第六十八話 火竜の攻撃を防ごう ~アイラと再会した件~
火竜に乗ったアイラは週に1度、この城下街へと来るらしい。
そして、その日は明日とのことだ。
俺は宿屋に向かうことにした。
アイラについての話も聞くことが出来るだろう。
宿屋へ入ると恰幅のいい女主人が出迎えてくれた。
「ほう。他の世界からの旅人とは珍しいね」
女主人は、気さくに声をかけてきた。
もちろん炎の妖精だ。
宿屋は室内は全て岩で作られている。
この世界自体が高温なため岩以外の物は燃えてしまうのだろう。
「この街に来るアイラと言う者について何か知っていますか?」
俺はさっそく宿屋の女主人に聞いた。
「アイツはとんでも無い奴だよ。
塔の守り神だった火竜様を何かの方法で操ってるのさ。
それに毎週この街にアダンの実を奪いにくる」
「アダンの実?」
「アタシ達の食料さ。
この世界で唯一育つ植物がアダンの実さ。
アタシ達はアダンの実さえあれば生きてゆける」
この炎に包まれた世界。
水も食べ物も存在しないがアダンの実という物が食料なのか。
「ほれ。アンタにもやるよ」
女主人は俺に赤くて丸い実を投げてよこした。
葉っぱの無いパイナップルみたいな表面。
真っ赤な色。
人間の俺に食べられるんだろうか?
俺は半分に割って中の黄色い実をおそるおそる口に入れた。
水だ。
水が口の中であふれてくる。
しかし、味は無い。
「味が無いですね……」
俺がボソリと言うと女主人は大声で笑った。
「味が無いかい。
アタシ達には、何よりもおいしい味がするんだけどね。
それにソイツだけ食べてればアタシ達は生きられるしね」
果たして人間の俺も同じ様に生きられるかは謎だ。
しかし、水の心配は無くなった。
このアダンの実があれば大丈夫だ。
しかし、この実は、ここの住人たちの貴重な生命の源。
「ソイツはね。
育てるのが難しくてアタシ達はみんなで強力して育てて、少しづつ必要な分だけ収穫してるのさ。
それをあのアイラという奴は無闇に持っていくのさ。
このままじゃあアタシ達も生きて行けなくなるよ」
貴重な生命の源の上に育てるのも難しい。
そんな大切な物をアイラが奪っているというのか。
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翌日、俺は起きると宿屋に外で待機した。
もうそろそろアイラが来る時間らしいのだ。
昨日はもちろん岩のベッドで寝ることになった。
しかも、この世界は一瞬でも気を抜けば燃え上がるほどの高温だ。
RPの層を維持しながら眠らなければいけなかった。
イズン師匠から一番最初に訓練を受けた時の経験が役に立った。
硬い岩のベッドも羽毛布団のようにイメージし快適に寝ることが出来た。
その時、遠くから鳥のような大きな鳴き声が聞こえた。
街なかの妖精たちがざわついている。
誰かが叫んだ。
「火竜だ! アイラが来るぞ!」
上空から火竜が舞い降りてきた。
巨人のスルト王に引けを取らない大きさだ。
そして、火竜の背中から何者かが飛び降りてきた。
赤いショートカットの髪に長身の拳闘士。
アイラだ……。
「アイラ!」
俺は思わず叫んだ。
アイラはこちらへ近づいて来ると静かに言った。
「お前は誰だ?」
「誰って、アルスだよ!」
俺はアイラの肩に手をかけ言った。
「離せ」
アイラはそう言うと俺の腹のあたりに右拳で殴りつけてきた。
RPによる防御でまったくダメージは無い。
「アイラ! どうしたんだ!」
「貴様、やるなこれならどうだ」
アイラは後ろへ飛ぶと両拳に炎をまとい突撃してきた。
しかし、今の俺にとってアイラの攻撃は蚊ほどにも効かない。
「くっ、やるな」
アイラは悔しそうに言うと火竜の背へと乗った。
「やれ! ヴェルザー!」
アイラが命令すると火竜は大きく口を開いた。
口の奥に閃光が見える。
まずい、この一体には妖精たちも居る。
強烈な炸裂音と共に火竜から炎が放たれた。
「うおおおおおおおおおお!」
俺は火竜へ向かって飛ぶと炎を吸収するイメージで炎を包み込むように両手を合わせた。
火竜から発せられた炎は俺の合わせた両手へと吸い込まれていく。
あたりへ少しの被害を出すことも無く炎を吸い尽くした。
「お前! 何奴!」
アイラは俺に向かって叫んだ。
アイラは火竜と共に飛び去った。
妖精たちは歓喜をあげている。
「アイラああああああああ!」
周囲の喜びの声の中、俺の声だけが悲痛に響いた。
アイラは一体どうしたと言うのだ?
俺のことは全くわからないようだった。
ザムウェルに操られているのだろうか?
あれはアイラに間違いない。
しかし、絶対に正気では無い。
俺は何としてもアイラを救わなければならない。




