高校一年12月23日:陽キャ美少女と親戚の美少女、校内で邂逅する①
今日はスマホにセットした目覚ましアラームの時刻より早く目が覚めた。
もう本日は用が無くなったアラームをオフにしていると、二宮さんからRINEメッセージが届いた。
『二宮サンタから一足先にクリスマスプレゼント! クローゼット開けてみて!』
『おおー。さすがサプライズ好きな二宮さんだ。いや、二宮サンタだね』
嬉しいサプライズに眠気も忘れて、俺はクローゼットを開ける。
すると制服ブレザー姿の二宮さんが隠れていて、俺に思い切り抱きついてきた。
「護衛対象者のヨッシー確保~っ!」
「うおっとぉ!? ……ご、護衛?」
まさかのご本人登場で驚いていると、今度は、昨日お隣の部屋に引っ越して来た親戚の加恋が、俺の部屋へと入ってきた。
「え、えーくんの彼女さんが居る! 幼なじみ特権『もういつまで寝てるの?』が封殺されちゃったし! えーくん宅を顔パスできるのは彼女さんもかーっ!」
「護衛は成功♪ 万が一の事態に備えて早めに来て、ヨッシーのお母さんに部屋へ通してもらって正解だったね~」
俺たちの高校の制服とは違うセーラー服に身を包んだ加恋は、二宮さんに抱きつかれている俺を見て、ブルーグレーの瞳に涙を溜める。
「私のパパなら『誰かと交際するのならば、ご学友たちには伏せなさい』みたいな頭の固いことしか言わないのに、えーくんの彼女さんズルいしー!」
「加恋ちゃんのお父さんも厳しいんだ~。私のところもそんな感じだよ?」
「それウソだし! 昨日だってえーくんとキスしようとしてたり、今だって仲良く抱きついちゃってるくらいじゃーん!」
腕を振り回すようなオーバーリアクション気味の動きで、俺と二宮さんを交互に指差して、自称負けヒロの加恋は涙目で抗議する。
二宮さんとは別ベクトルのハイテンションさだが、すらりと長い手足に白い肌、百六十センチ後半は優にある長身だ。
俺の学校でもモテそうなハーフ美少女だなと思いつつ、俺は加恋がセーラー服を着ていることに疑問を抱いた。
「ねえ加恋。その制服って多分前の高校のだよな? 三学期からヨロシクって昨日言ってたけど、今日はどこかに行く予定でもあるの?」
「超大事な予定あるぜー! 今日は転入試験だし! 面接もあるから緊張してて、マジヤバいかもしんない!」
「おお、今日が試験なのか。加恋なら大丈夫、何とかなるから緊張しないで」
「えへへ。昔のえーくんも『加恋は何とかなる』ってよく言ってたね。引っ越したばかりで復習もあまり出来なかったけど、今日は頑張っちゃおうかな!」
そう言うと加恋は、二宮さんに抱きつかれていて動きの取れない俺に近寄って、頬をぷにっと触ってきた。
「頬っぺたにキスの代わりー! 私はお先に、試験を受けに学校に行くぜー!」
「おう。転入試験ファイトな」
「えーくんに応援されたら、転入試験の面接だって何とかなる気がしてきたかも。彼女さんもまたね!」
慌ただしく登校していった加恋を見送った直後、二宮さんは、俺のベッドの上にダイブして足をパタパタさせる。
「むぅぅう~、やっぱり昔からの仲って羨ましすぎるのですが~!」
「そ、そんなに羨ましいの……?」
二宮さんがベッドにダイブした瞬間、制服のスカートからチラリと水色の下着が見えてしまい、俺は慌てて顔を逸らした。
「加恋ちゃんが同じ高校に来年通い始めたら、私たちの事を知ってる委員長以外、全員『ヨッシーと付き合ってるのは加恋ちゃん!』って認識になるのでは!?」
「どうだろう? 俺たちと同じクラスになったら、そうなる可能性もあるのかな」
「お父さんとの約束があるし『私が付き合ってます!』とは言えないぃ~!」
「あはは。加恋のお父さんも交際は公言禁止って方針みたいだし、加恋は校内だと落ち着いた感じで過ごす気がするけどね。昔は俺以上に人見知りだったから」
加恋の過去に軽く触れてから、二宮さんには一旦部屋から退出してもらって俺も制服に着替える。
その後リビングに二宮さんを招いて、家族と一緒に朝食を摂った。
登校前に歯磨きをする俺の隣で、携帯用のマイ歯ブラシを取り出した二宮さんを眺めながら「もう随分、我が家に溶け込んだなあ……」としみじみ感じる。
すると歯を磨こうとしていた二宮さんも、俺の顔を見つめ返してきて――。
「いつ嫁いでも問題ないかも~……なんて言ってみたり。ヨッシーはどう思う?」
――と、はにかみながら呟かれてしまった俺は、嬉しさやら恥ずかしさやらで、何も考えられなくなって、歯ブラシを咥えていて返事ができないフリをした。
そんなやり取りをした後、俺たちは加恋に遅れて、高校へと向かうのであった。
この続きは、明日の夕方~夜ごろに投稿予定となります。
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