デッド・オア・アライブ②
新たなバウンティハンターが<フロンティア号>に襲い掛かる。
「しつこい!」
「なんとかバリアーが守った。来るよ」
「引きつけて弾幕を張る」
敵宇宙船はプロトン砲を避けて接近する。
そこへレーザーの弾幕。
命中。エンジンを直撃。爆発。
「こいつは無人機だ。どこかに母艦がいるはず」
『左下方に大型艦。ステルス仕様!』サブコクピットのボッケンが見つけた。
「上方の小惑星帯に逃げ込む!」
「メインエンジンはワープに備えて温存。サブだけで行けるか?」マーチンが意見。
「やってみる」明は操縦桿を引く。
<フロンティア号>は小惑星帯へ。
無人機が追って来るが、母艦は静止したままだ。
「追ってこない・・」
「罠だ!」
通過した途端、後方の小惑星が爆発する。
それを合図に次々と小惑星に仕掛けられた爆弾が作動する。
「ボマー(爆弾魔)というバウンティハンターかもしれない」グレイがつぶやく。
「全速前進!メインエンジンも使う。アンテナバリアー出力最大!」
「エンジン休ませたかったなあ」マーチンはそう言いながら出力を微調整する。
<フロンティア号>は小惑星を右に左に上に下に避けながら駆け抜ける。
頭上の小惑星が爆発。
明はいつもより距離をとって星を避けていたが、それでも衝撃と破片が来る。
美理と麗子は衝撃と恐怖に耐える。
左右の小惑星が同時に爆発。
明は船を90度傾け、姿勢制御、上へ避ける。
グレイが「ボマーなら手口は遠隔操作が多い。金属や熱源探知式じゃないはずだ」
「ピンガー!打ちまくれ!」
明の命令に答えてマーチンがボタンを連打する。
<フロンティア号>が通過したあと、しばらくして小惑星が爆発。追って来ていた無人機を巻き込む。
「ピンガー効いてる?」妨害電波代わりになるのか。
「小惑星帯を抜けます」
『前方!機雷群!』ボッケンが伝える。
明は操縦桿を上へ。垂直上昇ノズルも噴射。急上昇する。
「疲れた」マーチンがピンガーから指を離す。
その途端、周囲の小惑星が一斉に爆発。
衝撃で<フロンティア号>はある小惑星の表面に叩きつけられる。
「いって~」
「みんな大丈夫か?」
「おう」 「大丈夫」 「問題なし」 「平気です」
「バリアー有効。船の損傷軽微」
「発進!」明は操縦桿を引く。
「!?」
<フロンティア号>は動かない。いや動けない。
その小惑星は強力な粘着性の液体金属で覆われていた。
「ベトベト・・接着剤みたいだ。どこぞの食虫植物にこんなのあったっけ」とヨキ。
「エンジン全開!垂直上昇ノズルも使え!」
ドギャアアーーーンンン。全力噴射でも船は動かない。
「つ~かまえた」
先程の大型宇宙船が下方より接近する。そのコクピットで太った大男ボマーが微笑む。
見た目はファンタジー物に出てくるオーグに似ている。手配書を見ながらボマーが舌なめずりする。
「このねーちゃんにヨーヨーでグリグリしてもらお♪」
ぞぞっ。美理に悪寒、虫唾が走る。
ビーム砲が<フロンティア号>に狙いを定める。
ズズーン。ボマーが撃つより先に小惑星にビームが命中する。
上方から別のバウンティハンター達が襲い掛かる。
「こら。それは俺の獲物だ」怒るボマー。
明は叫ぶ。「迎撃!船に当たりそうな奴だけ撃ち落とせ!」
「了解」
ホーミングレーザーが被弾を防ぐ。
<フロンティア号>とは反対側の地表に幾つもの攻撃が当たる。小惑星に亀裂が広がる。
ドヴァ!
次の瞬間。小惑星は粉々に。ベトベトの液体金属も吹き飛ぶ。
「脱出!」エンジン噴射。
砲火の中を姿勢制御。下へ。
「逃がすか!」ボマーがスイッチを押す。
小惑星帯外縁に仕掛けられた機雷が一斉に爆発する。
凄まじい爆発。バウンティハンター達が巻き込まれる。
その爆炎の中から<フロンティア号>が飛び出す。
「持ち駒は終わりかあー!」
プロトン砲を発射。
ボマーの大型艦に命中。大破。
「重力震多数!」
大銀河帝国艦隊約200隻がワープアウトする。何者かが通報したようだ。
旗艦の新型大型戦艦。艦橋にいるのは四天王の一人・白虎だ。復讐に燃えている。
明はメインパネルを指さし、「ここへワープする!プログラミングを!」
「え?ここは・・わかったわ」シャーロットは作業に入る。
「敵艦隊発砲!」
おびたたしい数のビームが来る。
「行けるわ」
「ワープ!」
約9光年先に<フロンティア号>はワープアウト。
続けてワープトレーサーに導かれ敵艦隊がワープアウトして来る。
白虎は驚愕する。「こ、ここは・・!!」
ワープ先はゲルク軍艦隊の真っただ中だ。
白虎は全軍に再ワープを命じた。
それを尻目に<フロンティア号>はワープで逃走する。
ワープ先に追手はなかった。
明はぽつりと言う。「使いたくない手だった」
生き延びるためとはいえ、両軍に犠牲者が出たと思うと心が痛む。
「シャーロットさん!」美理が叫ぶ。
シャーロットは気を失っていた。疲れ切っていた。




