第六十七話 『第七層 ムスッペルスヘイムの層』へ踏み出そう ~アイラ、ノル、カールとの思い出の件~
『第七層 ムスッペルスヘイムの層』へと続く階段は真っ白で本当に登っているのか? わからなくなるぐらい特徴の無い景色が続く。
フレイヤに続きアイラの事が頭へ浮かんだ。
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『アイラ・エリザベート』イギリス王家の正当な継承者。
アイラもまた現実世界ではお姫様であり有名人だ。
日本に来日した時にはパレードも行われていた。
「キャー! アイラ様!」
辺りの観衆は道路を進む車の中から手をふるアイラに歓声をあげている。
「あーあ、今日はパレードだったか」
お姫様だの、パレードだのに全く興味の無い俺は、道路にひしめき合う観衆が、ただただ邪魔でしか無かった。
早く帰りたかったのに。
こりゃあ、車が通りすぎるまでまともに前にも進めないな。
どうせ進めないならお姫様を見ていこう。
俺は人混みの隙間から道路をぼんやりと眺めた。
数分経った頃だろうか?
黒塗りの車がゆっくりと進んで来るのが見えた。
観衆の声は一段と大きくなる。
俺の目の前に車がさしかかった時、後部座席にアイラの顔が見えた。
「え?」
一瞬目があって、俺に微笑んだような気がした。
(まさかね。そんなはずは無いか)
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そうだ。
あんな事もあったな。
アイラとは一応顔見知りなのかな?
まあ、俺の姿が全く違うので気づくことはないだろうが。
俺が現実世界の姿のままだったとしても気づかないだろうな。
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ヒョウのようなレオパード模様にブラウンの猫。
俺が小学生の頃、ばあちゃんの家に居た猫だ。
ベンガルという種類で温厚で甘えん坊。
とにかく元気に動き回る、水も大好きな猫だ。
しょっちゅう動き回っては首輪についた鈴の音が辺りに響いていた。
名前はタマだった気がする。
小学生と言っても低学年の頃の話で、いつの間にか居なくなってしまったのではっきりと覚えていない。
俺のばーちゃんは、なぜかタマにポテトチップスをよくあげていた。
タマの大好物だったようなのだ。
タマを呼ぶと鈴の音をさせながら近寄ってきて。
ゴロゴロと鳴きながら足にまとわりついてきた。
毛並みも綺麗で背中のあたりを撫でてやると雷のようにゴロゴロと鳴き声を大きくした。
タマは今頃、どこで何をしてるんだろうな?
懐かしいな?
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忘れていたな。
タマ。
俺の家はペットを飼ってなかったので、ばあちゃんの家に行くのが楽しみだった。
(ん? そう言えば)
ノルの奴。
タマに似てるな。
獣人族人型猫科『ノルフェージャン・フォレストキャット』。
ノルの正式な種族名。
尻尾と耳は、ヒョウのようなレオパード模様にブラウン。
思い出せば出すほどノルは似ている。
それこそ性格なんて全く同じに思えてきた。
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銀色に近い綺麗な白髪、白銀髪の少年は無邪気に話しかけてきた。
「ねー、ねー。君達、もしかしてここまで5人だけで攻略してきたの?」
銀色に近い綺麗な白髪、白銀髪の少年は無邪気に話しかけてきた。
カールと会ったのは、この世界が初めて。
ディシデリーズの塔の攻略途中だ。
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真っ白な『第七層 ムスッペルスヘイムの層』へと続く階段は、相変わらず何の変化も無いまま続いている。
カールの事は何も知らないんだな。
兄のブライス。父のザムウェル。
カールの兄と父がディシデリーズの塔の攻略へ出たことは知っていたが、まさか、こんな事になるとは思わなかった。
カールの母親については何も聞いた事が無かった。
塔を攻略する時に出会って話をして、けど、カールの事をあらためて思い出すと何も知らないことに驚いた。
それはカールも一緒か。
俺こそ別の世界から来た人間だしな……。
どれほど階段を登っただろうか?
階段の先に外へと続く出口が目に入った。
出口からは強烈な炎が吹き込んで来ている。
俺が一度転移した時に見た光景と近い世界が広がっているのだろう。
全てが炎に包まれた世界。
こんな世界にもし誰か飛ばされていたら生存は絶望的だ。
俺は集中しRPで体の周囲に熱を通さない層をイメージした。
「待ってろよ」
俺は出口の炎へと向かって歩みを進めた。




