表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/6

高校一年12月22日:陽キャ美少女と、自称負けヒロな金髪ハーフ美少女②

 外国人の女子の知り合いは居ないはずだが、どこか不思議と懐かしさを感じる。


「えっと……。前に俺と会ったことありますか? あっ、日本語通じるかな」


 俺に質問された少女は、小さく微笑んで自分のことを指差した。

 その笑みを見て、幼稚園の頃に交流があったハーフの子の姿が脳裏によぎる。


「えーくん、私のこと覚えてないのー? 小さい頃、一年間だけこの街に住んでた親戚の初乃(はつの)加恋(カレン)ちゃんを忘れるとか、えーくんったら薄情になっちゃったぜー」


「し、親戚? あ……ああっ! 毎週日曜、遊びに来てた加恋か!」


「おうおう、遠い親戚の加恋ちゃんだし! でも引っ越し先のお隣さんが、まさかえーくんなんてビックリなんだけど! えーくんもここに引っ越してたんだ!」


 下の名前の衛司(えいじ)からつけられた「えーくん」というあだ名で呼ばれて、ようやく加恋のことを思い出した。

 幼稚園に通ってた頃の加恋は、今より明るい金色の髪と鮮やかな蒼眼だった。


 当時の加恋は内気な性格だったが、今は何だか明るいノリや金髪なのも相まってギャルっぽくて、スクールカーストも高そうな雰囲気である。


「さすがに十二月下旬ともなると寒いー! えーくんのパパやママは居ないみたいだけど、リビングにお邪魔しちゃっても良い? ねー、良いでしょー?」


「加恋ごめん。実は部屋で彼女を待たせてるから、また今度でも良いかな」


 丁重にお断りの言葉を伝えて、俺はゆっくりと玄関のドアを閉めようとする。

 だが加恋は冗談だと思ったらしく、ドアに手を掛けて開けようとしてきた。


「またまたー! 幼馴染だった女の子が、金髪ハーフのこんな美少女に成長して、しかも胸だって高校一年にしてDカップで高身長という有望っぷりに、えーくんが照れちゃうのも分かるけどー!」


「いや……俺自身、未だに信じられない心境だけど、本当に彼女が出来たんだ」

「そ、そんなの嘘に違いないし!」


 まだ加恋は信じてくれなくて、強引にドアを開けて玄関に入る。

 ――と同時に、二宮さんの声が聞こえてきた。


「ヨッシー、引っ越しの挨拶はどう~? 助け舟は必要なさそうかな?」


 どうやら玄関の騒ぎを聞きつけて、二宮さんがやって来たようだ。

 対する加恋は二宮さんの姿を見た途端、その場でへたり込んでしまった。


「あぁーっ! 信じない信じない! せっかくえーくんと運命的な再会ができて、内緒にしていた初恋が再び始まると思ったのに、彼女が居るなんてー!」


 初恋というのは俺にとっても初耳なのだが、陽キャ美少女の二宮さんは持ち前のコミュ力で、一切面識のない加恋に話しかける。


「あの~。そこの可愛い外国人の女の子は、引っ越しの挨拶に来たんだよね?」


「外国人じゃなくてハーフなのでヨロシクー! ちなみに厚手のニット生地の服を着ているのに、彼女さん中々良い胸のラインしてるけど何カップ!?」


「Eですね~。本邦初公開の情報です。ぱちぱち~」

「む、胸のサイズでも負けたーっ! 私、負けヒロインだ! 負けヒローっ!」


 加恋は勢い良く立ち上がると、そのまま玄関を飛び出して、引っ越して来た隣の部屋に帰ってしまった。


 嵐のように去っていった加恋に面食らいつつも、俺は二宮さんに声を掛ける。


「隣に引っ越して来た子が、幼馴染だった遠い親戚の女子でビックリした。めちゃくちゃ明るい性格になってたなあ……」


「親戚の子なんだ? ヨッシーが初恋相手だって言ってたけど、引越し先が初恋の男子の隣なんて、恋愛マンガだったら運命の人フラグでは~!」


「そのフラグは二宮さんが期せずして、バキバキに折ってたから安心して」


 幼少だった頃の想いとはいえ、好意を向けられていたことは嬉しいのだが、俺は二宮さんのことが好きなので、加恋の気持ちには答えられそうにない。


 だが二宮さんは、付き合い始めてすぐに父親から『交際の公言禁止』と言われて不完全燃焼が続いているせいか、加恋のことが気になるようだった。


「そういえばヨッシーから『幼稚園の時、頬っぺたにキスされてた頃がある』って聞いたことあるけど、ま……まさか……!」

「うん、加恋のことだね。本人に会ったからか、ぼんやりと思い出してきた」


「だ、ダメ押しで運命の人フラグ乱立! 神様助けて~!!」

「キスの話は母さんからの又聞きだけどね。記憶も曖昧だし、恋心は無かったよ」


「ホントかな~! あんなに可愛い金髪ハーフ女子は卑怯だ~!」


 俺のフォローもむなしく、今度は二宮さんが廊下でへたり込んでしまった。

 心配しなくても大丈夫なのにと思ったが、嫉妬されるのは嬉しいかもしれない。


「キスの話を聞いた当時は『ピュアですね~』なんて呑気な返事をしたけど、頬にキスとか羨ましすぎなのですが! 私はキスの約束、放置されてるのに~!」


 あっ……。見事に話題がキスの約束へと戻ってしまった。

 頬を赤らめながらゆっくりと立った二宮さんは、廊下の壁に俺を追いつめる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ