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第七十五話 出発の朝 ~ギンヌンガガプ村を襲う悪魔の件~

 朝起きるとあいかわらず外は薄暗かった。

 この世界は年中氷で閉ざされ一日中薄暗いのだ。

 時間の感覚がなくなってしまう。


 身支度を整え村を出ようとすると村長とブーリが村の出口まで見送ってくれた。


「ふむ。それでは気をつけてな」


 長老がフラーグラムをわたしてくれた。

 ブーリは、なんとなく暗い表情のままな気がする。


「じゃあな。ブーリ」

「ちょっと――」


 ブーリが何か言いかけた瞬間。

 空から何者かの攻撃の意志を感じた。

 音速に近い速度でこちらへ向かってきている。

 

「ふむ。あれはザガンの群れじゃ! 逃げろ!」


 巨大な牛にワシの翼がついた魔物がこちらへ向かってきている。

 全部で18体。

 

「ア、アルス! 逃げて!」


 ブーリが叫んだ。


「ふむ。一体でさえ村人総出で追い返せるか、どうかと言うのにそれが18体も……」


 ザガンは一斉に氷の矢を放ってきた。

 その数、300本にも及ぶ。

 そして氷の矢は、目の前10メートルほどの所で黄金の矢へと変化した。

 どうやら物質を変化させる能力を持っているようだ。


「なかなかやっかいな相手だな」


 俺がそうつぶやくとブーリは更に大きな声で叫んだ。


「逃げて!!!」


 ザガン一体のRPは800万ほど。

 たしかに相当手強い魔物だ。

 今までの俺にとってはだが。


 黄金の矢をすべて手刀で落としていく。

 その時間は、ゼロタイム。


「ほう。なんじゃ!?」

「え!?」


 長老とブーリが驚くのも無理は無い。

 目の前で一瞬にして黄金の屋が叩き落されたように見えただろうから。


 二人が驚きあわてる中。

 冷静にザガンに一体一体に拳を入れてゆく。

 一瞬にして破裂し絶命。

 黒い花火があがったかのように空中は染められた。


「あの魔物は何ですか?」


 長老に訪ねたが、返事がなく唖然としている。


「ほ、ほう! す、すまぬ! もしかして、お主がすべて倒したのか!?」

「はい」

「ほう。と、とんでも無い強さじゃの。しかし、あの魔物は残党じゃ。この世界に居た氷の魔女ヘルヘイムの使い魔」

「この世界に居た?」

「ほう。ほうじゃ。氷の魔女ヘルヘイムはお主より前に来た冒険者が討伐してくれたのじゃ。相当に強かったがな」


 ブーリが突然、声を挟んで来た。


「ヘルヘイムの手下の霜の魔神がまだ生き残っていて、こうやって村を襲うんだ。だからアルス頼むよ。霜の巨人を倒してくれよ。アタシも一緒に行くからさ!」

「一緒に来てくれるのは道案内してくれると助かるんだけど……」


 ブーリを守る自信はあるのだが、村から出していいものか判断がつかない。


「なあ。村長! いいだろ!」


 ブーリは村長にも懇願した。


「ほう。アルス殿が迷惑でなければ……」

「やったあ! アルスはもちろん良いよな?」


 ブーリが腕にしがみついてきて、上目遣いで強引にせまってきた。

 こいつ男の扱いをわかっていやがる。

 たいして無い胸を腕におしつけやがって。


 こんなの断れないじゃないか。


「ああ、わかった。村長も賛成なら」

「ほう。よかろう。アルス君の元でならワシも安心じゃ」


 こうしてブーリと一緒にこの世界を旅することになった。

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