表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/29

銀河はるかに①

第3章   銀河はるかに


 見えない“箱”に閉じ込められた麗子は、傷ついたピンニョを手に包んだまま、美理の後ろ姿を見つめる。

 美理は竹刀を中段に構え、朱雀と対峙している。

「手を出すな」

 部下にそう言うと、朱雀は二本のビームダガーを抜き両手で構える。

 肩にとまっていた青い小鳥は空に飛び立つ。

 美理は意外と落ち着いている自分に驚いた。

 いま戦えるのは自分しかいない。その責任感と開き直りが彼女を強くした。

 相手は何とか四天王と言った。相当強いはず。こちらは殺傷力のない竹刀、勝っているのはリーチだけ。

「ふう」美理は呼吸を整える。「はあっ!」狙うは一点のみ。

 朱雀はじりっじりっっと間合いを詰めて来る。

 美理はゆっくりと後ろにさがるが、あと数歩で麗子たちの捕らわれている“バリアー”だ。リーチを生かすには打って出るしかない。

 ザッ。地面を蹴る。

「小手え!」叫ぶ。

 朱雀の右腕を狙う・と思わせて、そのまま突き!

 満身の力をこめた一撃は朱雀の喉に決まる。不意をつかれた朱雀が宙に舞う。

 ドスン。地面に落ちる。

 部下の黒服達は啞然としている。

「気をつけて・・本体はそいつじゃ・ない」麗子の手の中でピンニョが言う。

「え?」

 上空から青い物体が急降下。

 スカートがまくれる。風が通り過ぎたあと、美理の持つ竹刀が真っ二つに斬れる。

「!!」

 青い小鳥が電燈の上にとまっている。

 ガルーダ。ピンニョと同じ改造された元実験動物だ。

「朱雀の本体はあの鳥、女は操り人形だ」ピンニョが説明する。

「娘を捕らえよ」

 ガルーダがそう命令したのと同時だった。彼のいた電燈が吹っ飛ぶ。遅れて銃声。

 次の瞬間、美理の目前に明がテレポートして来る。

「きゃっ」

 起きかけた朱雀(*)と衝突。明が押し倒す形になる。再び彼女は気を失う。明の手が胸を触っているのは偶然か?本能か?       

(*ガルーダが朱雀の本体だがややこしいので、操られている女性の方を朱雀と呼ぶ)

 黒服達をパラライザーで黙らせて、明は美理に駆け寄る。

「明くん!」

 ドン。胸に飛び込もうとした美理を明は突き飛ばす。美理は“箱”に衝突。

 ガルーダが来る。

 明は銃を構えるが、諦めて体をひねり、避ける。

 羽手裏剣が明の脇を掠め地面に突き刺さる。ガルーダはふたりの傍を飛び去る。

 明は銃を構え直すが、追いつけない。

 明は朱雀から奪ったカードキーを操作する。ピッ。

 麗子とピンニョを閉じ込めていた“箱”が消える。喜ぶ少女たち。

 そこへヨキがテレポートしてくる。

「手を!手をつないで!」

 手をつなぐ四人と一羽。ヨキは触れたものしかテレポートできない。

 屋上の駐機場に停まっているWC-001の中にテレポート。

 エンジンをかける。

 ガシャーン。天窓を突き破り、ガルーダが向かって来る。

 緊急発進。WC-001は垂直に飛び上がった後、エンジン全力噴射。

 Gがかかる。迫り来るガルーダを引き離して、機体は上昇して行く。

「ふう・・みんな無事か?」

 操縦しながら明が尋ねる。

「なんとか」

 ピンニョが答える。傷が痛むのか顔をしかめる。

「はい」

 麗子も元気ない。家族が敵の手に落ちたからだ。

「大丈夫・・」そう答えた美理だが、

 瞳に前席に座る明が映る。ぽろぽろ・・その瞳から大粒の涙が溢れる。

 明に会えた。明が来てくれた。「わあん」泣きだす。

 つられて麗子も泣きだす。ふたりの涙は異なるものだったが、大合唱。

 WC-001は大気圏を突破。月へ向かう。


 移民星ルリウスには二つの月(衛星)がある。一つは球形の大きな<ナデシコ>。

 もう一つはより内側を周る小型の<ナルシー>。こちらは火星の衛星の様ないびつな形をしている。プロトン砲を預けた民間ドックは後者ナルシーにある。

 ナルシーは長径15km、三日月型とか勾玉型とか言われるが、実際は凹に近い。鉱物採掘工場が数多くあり、凹んだ部分に宇宙船ドックがある。

 明たちと別れた後、<フロンティア号>はステルス航行のままナルシーに近づく。

 ドックに巡洋艦が接舷している。その周りにおびただしい数の何かが転がっている。

「人間?・・パラドックスいや大銀河帝国軍の兵士達だ」啓作が言う。

 巡洋艦から白い物体が出て来る。ボッケンだ。

「あいつ、ひとりで巡洋艦を制圧したのか?」マーチンが驚く。

 ボッケンが走り出して<フロンティア号>を誘導する。こちらが見えているのか?

 <フロンティア号>はドックに入る。

 中でUターン。バックで駐機。

 先に工場に入ったボッケンが操作して入口にバリアーを張る。

 再会。

「何とか守ったよ」ボッケンが語る。「・・みんな丸腰だった」言い辛そう。

「何?」

「武器を持たずに爆弾を抱えて歩いて来た」

 集団催眠で操られたルリウス星の民間人だ。

 ボッケンの刀は有機物を斬れなくする事もできるが、宇宙服が切れたらまずいからと、今回使ったのは本当のみねうちだ。その数300人。気絶させた後、爆弾を破棄。艦橋に殴り込み、指揮官を倒した。催眠状態じゃない者は艦橋にいたほんの数人だった。

「こんな使い方をするのか!」グレイの声は怒りで震えている。

「ドックのおやっさんも出て行ってしまった」

「しめしめ預かり料金踏み倒せるかも」こらこらマーチン。

「みねうちしてでも(おやっさんを)止めるべきだった」ボッケンが悔やむ。

 クルーは作業に入る。

 マーチンと啓作はプロトン砲の取り付け。グレイは反重力ミサイルを含む武器の補充。シャーロットはコクピットで周囲の警戒。ボッケンは休ませた。


「明くん!」

 美理の声で明は眼を覚ます。居眠り注意のアラームも鳴っている。

「ね寝ていたのか?俺」

「徹夜レース明けだもんな」

 助手席のヨキにそう言われ、明は頬をパンパン叩いて前を見る。

 ナルシーへ向かうWC-001の行く手に大銀河帝国艦隊が立ち塞がる。

 ルリウス星から飛び立った宇宙船は既にいずこかへワープしていた。残っているのは約50隻。コバヤシ彗星の近くからナルシーに向かっていた。

 プシュー。美理と麗子にスプレーで簡易宇宙服コーティングを施す。

 短時間だがスペーススーツ並みの機能をもたせる事ができる。万一機体が傷ついても酸欠や宇宙線被曝を防げる。ボッケンは全身に明たちも顔など露出部に使っている。

「ジェットコースターは好きか?」明が尋ねる。

「は、はい。割と」

「大好きでしょ、麗子は」

「上等。敵を引き付ける。口を閉じて大人しくしていてくれ、舌を噛む」

 明はそう言うと操縦桿を動かす。Gがかかる。

 艦隊から光が来る。ブラスターだ。

 避けつつWC-001はルリウス星へUターン。

 艦隊の約半分25隻ほどが向かって来る。

「そうだ。追って来い」

 艦載機発進。敵影は7倍に増える。一斉に発砲。

 WC-001は速度を上げる。後方からの砲火をかいくぐる。

 大気圏突入寸前、明は進入角度をわざと浅くする。

 案の定、機体は大気圏で弾かれる。追跡してきた敵機の多くはそのまま大気圏へ。

 WC-001は大気圏ギリギリを飛ぶ。速度を上げ、敵を振り切る。

 そのまま星を一周。遠心力を利用し加速する。ナルシーへ。

 先程二手に分かれた敵艦隊より先に到着する。

「こちら明だ。バリアー解除してくれ」

 バリアー解除。その瞬間にWC-001はドックに進入する。

 バリアー展開。追撃機はバリアーに弾かれる。

 着陸。 

 WC-001は倒れている兵士達を避けて走行し<フロンティア号>に近づく。

 ボッケンが(休めと言われたのに)兵士達を敵艦に運んでいるが、まだ半分以上残っている。気付いて前足を上げて合図。明も親指を立てる。

 麗子は手の中のピンニョに話しかける。

「着いたよ。もう少しのガマン・・ピンニョちゃん?」

 ピンニョは答えなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ