大銀河帝国③
地球・首都ラ=ム―。地球連邦本部ビル。
司令本部はその最上階にある。
廊下の両脇に人々が立ち右手を上げている。その真ん中を一人の男が歩いて来る。
司令本部の壁のモニターには移民星の状況(移動する人々)が映し出されている。
傍らにボーっと立ち尽くしているのはマッケンジー主席だ。精気がない。
男はその前を横切り、「ご苦労。」と主席に声をかけ、ドカッと椅子に腰かける。
「いい椅子だ。・・レミング計画は順調のようだな。」
傍らに立つのはドクタージェラード。ヲタクぽい小太りの男だ。
「申し訳ありません。連中を取り逃がしました。今は土星宙域に隠れています」
「想定内だ。そうでないとつまらん。お楽しみはこれからだ。さて、挨拶をしておくか。」
土星の環の中に隠れている<フロンティア号>。
作業を終えマーチンたちがコクピットに戻って来る。
「よっしゃ。エンジン修理完了。ワープリミッターも解除した。あと必要なのは時間だけだ。しばらくしたら長距離ワープ出来るぞ」作業がうまくいってマーチンはごきげん。
「啓作は何の作業してたんだよ?」ヨキが尋ねる。
「あとで説明する」
「俺は知ってるけどな」マーチンは得意気。
「で、どうなんだ?シャーロット」
「他の星もおんなじ様な感じみたいよ。地球移民星全部」
「発進した宇宙船の行き先は?」水分補給しながら啓作が聞く。
「バラバラ。遠ざかっているとしか言えない」
その時、メインモニターが点く。強制介入通信だ。
「!」
モニターに映る人物を見て明が叫ぶ。
「デコラス!!」
ほかのメンバーも無言でモニターを見つめる。ヨキがごくりとつばを飲み込む。
星間犯罪結社<パラドックス>。かつて美理を誘拐し、パンゲア星の最終兵器を甦らせようとした。明たちの活躍で<ネオ=マルス>の本部は暴かれ、首領ら殆どが逮捕された。デコラスはその副首領、逮捕はされずパンゲア星で行方不明になっていた。
『久しぶりだな。聞こえているんだろ?スペースマンの諸君。』
返事をしなければこちらの位置を探知される事はない。
だが明はがまん出来なかった。マイクのスイッチを入れる。
「きさまの仕業だったのか」
デコラスは微笑み、『大銀河帝国皇帝に向かって、“きさま”だと?』
「大銀河・帝国?皇帝?」
「何ゆーとるねん?」ヨキがつっこむ。
グレイが「ハレーGPで俺に連絡してきたのはお前だったのか」
『今度は“お前”か・・まあいい。私ほど地球を愛している者はいないからな。』
「何をたくらんでいる?」明が尋ねる。
『わが大銀河帝国は銀河連邦に宣戦布告する。』
「!?」
『彼らは私の意のままに動く。人類は一つの意思の下にひとつとなった。これが人類の新しい進化だ。』
横でジェラードが左手を上げる。<フロンティア号>を探知した合図だ。デコラスが微笑む。
「操っているだけじゃねーか」マーチンがつっこむ。
「地球連邦艦隊接近!」
サブモニターに四方八方から近づく艦隊の姿が映る。
「この艦隊・・まさか」明がつぶやく。
「へ?」
『素人集団だが、死を恐れぬ忠実なしもべ達だ。お前たちに撃てるかな?』
通信が切れる。
「どゆこと?」ヨキは分かっていない。
「集団催眠で一般市民を戦闘員にしているのよ」
「・・・」
明の怒りは頂点に達している。手を握りしめ、消えたパネルを睨みつける。
艦隊旗艦艦橋。四天王の一人・玄武が叫ぶ。
「攻撃開始!」
旗艦を残し残りの12隻が突出。砲撃。無人戦闘機が先陣を切って向かって来る。
「エンジン始動!」
「<フロンティア号>発進!」
<フロンティア号>はステルスバリアーを解除、土星の環から出て、攻撃をかわす。
「ホーミングレーザー発射!」
光の矢が次々と放たれ、戦闘機を追尾、命中。爆発。
マーチンはターゲットスコープに敵艦を捕らえるが、「撃てねえよお」
逃げるしかない。
「土星に向かう!」
明の命令にグレイが「まてまて。正気か?あの中はガスの嵐だぞ」
「わかっている。時間をかせぐ」
ホーミングレーザーで弾幕を張りながら<フロンティア号>は土星に近づく。
土星の自転周期は約10.5時間。高速で自転しており、激しい気流は時速1800kmに達する。生じる雷のエネルギーは地球の1000倍。土星の成分は9割以上が水素、質量は水に浮くほど軽い。表面温度は-130℃前後だが、中心核はその圧力のため約1万℃と推定される。この圧力のため水素は中に行くにつれ気体・液体・液体金属と姿を変える。
「バリアー全開!」
船首から光の粒子が放出され船体を覆う。
「突入!」
<フロンティア号>は土星の雲の中に消える。
追って敵艦隊が土星大気圏に突入するが、すぐに離脱。
凄まじい気流のため大気圏内航行を断念する。高度を取り追跡を試みるが、
「<フロンティア号>ロスト!」探知不能。
離れた所で待機していた玄武は激怒する。
「バカ者!追撃しろ!」
ドオン! 雷が巡洋艦を直撃。小破。
「・・・」玄武も納得せざるを得ない。
<フロンティア号>は全エンジンを停止、再びステルスバリアーを張り、流れに任せて移動していた。時折姿勢制御ノズルを噴射し向きを変える。
明がぽつり「視界・・ほぼゼロってとこか」レーダーが頼りだ。
「この高度、深度って言うべき?・この深度ならレーダーが効くけど、液体層まで行ったら効かなくなるわ。敵は上空を移動中。今のところ追っては来ていない」
その艦隊の旗艦では玄武が叫ぶ「奴の現在位置を特定しろ!」
ピンガ―を打つが、ステルスバリアーの前では無効だ。
『玄武、手を貸そうか?』強制介入通信。
「ドクタージェラート」
『ジェラードだ。<ガイア>を使えば造作もない』
ジェラードは笑みを浮かべながら作業に入る。彼がいるのは元地球連邦司令部・ハイパーコンピューター室。
<フロンティア号>の性能、土星の状況、パイロットの特徴etc.数多くのデータを入力。ハイパーコンピューター<ガイア>は即座に答えを出す。データは玄武のもとへ。
「てえ!」
玄武の命令に答え、13隻の宇宙船から一斉に攻撃が開始される。




