を離れ、王都でフェリシアと合流した後に元神竜の縄張りにほど近い町に来ている。

 そこで見た物はフェリシアによって集められたという、流民の集団だ。

 町の外に作られたキャンプは、一目で数千は下らない規模だと分かる。

 元々あった町の人口なんかより、余程多いぞ……。


「これが全部外側からの難民なのか……?」

「大部分はそうですね、シータ公国が滅びた事でバキラ王国の国土は大幅に減じました。人の住める領域は狭まり、異種族との前線となる区域も増えましたので」

「大部分っていう事は、他からも来てるの……来てるんですか?」


 ミュリエルの質問に、流民への印象を考慮してか今日は比較的質素なドレスを着たフェリシアが笑顔を向ける。


「ミュリエルさんも、どうか親しい言葉遣いでお願いします。いずれの話とはいえ、わたくし達は義理の母娘の関係となるのですから」

「うぇ……」

「それはレティのマネか? そこについては見習わない方が良いぞミュリエル」


 あの王女様は庶民でも中々しない言葉遣いをするからな。

 妹を見習ったと言われれば怒りにくいのもあるのか、ミュリエルの態度にフェリシアは気を悪くした様子もない。

 むしろちょっと面白そうに笑ってるな。


「ミノー王国に所属する街や村はおおよその人口を報告されていますが、戸籍に載っていない方々も国内にはおられます」

「税金は払わなくていいけど、人間には暮らしにくい生活らしいね。あたしはそうでもなかったけど」

「そりゃ完全にドラゴンの生活してればそうだろうな」


 開墾した土地を与え、しばらくの間は企画した王女自らが支援を行うと、国中にお触れを出していた結果か。

 ウチの町でもそうだが、既に出来上がった町や村で新たに住民として加わるのは難しい。

 追放者の村と呼ばれていた頃の村の様に、食料や物資の不足が理由だったり、現在のアオの町の様に居住権を売る段階にまでなっていたりがその理由だ。 

 流民の多くは物々交換で生計を立てているので、居住権など買えはしない。


 防壁で守られた町ほどではなくとも、簡単な柵があり一定の住民がいる村というだけで、安全には天地の差がある。

 さらに店を構えた商人が居住していたり、行商人が定期的に訪れて物資を補充するアテがあるというのも大きい。

 税や労役や兵役の義務が無いとはいえ、国家に属していないというのは生きるだけでも大変なのだ。


 戸籍に載ってない生活も不便は無かったと言い放つ、ハーフドラゴンのイェリンは特殊例過ぎる。  

 もっともそのイェリンやアイシャの様な何らかの才覚があれば、こちらから招く事だってあるが。

 そういや俺もその口か。


「それで、あたしは何をすれば良いんだっけ?」

「イェリン……殿には、元神竜の縄張りを開拓するに当たって、候補となった地域の周辺事情を教えて頂きたい」


 イェリンに答えたのはフェリシアの側近であるサビーナ様。

 アオの町の住民であり、今では戸籍にも載っている一般の国民であるイェリンに対して、ここまでは態度をどうするか戸惑っている節があった。

 でもどうやら神竜の娘という血筋に敬意を払う事にしたらしい。

 ――俺も主人のフェリシアを呼び捨てにしてるのに、サビーナ様への態度をどうしようかって点では悩ましいところだ。


「そんなんで良いの? その辺の魔獣とかを大人しくさせろって言われるかと思ってたよ」

「魔獣を……? そんな事が出来るのか?」

「出来るよ~あんまり強いのとか、モンスターは無理だけどね」

「それは素晴らしいですね、こちらの開拓が進めばイェリンさんに定住して頂きたいくらいです」


 ……フェリシアの笑みが消えてる、これは本気で勧誘を考えてるな。

 それだけこの開拓がフェリシアにとって重要なんだろう。

 例え国王の持つ権威や武力であろうと、手を出せない場所を造ること。

 

 神竜の縄張りはミノー王国にとって辺境と言っていい位置にある。

 中央から離れた場所に、その足がかりを作るつもりだ。

 フェリシアにとって最も大切な物を、後々まで守り通す為に。


「手を出せない……出して得られる利益と比べて高いリスクを負うって所が妥協点ですか?」

「その辺りが現実的な所かと。神竜の血筋、勇者の血筋……国王にも劣らぬ権威が住むというのも、その一助になりませんか?」

「それは邪魔に思う王が出ると思いますよ? 最高権威が自分じゃないなんて」


 まだ婚約者でしかないのに、フェリシアが俺にちょっとアレな誘いをかけてくる理由である。

 今回も町に宿を取ろうとしたら「ユーマ様はフェリシア様がご用意した馬車にと聞いておりますが……」なんて言われた。

 旅の間の寝所、親衛隊に囲まれた馬車というのが確かにあったんだが、フェリシアの分である1台しか見当たらなかったんですけど⁉

 しかし、今回はそんな事もあろうかと!


「それじゃ今日はそろそろ宿に帰ろうか」

「ユーマ様は、本当に来てくださらないのですか……?」


 おずおずと俺の手を取って恥ずかしそうに頬を染め、ちらりと潤んだ瞳で俺を見るフェリシア。

 ……色々と打ち明けられた俺に、そんな物が通用するとでも?


「お父様……お父様! ダメだよ、今日は私と同じ部屋で寝るんでしょ⁉」

「はっ⁉ そういう事になってるんで、今日のところは……」

「そうですか……いいのです、これが最後の機会でもありませんし」


 フェリシアの肩に手をかけそうになってたぞ、危なかった……⁉

 心のストッパーとして一緒に来てもらっていたミュリエルに引っ張られながら、微笑むフェリシアを盗み見る。

 手で口元を隠して楽しそうに笑いながらも俺から視線を外していないその様子は、からかい半分と――どこまでも真剣な物が半分に見えた。

 

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[一言] ちょろいのは女の子だけでいいです! 将来跡目争いになりそうだし…
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