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星の墓標①

第4章  星の墓標


 銀河系外縁を進む<フロンティア号>。敵の攻撃に備え、銀河を上に見る“背面飛行”をしている。

 麗子がサブコクピットに来る。

 見上げると、全天を占める天の川銀河が広がる。

「・・・」麗子は祈りを捧げる。

 先にここにいたピンニョはそ~っと出て行こうとする。

 そこへ啓作から通信。『ピンニョ、マニュアルあったよ。悪い』 

「へへへ」見つかったピンニョは苦笑する。

 ふたりで星見。

「家族の無事を願っていたの」毎日来ているらしい。 

「これだけ星があるんだもの。きっと叶えてくれるよ」

 銀河系(天の川銀河)は直径約10万光年の棒渦巻型銀河である。恒星の数は約2000億、中心部バルジ円盤部ディスク周辺部ハローから成る。太陽は円盤部、銀河中心から約2万6千光年離れた所にあり、約2億5000万年かけて銀河を一周している。円盤部には恒星や星雲が渦巻状に集中した場所があり、渦状腕と呼ばれる。太陽系のあるオリオン腕の内側にサジタリウス腕(いて・りゅうこつ腕)外側にペルセウス腕がある。後二者を大陸とするとオリオン腕は島にすぎない。(ペルセウス腕と後述のたて・ケンタウルス腕は特に大きい。これら腕の名称は地球から見た星座から来ている=もちろん他の星系では別の名称になる)

 銀河系に存在する多種にわたる知的生命体による複合国家集団が<銀河連合>である。明たちの現在の目的地はその首都・惑星ロトス=リカだ。約5万2千光年先、銀河中心をはさんでちょうど地球の反対側(たて・ケンタウルス腕内)にある。


 ピンニョと麗子がコクピットに来る。

 最後列ソファの美理が尋ねる。「どこ行ってたの?」

「ひ・み・つ」麗子は隣に座る。「あ、今日はピンク(のカチューシャ)」

「これ“すばるステーション“でグレイさんに買ってもらったの」

「なにぃ」このマメさが明には無いモテる要因だ。

 ピンニョは麗子の肩に乗ったまま。カチューシャの取説を読む。

「“彼がエスパーでも貴方の想いを守ります”だって」要は対ESP装備だ。

「何?勉強?・・操縦マニュアル?」麗子が美理に尋ねる。

「ううん、メインレーダーの取説。操縦は諦めた(笑)。レーダーか通信を手伝おうと思って。メインレーダーは触ったことないから・・」

「いいね。それ。じゃあ私はワープロ(ワーププログラミング)だ」

 メインパネルにサジタリウス腕にある隣国ゾーガ連合のテレビ放送が映る。

 はっと顔を上げて美理たちは画面を見る。他のメンバーはすでに食い入るように見つめている。

『<地球連邦>改め<大銀河帝国>が我がゾーガ連合への侵攻を開始しました。惑星ヤッハル、ナハナハ、アーインが既に降伏し・・』自動翻訳されている。

「はじめやがった」マーチンがぽつりと言う。

「宣戦布告と同時にワープミサイルによる奇襲。間髪入れず50カ所ほどから一気にゾーガへ侵攻している。デコラス軍の損失は皆無に等しい。圧勝だ」

「それ褒めてるの?」

「すまん」啓作が謝る。

「だが事実だ」グレイが助ける。「卑怯だが効率のいい作戦だ」

自分デコラスは安全圏にいて、将棋かチェスのつもりか」

 そう言う明の後ろ姿を美理は見つめる。「・・・(明くん怒ってる)」

 パネルを見つめる彼らの表情は険しい。

『このような暴挙侵略行為に対しゾーガ大統領は・・』プツン。

 テレビが切られ、映像が銀河系図に変わる。啓作が後ろを向いて話し始める。

「これからの針路についてみんなの意見を聞きたい。銀河連合の首都までのルートは次の4通りだ」

①円盤部を回るルート左回り・・一般的だが今は戦闘に巻き込まれる確率が高い。

②同 右周り・・・・・・・・・戦闘の確率は①より低いが、前人未踏のエリアあり。

③核恒星系を突っ切るルート・・最短だが巨大ブラックホールがあり危険。論外。

④外郭を迂回するルート・・・・戦闘の確率は低いが、遠回り。前人未踏のエリアあり。

「④で行くつもりで、銀河平面から垂直方向に約7000光年ワープして、俺たちの現在位置はここだ」

 星図に赤い点が示される。「このまま④のコースで行こうと思う」

「異議なし」 「いいんじゃね」 反対意見は無い。

「銀河中心から伸びるジェットは避ける必要がある」

「あったり前だ。あの中に飛び込んで帰ってきた船はいない」

 銀河系中心には太陽の400万倍の質量の巨大ブラックホールが存在する。

「今度のワープ後は3班交代制にする」

 チーン。

「エンジン冷却完了」もっといい音にできないのか?

「ワープのお時間だ。シートベルト着用」

 ピンニョがあわてて籠(専用席)に入る。美理たちはシートベルトを締める。

「ワープ!」

 <フロンティア号>は約500光年先へ向けワープした。


「おはようございます。皇帝陛下」

 金髪の美女がデコラスを迎える。

 ローザ=スタンレー。元地球連邦主席秘書。

 実はテロ組織<神の声>のメンバーであり逮捕されたが、今や他の地球人と同じくデコラスのしもべである。有能なことに変わりなく、秘書に返り咲き。

 デコラスは玉座に腰を下ろす。両脇に玄武とドクタージェラードが立つ。

「本日のご予定ですが・・」

「ローザ、まずは銀河侵攻の報告を聞こう。」

「かしこまりました。49カ所よりサジタリウス腕へ進出したわが大銀河帝国軍は、86の星系を制圧。わが軍の損耗はほとんどなく、更なる進出を行っております」

「民は?民は休めているのか?」

「やさしいお言葉。もちろんです。交代で休息をとり、傷ついたものは後方に下がらせております。みな皇帝陛下のために全力で戦っております」

 デコラスは黙ってうなずく。「(生かさず殺さずか)」

「見つけました」ドクタージェラードがぽつりと言う。

「ワープアウトの際に生じる重力震にはその宇宙船特有の波動があります。全艦隊がキャッチした重力震から<フロンティア号>の波動を検出しました」

「艦隊の近くにワープアウトしたから偶然探知できたわけか。」デコラスがつぶやく。

「ワープトレーサーとは違うのか?」玄武が尋ねる。

「ワープトレーサーはワープインのエネルギー・方位・速度等よりワープアウトポイントを予測するものです」

「で奴らの現在位置は?」

「はっ陛下、こちらを」

 全天スクリーンが投影される。

「原始恒星系?」

「やはり辺境に逃れたか。」デコラスがつぶやく。「まて。何だ?これは。」

「救難信号のようです。我々のものではありません」

「ふ・・奴らがこれを放っておくはずがない。」

「最も近い白虎の第66艦隊を向かわせます」ジェラードが言い終わる前に、

 玄武はひざまずき、「皇帝陛下。この任務、私に任せていただけないでしょうか?」

 デコラスに睨まれ、玄武は一瞬ひやっとなる。

「お前には太陽系防衛の任があろう。」

 四天王の白虎と青龍はサジタリウス腕へ侵攻、朱雀はペルセウス腕方面の防御に備えている。

「ふふ、退屈か?」

「いえ、決してそのような・・」 

「例の部隊はどうなっている?」デコラスがジェラードに尋ねる。

「すでに前線に投入しております。第66艦隊にも2機配備されております。最後の一人の調整が先程完了しました」

「玄武。“彼“を第66艦隊へ運べ。そのまま指揮を執っても構わん。」

「はっ!ありがとうございます」

 ワープブースターを装着した玄武の戦艦が発進して行く。

 それを見送ったジェラードはつぶやく。

「しかし分からん。なぜ皇帝陛下はあの連中にここまでこだわるのか?」


「周囲に敵の反応なし」ボッケンに続き、

「前方の星系より救難信号をキャッチしました」ピンニョが報告。

 メインパネルに巨大な赤黒い渦が映し出される。

「ナカトミ星系。地球の財団所有の原始恒星系。“私有地”よ。第2原始惑星に観測施設がある」

「早く地球連邦の勢力圏から出たい所だが、どうする?」グレイが明に尋ねる。

「行かねばなるまい。針路変更。・・地球の救難信号で間違いないのか?」 

「はい」

「罠?」

「可能性はあるな」

 <フロンティア号>は針路をナカトミ星系へ向ける。 

 原始恒星系は生まれたばかりの恒星系(太陽系)のこと。宇宙空間に漂うガスと塵(分子雲)が自らの重力で集まり収縮・回転し恒星(原始星・原始恒星)が生まれる。集まった星間物質はその周りを公転し、塵は合体を繰り返し微惑星となる。微惑星同士が衝突・合体を繰り返し原始惑星となり、恒星系ができる。

 濃密な星間物質が回転する星域。例えるなら小惑星帯と宇宙気流が合わさった様な空間だ。

「暗いなあ」

「おかしい」ボッケンが首をかしげる。「星図と位置が合わない・・それだけじゃない・・恒星が、太陽が無い!」 


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