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最強の娘と虚名を得た俺は、乱世から逃れられないので終わらせる!  作者: 楼手印
2章 勇者なんて虚名です、神竜より強いわけ無いじゃないですか!
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052話 ソフィア師匠への弁明……知ってたんです⁉

 ジローと共に、王都から町へと帰った俺だが……非常に困っていた。

 当然ながら師匠との事である。

 

「ジ、ジローならどうする?」

「正直に全てを打ち明ける。そして……王女殿下からの申し入れなど拒否出来るはずもない、想い人には別れを告げる他は無いな」


 そんなのヤダー⁉

 だが、話せる部分は正直に話すというのは当然の対応か。

 フェリシア様からは師匠に事情を打ち明ける許可を、ある程度は貰っている。

 もし他へ漏れれば……「ユーマ様にも相応の代価を支払って頂きます、その方がわたくしとしては気兼ねが必要ないのですけれど」などと、怖い笑顔で言われたので固く口止めする必要はあるんだが。


「あら? 帰ったのねユーマ、ジローさん」


 心を決める前だっていうのに、こういう時は簡単に顔を合わせちゃいますね、師匠!

 ジグザグに付けられた台地の坂を登ったすぐ上に再建された、町の正門をくぐった直後なんですけど!

 普段は町の外の人間にあまり顔を見せないよう、奥にいる事が多いですよね⁉


「し、師匠……ただいま帰りました!」

「ただいまソフィアさん。ユーマがお話があるようですよ?」


 ジローめ⁉  

 挨拶もそこそこに、去っていくジローを恨めしい目で見つめる。

 でも、先延ばしにしても仕方無い……。


「え~っと……とりあえず、俺の家にどうですか? 話さなければいけない事は確かにあるので……」

「そうね……私からも、たぶん同じ様な用件よ?」

「……へ?」


 師匠の言葉に疑問符を浮かべながら、我が家へと向かう。

 まだ日の高い時間のせいか、みんな出かけている様で鍵を開けて師匠を中へと招く。

 茶(未だに森で収穫される葉っぱだが)を淹れ、テーブルに着きながら……まずは師匠の話を伺うか。


「師匠は、俺の用件をご存知なんでしょうか?」

「あなたとフェリシア王女との婚約の件でしょう?」

「っ! その話はどこから……⁉」

「この2~3日の間かしら? 町に来る人達が噂をしていたらしいわ」


 その期間に噂が町に入ったとなると……俺が王都にいる頃には既に周囲に噂をまかれていた事になる。

 先手を打たれたか! ……この外堀を埋めるやり口、既視感がある気がするがこの際それは無視しよう。


「実は、フェリシア様にも事情があってですね、建前上そういう事になるしかなかったと言うか……」

「噂では前々からあなたとフェリシア王女は恋仲だったそうよ? さすがに頭から信じる気は起きなかったわね」


 平然とお茶を口にする師匠。

 動揺の欠片も無いのはさすがというか……俺に興味が無いからって事はないですよね⁉

 その態度は俺の口から事情を伝えても変わる事はなく、逆にこちらばかりが焦ってしまう始末だ。


「――という事情でして。フェリシア様の目的を考えれば、達成後はそれほど俺を必要とはしないと思うんです。なのでそちらを全力で叶えれば、婚約を解消して師匠との結婚を正式に行えるじゃないか、というのが俺の気持ちなんです」

「婚約の解消については、やはり体裁が悪いわね。上手くいくかしら? ……それに、あなたが帰ってくるまでに時間があったから、私なりに考えたのよ」


 師匠が落ち着いているのは、噂を聞いて数日経っているからか。

 俺とのやりとりも想定済みって事かもしれないな、フェリシア様の目的までは知らなかったろうが。


「あなたへの返答を待たせ過ぎた私の失敗でもあると思うの。曖昧な態度で保留していなければ、フェリシア王女が介入する隙なんて無かったでしょうしね」

「え~っと……それは、どういう?」


 愛人なんて! という師匠を説得する方向で物を考えていたんで、師匠が事前に情報を得て考えをまとめていたってのは、予定外も良いところなんだ。

 師匠は既に何らかの決断をしているらしい、俺としてはそれを聞くしか――。


「フェリシア王女との婚約を拒否するのは難しい、婚約後に解消も同様。でも、ユーマは私との結婚の為に全力を尽くしてくれる、という事で良いのかしら?」

「ええ、他の女性との結婚なんて考えた事もないですよ。この町で働いてきたのも、師匠との結婚の為でしたからね」


 師匠が大きく深呼吸をし、その大きな胸をさらに膨らませる。

 ついで上げた視線を合わせた時に出た言葉は――。


「あなたの求愛を受け入れるわユーマ。フェリシア王女との婚約を可能な限り解消に向かわせるというのも信じましょう。それが叶わなかったら……愛人でも、仕方ないわね」

 

 椅子を蹴立て、立ち上がる。

 少し驚いた様子の師匠を抱きしめ、座ったままのその体の柔らかさを全身で受け止めた。


「ありがとうございますソフィア師匠! 幸せにしてみせますよ! フェリシア様との婚約なんて蹴り飛ばしてみせますとも!」

「いえ蹴り飛ばしまでは……それに、あなたなら私の事情も理解して上で――あの、ユーマ? ちょっと……?」


 えぇ師匠の事情ならそれなりに調べましたとも! でも魔女がなんですか!

 たかが前の職場が引き抜きたがっているくらいの事、大した事じゃない。 

 そう――今、この師匠の服を留めている紐を解く方がよほど……アレ? これ全然解けないな?


「ユ、ユーマ……? まさかここで? 待ちなさい、その紐は魔法で留めているから解けないわよ⁉」

「なんですと⁉ 正式に結婚を前提としましたし、フェリシア様がこれ以上余計な介入をしてくる前に、既成事実をと思ってですね。これまでお預けした失敗を悟ったとも仰っていましたし……」

「ひ、紐が解けないからって……スカートをめくらないで⁉」

「うおっ⁉」


 腕が麻痺した⁉

 さすが師匠、動揺したまま動作も呪文も無しに魔法を発動させるとは。


「この期に及んでお預けとは……いえ、もう少し手順を踏むべきでした。あまりの事に興奮しすぎて……すみません」

「はあ……いい事? 誰かが帰ってきたらどうするつもりだったの? それに、ここでするつもり? ミュリエルが生活している場所で?」


 ……返す言葉もない。

 興奮から一転、しょんぼりした俺にソフィア師匠がさらに言い募り――。

 その後、出かけた俺がもう一度家に帰ったのは日が落ちてからだった。

 師匠の発言は、こうだ。


「場所を変えましょう、麻痺を解いてあげるから私の家に来なさい」


更新遅くなりました! ごめんなさい!

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