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最強の娘と虚名を得た俺は、乱世から逃れられないので終わらせる!  作者: 楼手印
2章 勇者なんて虚名です、神竜より強いわけ無いじゃないですか!
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043話 アトラスⅡVS神竜 炸裂! ドラゴンブレス

「ぶっ倒せアトラスⅡ!」

「ま”っ!」


 どこか人工な雰囲気を感じさせる巨大な洞窟。

 その場所の主は前進を鱗に覆われ、大きな翼を持つ生物ドラゴンだ。

 数十mの通路を抜けた広間に鎮座していた神竜だが、当然侵入者の存在は感知しているだろう。

 何せ身長30mの巨人だからな。


 少なく見積もっても400年以上を生き、人間と同等以上の知性を持っているらしい神竜だが、問答無用でアトラスⅡに攻撃を命じる。

 最初から命を奪いに来てるんだ、知性があるなら余計な事をされる前に畳み掛けた方が良いだろう。


 動作自体は遅く見えるアトラスⅡだが、その歩幅は巨体に見合った大きさだ。

 人間には追いつけない速度で神竜の元へ踏み込むと、巨岩そのものな拳を振りかぶる。


 回避する――その予想を裏切り、神竜は体を半回転させると巨大な尻尾をしならせてカウンターを放つ!

 石材で出来た巨体に生物の尾が叩きつけられ、アトラスⅡがバランスを崩した。

 だが、その一撃は神竜の胴体に命中はしていたはずだ。


 少し離れた場所から見るに、アトラスⅡのボディには耐えきれない程の損傷は見られない。

 だが身を起こした神竜も、さほどのダメージを負った様子はない。

 初撃は痛み分けってとこか。

 

 しかし軽い挨拶は神竜の闘争心に火を点けたらしい。

 大盾を構えてアトラスⅡの後ろに距離を取る俺達に一瞬視線をくれた後、強烈な咆哮を放った。


「グルルォォァァァ――‼」

「ひっ……た、助けてくれぇぇぇ⁉」


 後ろから情けないにも程がある悲鳴があがる。

 驚いて振り返ると洞窟の地面に手をつきながら、バタバタと外へ向かって逃げるジローの後ろ姿があった。


「……あいつマジか?」

「ねぇいくらなんでも、あんまりな悲鳴が聞こえたんだけど?」

「イェリンも固まってるッスよ……」


 う~ん……ジローと共に訓練してきた期間は、そろそろ5年に近いんだが。

 あれは反省会モノだろう……。


「イェリン、そのまま待機だ! 行けアトラスⅡ!」

「……は~い」

「ま”」


 アトラスⅡの初撃は尻尾で胸を打たれて後退しながらも、神竜の胴体に直撃して鱗を弾けさせ、自身と同様に神竜を後退りさせていた。

 凄まじい激突音と衝撃波が、俺達の体までビリビリと震わせたが――イケる。

 まともに入らなかった拳ですらダメージを与えている、肉弾戦なら十分以上の勝算がやはり有る――⁉


 そう判断した直後、恐怖を感じて構えた大盾の後ろに身を隠す。

 神竜がその口を大きく開け、ガスの様なモノが漏れる音が聞こえたからだ。

 視界を塞ぐ大盾の向こうで、ボンッ! という爆発音と共に洞窟が一気に明るくなる。

 

「ドラゴンブレス……! イェリン無事か⁉」

「こっちがダメなら、そっちはもう死んでるよ! 同じ魔道具でしょ?」


 そうだった、大丈夫だと事前に分かっててもやっぱり恐怖心には負けるな。

 防熱のネックレスは所有者とその持ち物などの周囲を、熱や火等から守る。

 事実、大盾には爆風で飛んできた石が当たっている物の、俺の体は熱を感じていない。

 

 大盾の角度を変え、アトラスⅡと神竜の様子を探ると変わらず対峙して――いや?

 アトラスⅡが、半身を引いて体を反らしている。

 どう見ても防御のための姿勢だ。


 アトラスⅡにはそれなりの判断能力があり、俺達が身につけているのと同程度の防熱加工がその体に施されている。

 「溶鉱炉に叩き込まれでもしない限りは問題ない」そう太鼓判を押した施工者の言う通り、熱を感じさえしないはず……。

 

 だが、実際にはアトラスⅡはドラゴンブレスを浴びて、防御態勢を取った。

 眩しさを堪えて戦う2体を観察する。


「――っ! アトラスⅡ! 氷の拳だ!」

「ま”っ」


 神竜に対して左半身を盾にするように、体を半身にしているアトラスⅡが、引いていた右腕を前に突き出す。

 その拳から猛吹雪が吹き荒れ、浴びせられるドラゴンブレスをわずかながら押し返し始める。


 右拳に仕込んだ切り札。

 それは冷却の魔道具を使い切る前提で暴発させる、極低温の必殺パンチだ。

 それを、距離のある今使わせた理由は簡単だ。

 

 アトラスⅡが盾にしていた左半身が、赤熱して溶け始めていたから。

 防熱の魔法は耐えられる温度までは、一切の熱を感じない。

 問題がなければアトラスⅡは、ブレスを無視して殴りかかっていたはずなのだ。


 溶鉱炉にでも叩き込まれなければ、問題は無かった。

 でもドラゴンブレスは、溶鉱炉以上の熱を持っているらしい。

 俺達が無事なのは、距離を取っているからってだけだ。


「これが……あと2回?」


 イェリンによれば、神竜のドラゴンブレスは1日に3回まで。

 そして俺がアトラスⅡに仕込んだ切り札は、両拳にひとつずつだ。


 ――防御だけでも1回分足りない。


 神竜はこちらの切り札の回数を知らない。

 知っていれば、ブレスを連続するだけでこちらの敗北が確定する。


「グゥゥゥアアアアアアア――‼」


 ブレスを吐き切り、再び闘争心に満ちた雄叫びを上げる神竜。

 熱を感じない体に、汗が吹き出る。


 ドラゴンを甘く見すぎていた――そう、悟る。

 同時に乾いた笑いが口を出る。


「ジロー……さっきのは大げさでも何でもなかったな……」

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