第七十六話 ゴブラ村 ~ノルが救った街の件~
「ここだよ。アルス!」
ブーリは元気に言った。
「へえ。この村は大きいんだな」
氷で作られたカマクラのような建物があるのはギンヌンガガブと同じだ。
しかし、この村は所々に氷の塔が立っている。
「ここはゴブラ村。この世界で一番大きな村さ」
人通りも多くにぎわっている。
ブーリと街の中を進むと露店が出ている。
「いらっしゃい! いらっしゃい! 世にも珍しい青いフラーグラム入荷したよ!」
「どんな極寒の中でもあったかい防寒服はいかが!」
「マッサージだよ! 体の芯まで温まるホットマッサージ!」
露天商たちが活気よくお客さんを呼び込んでいる。
「おや。旅の人かい?」
恰幅のいいおばちゃんに声をかけられた。
「ええ」
「なら、うちの宿屋に泊まっていきな。旅人は無料さ」
「え?」
「他の階層から来たんだろ?」
「はい。こちらの一緒に居るブーリは違いますが」
「他の階層の旅人なら同伴者も無料にしたげるよ」
宿屋のおばちゃんがそう言うとブーリは嬉しそうにとびはねた。
「やったあ!」
「でも、なんで無料なんですか?」
いくらなんでも旅人は無料ってのはおかしい。
「そりゃあ。この村を救ってくれた旅人への恩返しのためさ」
「え?」
「この村を救ってくれた旅人がお礼は、今後来る旅人へって、言われたのさ」
宿屋のおばちゃんは嬉しそうに言った。
「その旅人はノルって言う名前じゃなかったですか?」
「う~ん。名前はわからないね。ちょうどアンタ達みたいに二人組みだったよ。片方はこの世界の住人でさ。あたしゃーその旅人を遠目にしか見てないんだよね」
どうやら旅人がこの村を救った時。
みながひと目見ようと旅人の居る広場に集まった所で、全員にこれから来る旅人を救うように演説したらしい。
「おや。そっちのおチビちゃん。もしかしてあの時の子じゃないかい?」
宿屋のおばちゃんはブーリを見て言った。
「え? ち、違いますよ!」
ブーリは驚いたように咄嗟に答えた。
「そうかい。遠目だったからね。あたしゃの勘違いかい」
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宿屋は氷の塔の中にあり、まるで高級ホテルのようだった。
ベッドが2つのスイートルームにブーリと泊まることになった。
ブーリは女の子だが、まだ幼そうだし俺の守備範囲外。
まあ、親戚の子と泊まる感じだし問題ないだろう。
なんだか久しぶりにこんな豪華な場所で寝るから目がさえる。
隣のベッドで寝るブーリは静かだ。
もう寝てるのかな?
「ねえ。アルス?」
「あ、ああ……。起きてたのか」
「あの……。実は……」
「どうした?」
ブーリは迷っているのか静寂が暫くつづいた。
「ご、ごめん。やっぱり、いいや」
ブーリの声が心なしか寂しく聞こえたので追求することが出来なかった。




