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デッド・オア・アライブ①

第5章  デッド・オア・アライブ

 

 その手配書は銀河系中にばらまかれた。

“DEAD OR ALIVE(生死を問わず)・極悪非道犯罪集団<スペースマン>”

「ゲ」それは自分たちの指名手配書だ。全身と顔のアップが3D表示される。

“全ての悪の元凶、悪魔の男・弓月明”

「ひで―言われ方」 「何で鼻上向いてるんだ?」

「賞金1億か・・」「マーチンお前何考えてる?」

“死を呼ぶ黒い変態偽医者・流啓作”

「医師免許もっとるわ」「兄さん目つきやらしい!」

“走る凶器・ボッケン”

「・・・」

“空飛ぶ珍獣・ピンニョ”

「・・なんかやだ」

“呪われた魔女・シャーロット”

「化粧ケバいんですけど~」

“マッドなデブ・マーチン”

「俺ここまで太くないぞ」確かに実物よりかなり太い。

“存在が公然猥褻物陳列罪・ヨキ”

「ボロクソ」「なんやねんそれ」

“結婚詐欺、女の敵・グレイ”

「足が短い・・」悪意を感じる。

 美理と麗子も例外ではない。

“凶悪不良少女・流美理&山岡麗子”セーラー服姿で写っている。

「スカート長っ」 「何でヨーヨー持ってるの?」「わたしビー玉」

「ウソばっかり並べやがって」

「参ったな。これで地球人だけでなく、銀河中のバウンティハンター(賞金稼ぎ)から狙われる事になった。やっとオリオン腕を出たというのに・・」  

「賞金稼ぎか、ある意味軍隊よりやっかいだな」

 きょとんとする明に、グレイは話を続ける。「奴らの情報収集力はあなどれない」

「さっそくおいでなすった」

 メインレーダーが高速で接近する飛行物体をキャッチした。

 <フロンティア号>の現在位置は地球から約1万9千光年離れた核恒星系だ。銀河連合本部への行程の1/3を過ぎていた。はるか遠くに銀河中心の巨大ブラックホールからの「ジェット」が見える。

 小型宇宙船3機が後方より接近する。地球の船ではない。オウムガイを彷彿させる宇宙船。乗っているのは外骨格を持つ甲殻類の様な宇宙人のバウンティハンターだ。水棲生物でコクピットは液体で満たされている。いきなり発砲! 

 明はさらりとかわす。

「戦闘開始!」 

「まって・ください。説得します」通信席に座っていた美理がマイクを手にする。深呼吸して、「やめてください。私たちは手配書にあるような悪人ではありません!」

 返事はない。かわりにミサイルが来る。

 ホーミングレーザーで防御。

「攻撃をやめてください!私たちは・・」

「もういい。無駄だ」啓作が制する。「敵はプロだ。食うか食われるかだ。手加減できる相手じゃない」

 美理は何も言えない。シャーロットと交代し、最後列のソファに座る。唇を噛んで前を見る。隣の麗子は無言で美理の肩をそっと叩く。

 3機の敵機は小回りを生かして、交互に一撃離脱による攻撃を繰り返す。

 <フロンティア号>は方向転換しつつレーザー発射、避けた所へプロトン砲。 

 爆発。

「・・・」美理と麗子は声が洩れそうになるのを堪える。

 さらに別方向よりミサイル。・・・かわす。攻撃。

 爆発。あと1機。

「レーダー気をつけろよ。通報受けてデコラスの艦隊がやって来る」

 シャーロットはワーププログラミングを終える。

「重力震キャッチ!」

「ずらかれ!」 

 ワープ追跡装置トレーサー妨害用の爆雷を散布し、<フロンティア号>はワープする。


 <フロンティア号>は約52光年先にワープアウトした。

 前方に赤色矮星。太陽より小型で低温(表面温度3000℃程度)の恒星だ。銀河の恒星では赤色矮星の方が多いと考えられている。

 その第1惑星バラバは水星のように自転と公転が同じため、昼はずっと昼で高温、夜はずっと夜で低温だ。昼と夜の境界地帯=トワイライトゾーンにはドームに包まれた街が造られている。昔のモーテルかドライブインのような食事や宿泊できる施設があり、ドーム内の空気は地球と類似しており宇宙服不要だ。

 <フロンティア号>はステルスバリアーを張り、映像を投影して貨物船に化ける。

 バラバ星に着陸し、グレイ・ヨキ・ピンニョが“上陸“。食料調達と情報収集が目的だ。


 デコラスの大銀河帝国は地球人250億人をテレビ等の放送電波を使って集団催眠にかけ、特殊ESP波(人工テレパシー)で操っている。十字星雲の事件後入院した明は集団催眠の影響を受けていた。啓作は明の身体を調べたが、<フロンティア号>の設備では十分な成果を出すことは出来なかった。明は言わば時限爆弾を抱えていると考えられ、船の対ESPシールドと対ESP装備で防御していても、いつ操られるかわからない状態と言えた。ボッケンとヨキも入院していたが、テレビ視聴の差なのか、ふたりに催眠の兆候は見られていない。(あくまで噂だがアダルト系の放送に集団催眠電波が多いとか)

「よく食べてよく寝る。おれを見習え」

「殴るぞマーチン」

「いや疲労とストレスは敵だ。操られるリスクが増す」

「ほれ見ろ」 「この逃亡生活じゃ無理だよ」

「深く考えるな。お前らしくない。いつもどおりでいい」

「・・それ褒めてるの?」

 医務室の外で麗子が美理の背中をたたく。「ほら、渡しといで」

「あの・・明くん・・これ・・」

 美理は明にある物を渡す。

「御守り?」

「対ESP装備が入ってるの」お手製だ。

「ありがとう」


 バラバ星はサジタリウス腕の大国ゲルクの領地。大銀河帝国の侵略を受けたゾーガ連盟の隣国だが、戦火はおよんでいない。ゲルク人は身長1mほどの灰色のヒューマノイド、手足が細長く頭がでかい、昔グレイと呼ばれた宇宙人と酷似している。

 メガネと付け髭で変装したグレイは酒場でゲルク人の情報屋と会っていた。我々が他の動物の顔をあまり識別できないように、多くの宇宙人にとって地球人の顔は区別がつかない。ホログラフィで化けるより変装の方がバレにくい。

「銀河連合は大銀河帝国による反乱を“第53次銀河大戦”と命名した」

「第53・・」銀河連合の設立は約5000年前だ。

「お偉いさん達は地球連邦を(銀河連合に)加盟させたのは間違いだったと言っている。近いうちに侵略されたゾーガ連盟に援軍を送ることになるだろう」

「いつだ?銀河連合はいつ動く?」グレイが尋ねる。

 ゲルク人は手の平を上に向け「それは別料金」

「・・その情報は当面不要、ゾーガとゲルクの艦隊配備だけで十分だ。サンキュー」

 グレイは平静を装っているが、実はあまり金がない。仲間全員が預金を全て奪われ、手持ちしかない。貧乏なのだ。

 買い物担当のヨキとピンニョがいるのは市場の露店。見た事もない食材が並ぶ。

「食えるのか?これ。・・えーと、もーちょっとまからんか?」

「これでいっぱいいっぱいよ。いやならほかをあたるね」タコ型異星人の商人が答える。

「(足もと見やがって)・・じゃ、そうする」

 ヨキは立ち去ろうとする。

「あーちょっとまつまつよ。えーと・・」

 ニヤリとするヨキ。ふと飾ってあるサングラスが目に留まる。

「これ何ですか?」

「それは“なんでもすけてみえるまほうのめがね”ね」

「買うた!」

 買い物を終えたヨキはグレイと合流し、反重力カートを引きながら市場を出る。

 その後を数人のゲルク人が続く。グレイの会った情報屋ではないが、見た目は一緒。

 ヨキの肩にとまるピンニョがくちばしで肩をつつく。つけられているという合図。

 三人は角を曲がる。

 ゲルク人が小走りで角を曲がる。

「!」

 そこにヨキたちの姿はもう無かった。テレポートで<フロンティア号>へ。


「何だこれ?」“魔法のメガネ“をかけて明が尋ねる。

「聞かないでくれ~」ヨキは落ち込んでいる。

 マーチンが笑いながら「スイッチ押すなよ。X線が出る」透け過ぎて骨しか見えない。

「せっかく値切ったのにね」ピンニョが傷口に塩。

「ウィルスチェックよし」ピッ。「ゾーガとゲルクの軍データ入力・・完了」

 メインパネルの星図に両軍の基地と艦隊配備が表示される。それらを回避してサジタリウス腕を抜けるルートをコンピューターが導き出す。

「よし、発進!」

 貨物船が離陸する。高度を上げ、バラバ星を後にする。

 星の陰で姿が<フロンティア号>に変わる。速度を上げ、どんどん星から遠ざかる。

 それを数隻の宇宙船が追う。

「つけられている」シャーロットが警告する。

「分かっている。ファンかな?」明がふざける。

「だといいけど」

 宇宙船が発砲。

「熱烈なファンだな」

 <フロンティア号>は後方へ弾幕を張る。

 爆発の隙間を突いて蜂のような形の小型宇宙船が接近する。4機。

「ホーミングレーザー!」マーチンがボタンを押す。

 両側舷から光の束が発射される。

 敵の宇宙船は回避行動をとる。

 それをビームが追う。

 2機に命中。爆発。 

 残り2機は回避。上と下から再接近する。

「10時方向に木星型惑星系がある。逃げ込むか?」

「いや、小回りは相手の方が上だ。ワープで振り切った方がいい」

 明は操縦桿を引く。

 上へ。敵機が迫る。

 すれ違いざまに1機を撃破。

 あと1機。追尾して来る。

「まって!重力震!複数よ!」

「!」前方の空間が歪む。左右、後方も。

 バウンティハンターが次から次へとワープアウトして来る。

「人気者はつらいな」

「プロトン砲発射!」

 進行方向へ二つの光の束が走る。

 数隻の宇宙船を貫く。 爆発。

 <フロンティア号>はその光の環を突っ切って飛ぶ。

「ワープ行ける!」プログラミングを終えたシャーロットが言う。

「ワープ!」

 その後を数隻の宇宙船がワープで追う。

 連続ワープとデコイミサイルで追手を撒く。


 カチャカチャ。食洗器の調子が悪いので、美理と麗子は食堂で皿洗い中。

 麗子の手が止まる。「・・・・」 

 美理が心配そうに見る。

 麗子は目を合わせて「わかってる。生きる・・生き残るためには、戦うしか戦って相手を倒すしかないって・・」 

「・・・」

 明たちはこれまで一度も彼女たちに攻撃をさせていない。直接手を汚させない、せめてもの心遣いなのだろう。それは分かっている。

「でも・・ほんの数日前は学校にいたのよ。私達」 

 その時、強い衝撃が船を襲う。

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