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高校一年12月22日:陽キャ美少女と、自称負けヒロな金髪ハーフ美少女③

 再びキスの雰囲気を感じた俺は、慌てて背伸びで耐え凌ごうとした。


「なんでヨッシーが背伸びするんだ~! 私は背が低いから届かないぃ~!」

「おおっとぉ、俺の首に腕を回して引き寄せるとは! ちょっと待っ……あっ!」


 ガチャリという音が聞こえたので玄関に視線を移すと、俺と二宮さんが身を寄せ合う姿を加恋が食い入るように見ていて、赤面しながらも涙目になっていた。


「やっぱり諦められないし、今すぐ告るぜ! と思って来たのに、絶望的なまでに勝ち目ないじゃんかー!」


「来たね加恋ちゃん! 頬っぺたファーストキスは奪われちゃったけど、これからヨッシーの本当のファーストキスは、私が頂いちゃうので!」


「ひ、酷いしー! 負けヒロに鞭を打たないで欲しいんだけどー!」


 俺は身体に押しつけられている二宮さんの柔らかい胸の感触や、身長差で生じた自然な上目遣いに心臓を高鳴らせながら、二人に停戦を申し出た。


「二人とも近所迷惑になるといけないし、き……今日は一旦お開きにしないか?」


 バクバクと心臓の鼓動が鳴っているのを感じ、さらに頬が熱くなり始める。

 俺の様子を見た加恋は涙目のまま、捨て台詞を残して再び玄関から立ち去った。


「えーくんのバカ! 昔っから押しに弱いマン! 負けヒロは退散だぜーっ!」

「お……押しに弱いというのは確かだけど、親戚相手になんて言葉を……」


 玄関の扉が閉まったのを確認して、今度は忘れずに施錠する。

 俺と加恋のやり取りを静観していた二宮さんが、ちょっと膨れた顔で呟いた。


「昔から押しに弱いんだ? 良いな~。小さい頃のヨッシー知ってるの」

「少しだけ思い出したけど幼稚園の頃の頬にキスも、いつも加恋からされてたね」


「本当に押しに弱いマンなのですが! 私だってキスしたいのですけども!」

「お父さんに顔向けできる関係を続けよう」


「ぜ、全然、押しに弱くないマンなのですが~!」


 やはり不完全燃焼気味な二宮さんは、俺の胸にポカッと軽く拳をぶつけた。


 本音を言うと俺だって二宮さんとキスしたいのだが、『学校の人たちに交際中と公言しないこと』『公言したら別れなさい』と彼女のお父さんに言われた以上は、しばらく健全な交際を続けて誠意を見せないといけないはずだ。


 とはいえ甘えたがり屋な二宮さんに我慢ばかりさせるのは酷なので、お父さんの目を気にせずやり取りできるように、お互い鍵アカを用意してある。


 さながら家族に秘密の交換日記みたいで楽しいと、二宮さんには好評である。


「今日のところは二宮さんも帰りなよ。父さんと母さんが帰ってきたら、親戚だし加恋のところに、こちらからも挨拶しないといけないはずだから」


「むぅ~……。鍵アカでいつも以上に惚気(のろけ)ちゃいますが、それでも良ければ!」


 二宮さんは陽キャで何事にも積極的だが、恥ずかしがり屋でもあるので、リアルタイムにやり取りしづらい鍵アカも、俺たちはRINE並みに多用している。


 家族の誰にも聞かれないし見られない安心感からか、こちらが読んでいて恥ずかしくなるような惚気話を、何故か俺本人に鍵アカで呟くのが恒例となっていた。


「あはは。全然構わないよ。むしろ嬉しいくらいだ」

「言ったな~。仕方ないから今日は大人しく帰ってあげよう~」


「今日は二宮さんの家まで送ってあげられなくてゴメン。呟き待ってるよ」

「ふっふっふ。じゃあ最後に、お別れの挨拶~」


 二宮さんは名残惜しそうに、玄関先で俺にハグしてきた。

 もう何ヶ月も続いているスキンシップなので、俺も慣れた手つきで、彼女の頭を撫でて一身にハグを受け続ける。


 しかし外出中の両親が帰ってきたらしく、玄関の鍵を開ける音が聞こえてきた。


 二宮さんがギュッと抱きついたまま離れなかったので、そのまま俺はハグされている姿を、父さんたちに見られてしまう。


「……衛司。間違いだけは犯さないように気をつけるんだぞ」

「あらあら姫子ちゃん。今日も衛司と仲が良いのね。また遊びに来てね」


 父さんと母さんからそれぞれお言葉を頂戴した俺と二宮さんは、加恋が隣に引っ越してきたことを最後に伝えて、今日の家デートは終わった。


 この後、加恋の引っ越し作業が落ち着いた頃に、俺は両親と共に、挨拶に行ってみたのだが――。


「えーくんのパパママどうも! 私のパパは海外赴任が長引いて、ママはアメリカ行き、私は日本に残って一人暮らし決定、みたいな! てか2LDK広ーい!」


「加恋のお父さんも海外赴任中なんだね。そういえば加恋の転校先はどこ?」


「ここから一番近い公立校! ……だけど、あれれ? もしかしてえーくんと同じ高校かな? やったぜ! 三学期からヨロシクねー!」


 ――こんな感じで加恋は、失恋を感じさせないギャルっぽいノリだった。


 加恋が冬休み明けの三学期から、俺や二宮さんと同じ高校に通うのなら『学校の人たちに交際中と公言しない』という言いつけを破った事になるのだろうか?


 ふと浮かんだ疑問は、これから迎えるクリスマスへの期待感で忘れ去られた。


 だがこの時点で、今後起こる非常事態の予兆は、既に出現していた。

 加恋のお父さんもアメリカ勤務、二宮さんのお父さんも同様に海外赴任中――。


 サクッとネタバレすると、加恋経由で二宮さんのお父さんに「貴方の娘は恋人とあと一歩のところでキスする寸前でした」と後日伝わってしまうのだ――。


 当然言いつけを破る以上の騒ぎになるのだが、今日は平穏に一日が終了した。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

・本日の鍵アカ【宮姫@76danshi_UraakaJoshi】《吉衛@76_Kagiaka》呟き

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【加恋ちゃんが毎週キスしてたなら、私も毎週キスしても問題ないよね~】

《幼少期の頬にキスと、高一になってのキスとでは、話が違ってくる気がするぞ》

【確かに! 唇にキスと言わず、少しオトナなキスでも良いのかも?】

《そういう意味じゃなくて! あくまで、健全なお付き合いでお願いします!》

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

この続きは、明日の夕方~明後日のお昼頃に投稿予定となります。

甘えたがり屋な陽キャヒロインの話を、お楽しみ頂けましたら幸いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] お待ちしてました! が・・・ 何たる焦らしプレイ! イチャイチャしたい二宮さん。 縛りに縛られてる吉屋君。 加恋ちゃん登場でどうなりますか・・・ [気になる点] さてさて、これからどうなる…
[良い点] アフターが始まった! [一言] 二宮さんが恋人宣言できないことをいいことに 学校では加恋が猛アプローチかけるのだろうか? そうなると学校では加恋が恋人扱いになる可能性が?
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