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ハレーGP⑤

 ルリウス星の真理之花女学園。生徒たちは放課後の部活動中。

 校庭を走っていた麗子にピンニョが事故の事を知らせる。

「うそ」

 麗子は校舎の屋上にいる美理を見る。

 天文部の美理は望遠鏡の調整をしつつ、ラジオを聴いている。

 美理は心配そうに空を見上げる。 

 明たちがどうなったか、兄に連絡したい。でも向こうも大忙しだろう。


 月のメインスタジアムは大騒ぎとなっていた。 

 それ以上にパドックは情報収集とパイロットへの連絡で騒然としていた。

 シャーロットが呼びかける。「明くん!マーチンくん!聞こえる?大丈夫?」

『・・・大丈夫。問題ない』

 明とマーチンにケガは無かった。<フロンティア号>の損傷も無い。

 イエローフラッグでレースは中断。各船は停止し、ワープトンネルの手前で順番に縦一列に並び待機。安全確認後にレース再開予定だ。トンネルを通過した1位と2位はトンネル出口で待機。この事故で3機がリタイアとなった。


 約10分後。

 待機していた41機の宇宙船はセーフティロケットの先導でワープトンネルに入って行く。

 コースアウトした<フロンティア号>と<イエローバッカス>はコース復帰に手間取り、順位はそれぞれ23位と26位に落ちていた。

 イエローフラッグ中は自動操縦オートパイロットにしても構わない。

「おやすみ」

 明とマーチンはトイレを済ませ(おむつはしている)自動操縦にして仮眠をとる。

 トンネル出口で待機中の<フリーダム>。そのコクピット、ジョーカー=ブラッドとシュガーも眠っている。ブラッドの席の周りには古風なプリント写真が数枚貼られている。綺麗なお姉さんの写真に混じって母子と思しき写真もある。

 ワープトンネル内を微速で進む。果てしなく続くかの様な直線コース。カーブは一つも無い。通常のレースで約15分かかる(天王星~海王星はもっと長く30分かかる)所を1時間かけて通過。出口で待機していたトップ2機と合流。

『まさかまだ寝てるんじゃないでしょうね』

 シャーロットの通信に、明とマーチンは飛び起きる。あぶねー。

 トンネルを抜けてしばらく航行した後、セーフティロケットがコースから逸れて行く。

 天王星軌道到達。レース再開。

 43機の宇宙船は一斉にエンジンを噴射。

 トップは①<フリーダム>、2位②<デスウィング>、3位⑤<ブラックスワン>・・・

 明は文字通りのロケットスタートで3機を抜き、20位。

 一丸となって海王星軌道へのワープトンネルに突入する。


「もうダメだな、17番は」

 そう言った隣の男をヨキは見上げる。

「ここにきて20位じゃ入賞は無理だ。せっかく頑張ってたのに」

 ヨキはニコリと微笑んでつぶやく。

「順位は落ちたけど、トップとのタイム差はあまり変わっていない。ぜってー諦めてないって」

 グレイは先程から傍にいない。何者からか通信があり、離れた木の下で今も通話中だ。

 腕時計型通信機から投影された相手の映像は”SOUNDONLY”の表示。

「なにっ!?・・誰だ?なぜ俺に?」

『信じる信じないは君次第だ。私の地球が被害に遭うのは非常に困るのでな。古巣の銀河パトロールに連絡するなり、お友達のスペースマンに教えるなり好きにしてくれ。』 

「・・・(この声・・どこかで聞いた事がある)」

 通信が切れる。

 すぐさまグレイはどこかへ通信。


 ワープトンネルの直径は1km。宇宙船が競り合うには十分な幅があるが、トンネルの壁の向こうは通常空間でコースアウトとなる。復帰は可能だがトンネル入口まで戻る必要がある。事故を恐れて速度を控える船が多い中、順位を上げている船がある。<フロンティア号>16位浮上。それ以上の速度で後続を引き離すのはトップの<フリーダム>だ。2位<デスウィング>が食い下がる。

「気に入らないな」ジョーカー=ブラッドは機嫌悪い。

 2位の<デスウィング>はシンクロ機だ。自分の航跡をトレースして付いて来る。引き離そうとすると監督からペースダウンの指示が来る。ここまで各惑星軌道間の区間新記録を取って来たが、イエローフラッグのせいで大会記録コースレコードの望みは絶たれてしまった。彼には今回気になるパイロットがいる。奴は今15位に上がった。

 明の前方に14位⑱<ハニートラップ>。パイロットはK&M、セクシーな女性ペアだ。

 二日前に行われた前夜祭では胸元が開いたドレスで登場していた。もちろん明はチラ見。対して彼女らをガン見していたのはチャンピオンのジョーカー=ブラッドだ。

「そんなねーちゃんいたか?」マーチンが尋ねる。お前は料理しか見てないだろ。

 明は機体を左へ。

 <ハニートラップ>はブロック。

 明は操縦桿を引き、上へ。

 ブロック。なかなか抜けない。

『だめ。抜いちゃいや』通信が入る。

 おいおい。レーサー同士の通信は禁止だったはず。

『どけー!!!カマ掘るぞ!!』

 後方から⑥<イエローバッカス>が猛スピードで迫る。パイロットのカマー&オネーはオカマ。明たちより後方にいた筈なのに。

 <イエローバッカス>は強引に2機を追い抜いていく。

「バリアー出力上げろ!」

 追い抜かれるやいな、明はその背後に付き、<ハニートラップ>を抜き去る。

「あの黄色い奴、あんなんでエンジンもつのか?」明の問いに、

「遠日点辺りでピットインするつもりなんだろ」マーチンが答える。

 トンネル出口が近づく。

 海王星軌道到達。15位。

 ここの区間レコードは初めて<フリーダム>ではなく<イエローバッカス>だった。


 月のパドック。時刻はまもなく午前2時。

 モニターを見ながら啓作がつぶやく。

「ここは勝負どころだな」

 仮眠をとっていたシャーロットは通信で起こされる。

「啓作。グレイから通信」

「後にしてくれ」モニターから視線を変えずに答える。

「急いでるみたい。出てあげて」

 しぶしぶ啓作は通信を代わる。

「何だ?どうした?」

 話を聞いた啓作の顔色が変わる。

「ハレー彗星の軌道を変える?・・そんな馬鹿な」


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