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デッド・オア・アライブ④

 小惑星帯を移動する小さな影。動きながらライフルに光子弾を装填する。

 パワードスーツに見えるが、スラスターが多数付いた宇宙服だ。

 長身の男は巧みにスラスターを噴射して小惑星の間を高速で移動する。

 グレイが説明する。「殺し屋イエ―。地球人らしいが正体は不明だ。特注の大型ライフルを使い、これまで狙われて助かった者は・・いない」

 ヘルメットの中、七三に分けた黒髪、高い鼻。サングラスに惑星状星雲と標的が映る。

 無言で引き金を引く。

 担いだ大型ライフルから高出力のエネルギー弾が飛び出す。

 反動で男は彼方へ飛ばされて行く。スラスターを噴射し小惑星に紛れる。

 エネルギー弾は<フロンティア号>へ・・・

「ワーププログラミングできました」

 麗子がそう言うのと同時、エネルギー弾がメインエンジンを直撃する。

 ズドドドオオオオオーーーンン。今までで一番大きな衝撃が船を襲う。

「メインエンジン停止!エネルギーカット!」 「ダメージコントロール!」

「予定のワープ不可能!でも近距離なら・・プログラミングやり直します」

 乱れた髪を直す暇もなく麗子は作業に没頭する。

「反重力ミサイルで小惑星帯ごと吹き飛ばしてやる!」ヨキが叫ぶ。 

「やめろ!ハッチを開けるな!」グレイが制止するが・・

 Gに耐えながらイエ―が引き金を引く。

 発射!

 エネルギー弾はわずかに開いたハッチの中へ・・・

 爆発!!

 反重力ミサイルが誘爆することはないが、格納庫が全焼。

「あー!食糧庫があ~!・・マーチンに殺される」ヨキが青ざめる。

 たった一人の狙撃手スナイパーになす術もなく翻弄される。

「総員ヘルメット着用!」明が命じる。「奴は正確にこちらの重要ポイントを突いて来る・・だとしたら、次は・・」

 明は姿勢制御ノズルを噴射。船首が下を向く。

 エネルギー弾がメインコクピットのすぐそばを掠める。

 衝撃で窓にヒビが入る。

「とにかく逃げる!」

 弾幕を張りつつ<フロンティア号>は小惑星帯を離れる。

 その途端。エネルギー弾がプロトン砲を直撃する。

「!」

 プロトン砲の砲身一門が大破。サブコクピットも半壊する。

「ボッケン!ヨキ!」

『ザー・・ふたりとも無事だ、でもここはもう使えない・・』

 小惑星帯より遠ざかる<フロンティア号>。それを狙うイエ―。

 引き金に指が掛かる。

「!」

「重力震です!」美理が叫ぶ。

「どこだ?」

「多数・・辺り一面・・」美理の顔が青ざめる。

 <フロンティア号>の周囲に大銀河帝国艦隊がワープアウトして来る。約170隻。先程の四天王白虎の艦隊だ。

「わははははははは・・・・もう逃がさん!ここが貴様らの墓場だ」

 笑いながら白虎が立ち上がる。「総攻撃開始!」

 艦隊が一斉に攻撃を始める。

「・・・・」イエ―はライフルを下ろす。 

 飛び交うビームの中を<フロンティア号>は飛ぶ。

 ワーププログラミングは終わったが、この状況でワープは不可能だ。

「ピンポイント攻撃・しかない」明がつぶやく。

 回避行動しつつ、明はある一点を目指し操縦桿を握る。

「全速前進!」

 ドギャアアーーンン。使えるエンジンを全力噴射。

 四方八方から敵の攻撃が来る。

 数が多い、避け切れない。

 被弾。左翼を失う。続けて第4エンジン被弾。自動停止。

 避けた敵のビームが敵巡洋艦に命中する。

 同士討ち・誤射で多くの敵艦が散っていく。

 メインコクピットに着いたヨキは副操縦席へ、ボッケンはソファへ。

 皆疲労の色が濃い。

 一門のみとなったプロトン砲を発射!前に固定、旋回はできない。

 針路上の駆逐艦に命中。大破。

 青白い光の残像を残して<フロンティア号>は一直線に敵旗艦へ向かう。

「!」

 接近に気付いた白虎が命じる。「落とせ!近づけさせるな!」

 ズズーン。 

 第3エンジンに被弾。停止はしないが出力は低下する。

 大浴場に被弾。美理たちの居室も炎に包まれる。

 右舷前方ミサイル発射管被弾。

 第二格納庫に被弾。WC-001が木っ端微塵に吹っ飛ぶ。

 炎を上げ煙を吹きながらも宇宙船ふねは飛び続ける。

「もう一息だな」白虎がそう呟いた時、

 ビシッ!

 艦橋の窓に穴が開き、強化装甲ガラスが砕け散る。弾の通り抜けた天井も吹き飛ぶ。

 すぐさま透明な自動シャッターが下ろされ、空気の流出はすぐに止まる。

 イエ―はスコープから目を離す。獲物を横取りされた借りは返した。

 スラスターを噴射して闇に紛れる。

 <フロンティア号>の目前に400mを越す敵旗艦が迫る。艦橋を攻撃され沈黙している。

「ヨキ!ESPでバリアーを前面に張れ!」

「わあった」

「ショックに備えろ!」

 旗艦の甲板上宙を飛び、艦橋へ。

 ドガッツ!!!! 衝撃!バリアー対バリアー。

 各席のエアバックが開いて衝撃を和らげる。

 医務室も同じだ。マーチンの浴槽から水が溢れる。溶液そのものが緩衝材となる。

 ズズウウウーーンン。激しい震動の後。

 イエ―の壊した艦橋の窓に<フロンティア号>の船首(壊れたアンテナバリアー発生装置)が突き刺さる。

 伏せていた顔を上げ、明は前を見据える。額から流れる血をもろともせず微笑む。

「これで外からの攻撃はなくなった」


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