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銀河はるかに③

 ナルシーを覆っていたバリアーが消失する。

「あれ?バリアーが・・どうしたんだろ?」シャーロットが気付くが、

「アクセスするな!<ガイア>にハッキングされたのかもしれない」啓作に止められる。

 ハイパーコンピューター<ガイア>の能力は計り知れない。シャーロットが凄腕のハッカーでもおそらく太刀打ちできない。

「来るぞ。<フロンティア号>のバリアー出力上げろ!」

 だが攻撃は来ない。

 ルリウス側の地表に敵艦10隻が無線アンカーを打ち込む。

 ナルシーの反対側に20隻が艦首を接舷。

 その途端バリアー復活。これらの艦隊はバリアーの中に。

「何をする気だ?」

「発進中止。様子を見る。最終チェック急げ!」

 30隻の艦が一斉にエンジンを噴射する。

「!」

 ゆっくりとナルシーが動き出す。

「動いてる?」 「ルリウスに向かっています」

「やつらこの星をルリウスに落とす気だ!」

「あと3分で“ロシュ限界“を越えます」

 ロシュ限界とは惑星や衛星が主星に近づける限界の距離のこと。その内側では主星の潮汐力により破壊されてしまう(この場合ルリウス星が主星)。ナルシーは火星の衛星フォボスの様にもともと低い軌道を周っていた。

「だめです。シャッターが開きません。それに出口を巡洋艦が塞いでいる」

「プロトン砲発射用意!発射と同時にバリアーを張り発進する!」

「エンジンいつでもいけるぜ」

「アンテナバリアー問題なし」

「プロトン砲出力100%、安全装置解除」

 ナルシーはロシュ限界を超えた。・・だがナルシーは砕けない。

「バリアーのせいだ・・このままではルリウスに落ちる」

 ナルシーの長径は約15km。約6500万年前に地球に落ちて恐竜絶滅の原因になったとされる隕石とほぼ同じ大きさだ。質量や落下速度等の差でそれ程の威力はない予測だが、ルリウスに被害が出るのは間違いない。ルリウス星の人口は約3000万人。“行進”に参加できずに星に残っているのは病人や高齢者約10万人と推定される。地球人の他に彼らのペットや原住生物(水棲生物が多い)がいる。

 美理と麗子は顔色が悪い。故郷の危機に震えが止まらない。

「発進後、反重力ミサイルを使う!発射準備!」

 反重力ミサイルなら落下を防げるかもしれない。明の言葉は美理たちの希望の光となる。

「プロトン砲発射!」

 明の号令でグレイが発射ボタンを押す。

 ボヴゥゥーン。<フロンティア号>の上部にある砲塔から二門の光が放たれる。

「バリアー最大出力!」 「<フロンティア号>発進!」

 ドギャアーンン。4つのエンジンが一気に炎をあげる。船体に激しいGがかかる。

 プロトン砲のビームはシャッターを粉砕、出口を塞いでいた巡洋艦を吹き飛ばし、星を覆うバリアーをも突き破る。

 続いてその“穴”よりバリアーで守られた<フロンティア号>が飛び出す。

 待ち構えていた残り20隻の艦隊が一斉に攻撃を開始する。

 砲火を掻い潜り<フロンティア号>は方向転換をする。下部ハッチが開く。

「反重力ミサイル発射!」マーチンがスイッチを押す。

 ミサイルはナルシーの下へ・・・大爆発を起こす。

 <フロンティア号>はそのまま通過。

 美理と麗子は食い入るようにナルシーの映るメインモニターを見つめる。

「神の声の<コア=エデン>の方が大きかった。大丈夫よ、きっと」

 ワーププログラミングをしながらシャーロットが励ます。(第3巻参照)

 反重力ミサイルは重力下で使うと、重力を反重力に約60秒間変える。

 ナルシーは落下を止め、上昇を始める。

 沸き立つコクピット。

「よし。ずらかるぞ!」

 朱雀は黙ってその光景を見ていたが、反重力爆発の光が消えると、命令する。

「甘いな。押し返せ」

 再び30隻の艦がナルシーを動かす。

 星はゆっくりと落下に転じる。

 再落下に気付いた美理と麗子は声を失う。

「もう一度だ。反重力ミサイルはあと2発ある」

「明、何度やっても同じだ」啓作が諭すように言う。「破壊するしかない」

 明は無言で操縦する。敵の攻撃を避ける。

 啓作が言葉を続ける。「プロトン砲とチャージ弾の同時攻撃ならナルシーを壊すことができるかもしれない」

 ナルシー内にはまだ巡洋艦の乗組員300人がいる。破壊したら彼らは死ぬ。だがナルシーが落下しても彼らが死ぬことに変わりはない。どうするべきか答えは決まっている。

「・・・」それでも明は悩む。

「くそっ!全砲門発射用意!」苦渋の決断をする。

 <フロンティア号>はUターン。砲火の来るナルシーへ。

「何としてでも奴を落とせ!」朱雀が叫ぶ。

 チャージ弾を撃つためには約1分間アンテナバリアーを止めなければならない。ヨキはまだESPを使える状態にない。無防備のまましのぐしかない。

「エネルギーチャージ開始」

 <フロンティア号>はナルシーの周りを飛ぶ。

 ビームが次々と追尾してくる。ホーミングレーザーで弾幕をはる。

 旗艦と戦艦3隻が主砲を発射。巡洋艦と比べものにならないパワーだ。

 避ける。 ビリビリビリ・・計器が一瞬狂う。

「チャージ完了!」

 明は操縦桿を倒し、船首をナルシーへ向ける。

「撃て!」

 グレイと啓作がスイッチを押す。

 ドヴォオオオーーーンン プロトン砲とチャージ弾が放たれる。

 二つの光はナルシーへ・・・

「させるか!」

 朱雀の命令をうけ、旗艦が主砲(ブラスターを発射する。

 命中ぶつかりはしないが、かする。

 <フロンティア号>の攻撃はバリアーを貫通。ナルシーに命中。 

 爆発! だが星を粉砕することはできなかった。

「だめだ。弱い」敵旗艦の主砲によりパワーが弱められた。

「もう一度だ」

 再度Uターン。

 いくら明が天才パイロットでもこれまで被弾しなかったのは奇跡だ。普通奇跡はそう何度も起きない。

 巡洋艦の砲撃。そのビームを避ける。

 駆逐艦のミサイルをレーザーで防御。

 さらに砲撃が来る。

 避ける・・その先に旗艦。主砲が火を噴く。

「!」

 狙いすましたブラスターが来る!

 

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