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第七十四話 ギンヌンガガプ村の人々 ~ブーリの秘密の件~

 ブーリに連れられギンヌンガガブ村へと着いた。

 氷でつくられたカマクラのような建物が点々としている。


「小さい村で驚いたろ? 全員で108人しか居ない小さな村さ」


 ブーリは笑いながら言った。


「いや、驚いたよ。こんな極寒の地に村があるなんて」

「そうか、そうか。たしかにな」


 村の中央付近にある氷のカマクラに入ると、中はあったかく見た目よりも広かった。


「そこのテーブルに座ってまってて」

「あ、ああ……」


 ブーリは外に出ていってしまった。

 

 どうせ暇だしちょっと建物の中を見てみよう。

 奥の部屋は台所のようだが食材は何も見当たらない。


「そう言えばお腹すいたな。喉もかわいたし」


 この部屋には何もなさそうなので上の階を見てみる。

 一階は大きなホールにテーブルと椅子が並び食堂のようだった。

 二階にはベッドルームがあり、バスルームもある。

 ここはどうやらこの村の宿屋のようだ。

 こんな極寒の地なのに設備が整っている。

 関心していると入り口のドアが開く音がした。


「おーい! アルス、どこだ?」


 ブーリが戻ってきた。


「今、行くよ!」


 急いで下に降りるとブーリと老人が居た。


「こちらは?」

「この村の村長アウンズンブラ様」

「ふむ。ワシは村長のアウンズンブラである」


 ブーリと同じ白い肌に白い髪、青い瞳。

 まさに長老と言った感じの長いヒゲまで真っ白だ。


「はじめましてアルスと申します」


 相手が村長とか偉い人だと緊張してしまう。

 現実世界でのサラリーマンの悲しい性質だ。


「ふむ。そう固くならなくていいぞよ」


 村長はそう言うと赤い果物の入ったカゴをテーブルに出した。


「これは?」

「この村の名物フラーグラムである。食べてみなさい」


 手にとって見ると、まんまるで赤く美味しそうだ。

 大きな木苺みたいだ。

 口の中に入れると一気に果汁があふれだし甘くておいしい。

 甘いのに後味はすっきり、喉のかわきも潤った。


「う、うまあああい!」


 思わず叫んでしまった。


「ふむ。気に入ってもらって良かった。名物と言ってもこの村唯一の食べ物なのじゃがな」


 長老は笑っている。


「この村の人は、このフラーグラムだけを食べてるんだ。と言ってもフラーグラムしか育たないからってのもあるんだけどね」


 ブーリが得意げに説明してくれた。


「ふむ。アルス君、他の世界から来て大変じゃろう。この家を好きに使いなさい。食べ物はフラーグラムしか無いがの」


 長老は大きく笑いながら言った。


「けど、なんでみんな親切にしてくれるのですか?」

「ふむ。この村は元々閉鎖的でな。しかも、他の世界から来た者により搾取され人々は疑心暗鬼であった」


 長老からは笑みが消え静かに話しはじめた。


「しかし、数ヶ月前に来た世界の者がこの村を救ってくれたんじゃ」

「そうそう。そして、この村や他の村でも人助けをしてくれたんだよ」


 ブーリがうれしそうに言った。


「ふむ。そしてその救ってくれた方は、もし他の冒険者が来た時は助けて欲しいとそれだけ言い残して行ったんじゃ」


 どうやらこの世界で人々を救った者が居たようだ。

 数ヶ月前というと、ちょうどノルと別れた時だ。

 もしかして……。


「もしかして、それはノルという者じゃなかったですか?」

「ふむ。ワシは直接会ってないのでの。ブーリそうじゃったか?」

「い、いや。違うと思います」


 ブーリは少し焦って答えた。

 何かを隠している?


「そうですか。ノルと言うのは僕の仲間で離れ離れになってしまったんです」

「この世界にノルを探しに来たの?」


 ブーリが突然声を大きくして聞いてきた。


「ああ、そうだ。今晩はここに止めてもらって明日には探しに出ようと思う」


 ブーリの表情が、なんとなく暗く感じられる。

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