銀河はるかに②
「オーライオーライ」
巨大クレーンで吊るされたプロトン砲がゆっくりと降ろされる。
クレーンを操作するのはマーチン、<フロンティア号>の甲板で合図するのは作業用パワードスーツを着た啓作だ。作業がはかどるようにドック内は0.2Gの低重力になっている。砲台を固定するビスが自動で締まる。
「テストは後まわしだな」啓作がぼそっと言う。
「啓作!」
名前を呼ばれ振り向く。明とヨキが息を切らして立っていた。
「おう、すまん。気付かなかった。無事・・!」
明の手の中には傷ついたピンニョがいた。意識がない。
明が泣きそうな声で「たのむ」
啓作はパワードスーツを脱ぐ。ピンニョを抱えてヨキと共に医務室へテレポート。
それを見送り、明はパワードスーツを纏う。「交代した。次は?」
医務室では麗子が待っていた。既に手術着に着替えている。
「よろしくお願いします」前回十字星雲でオペ経験済みだ。
ピンニョを手術台に置く。医療コンピューター“J”による解析と共にガスによる消毒が始まる。その間に啓作は手術着に着替え、腕の自動消毒をする。
「大丈夫か?ルリウスでいろいろあったんだろ?」麗子に尋ねる。
「はい。でも私が就くのがベストだと判断しました。それに何かをしていた方が気がまぎれます。手伝わせてください」
医務室の入り口で座り込んでいたヨキをボッケンがつんつんする。
「超能力(ESP)が使えるうちに手伝って」
ふたりは船外へテレポート。
倒れている大銀河帝国軍兵士達を指してボッケンが言う。
「もうすぐ目が覚めると思う。巡洋艦へ閉じ込めちゃおう」
ボッケンはそう言うと数人を背に乗せ運び始める。彼らが居たら発進の邪魔だ。
「何人いるんだよ」
しぶしぶヨキは兵士数十人をサイコキネシスで移動させる。低重力で助かる。でもESPを使えるのはあと一分もない。(念動力は瞬間移動より手間がかかるが、一気に複数運べるし疲労は少ない。ちなみにWC-001に乗っている間にESPはいったん回復していた)
明はプロトン砲の周りを回って点検する。大きくOKのサイン。
マーチンはクレーンで翼にブースターを取り付ける。これも後で明が点検する手はずだ。
そのころ美理はまだWC-001の駐機に苦戦していた(他の者は先に降りた)。
翼を折りたたんで後部傾斜路をバックで上る。もちろん無免許だ。
ゴツン。「あ~!ごめんなさ~い。ぶつけたー」
ようやく第二格納庫に機体を停めた。
隣の第一格納庫では、グレイが作業中。
「反重力ミサイルの詰め込み完了。通常ミサイルの補充はもうちょいかかる」
ルリウス星から上昇して来たシャトルは旗艦の大型戦艦に収容される。
その艦橋にガルーダを肩に乗せた朱雀が現れる。
朱雀は艦長席に座る。長い脚を組む。
「さて、逃げ込まれたのか?追い詰めたのか?・・全艦戦闘準備!」
50隻の艦隊がナルシーに狙いを定める。
「全艦総攻撃開始せよ!」
艦隊からビーム・ミサイルが一斉に発射。ナルシーへ・・・
ズズーン。 星全体を揺るがす震動が来る。
「来たか」明がつぶやく。
ブースターの点検を済ませた明が大きくOKのサイン。
それを見たマーチンはクレーンから飛び出し、<フロンティア号>へ走る。
明はパワードスーツを脱ぎ捨て、プロトン砲のハッチを開けて船内に入る。
作業を終えたグレイも第一格納庫を閉じる。
ボッケンとその背に乗ったヨキ(ESPを使い疲れている)が後部傾斜路から中へ。
さらに大きな震動が来る。
コクピットに飛び込んだ明はシャーロットに状況を聞く。
「ナルシーを取り囲んで一斉に攻撃してきているわ。バリアーが破られるのは時間の問題ね」
明は主操縦席に座り、「発進準備!」
美理は隣の副操縦席で計器のチェック中。
「よくわからないけど異常サインはありません」ちょっといいかげん。
シャーロットがメインパネルに“外”の様子を映す。
砲撃を繰り返す艦隊が映る。およそ50隻。
「針路オールレッド。どうする?」
パネルを見つめる明はどうするか決めかねていた。戦闘は避けたい。だがそれは無理なようだ。
コクピットに啓作と麗子が現れる。
「え?手術は?」
「肋骨が数本折れて肺に刺さっていた。だがもう自己修復されつつある。手術は不要だ」
「ほえ?」
「フェニックスプログラムって奴のお蔭だ」ピンニョはDNA他が改造された実験体だ。
「よかった」
美理は胸をなでおろす。現れたマーチンに席を譲り、麗子と最後列ソファへ。
ボッケン、ヨキ、グレイもコクピットに来る。ESPで疲れているヨキは美理たちの隣に、あとはそれぞれの席に着く。グレイが副戦闘席だ。
「よし、行こう!」
「朱雀様。皇帝閣下より通信が入っております」部下の言葉に、
「スクリーンに映せ」朱雀は答える。
艦隊旗艦艦橋。そのメインスクリーンにデコラスが映る。朱雀はひざまずく。
『連中はどうなった?』デコラスが尋ねる。
「はっ。一度取り逃がしましたが、衛星ナルシーに追い詰めました」
朱雀の返答に、デコラスはしばらくデータを見ていたが、こちらを向いて一言。
『ナルシーごとルリウスに落とせ。』




