第六十五話 転移しよう ~イズン師匠と再会した件~
オーディンとの戦いによりRPのコントロール。
いや、時間のコントロール。
それ以上の意思による世界のコントロール。
己の意思により操作可能であるということを知った。
そして、オーディンの目的は俺の力の覚醒。
ブライスとザムウェルと俺との戦いによる世界の力の均衡。
イズン師匠の青い扉。
ノルも習得した転移する能力。
今の俺なら思考するだけで使用可能だ。
ホームの記憶を手繰り寄せると一瞬周囲が青く光った。
「アルス! 何やってるだわさ?」
ホームの広間に居たイズン師匠は驚いた表情で言った。
「イズン師匠。お久しぶりです」
やはり思考するだけで一瞬で移動することも可能だ。
「アルス。あんた強くなったわさね。
数段どころじゃないほどの強さを感じるわさ」
俺はRPを0に抑えていたはずだが師匠のカンは鋭い。
俺は師匠にこれまでのすべての事を話した。
「大変だったわさね」
「師匠、俺は今からみんなを助けに行こうと思っています」
「アタシの扉の能力、それを自由に使えるようになったわさね」
「はい、どこにでも。おそらく」
「おそらく?」
「ここに来たのが初めてなので。
それにここは来た事がある場所ですが、オーディンから得た記憶で転移できるか? まだ未確認なんです」
「驚いたわさ。行ったことの無い場所へ行こうってのかわさ」
「はい、今から試してみようと思います」
第七層 ムスッペルスヘイムの層。
第八層 ニヴルヘイムの層。
第九層 ヘルヘイムの層。
まずは灼熱の世界『ムスッペルスヘイムの層』ここへ行ってみよう。
「今から『第七層 ムスッペルスヘイムの層』へ移動します」
「何かあったらすぐにここに戻ってきなさい」
「はい、師匠」
俺はオーディンの記憶で見た光景を参考に転移をイメージした。
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強烈な熱線なのか熱風なのかが強烈な暑さが襲って来た。
RPを集中して大気と自分の体の周りに熱を通さない層をイメージ。
熱は遮断された。
周囲は炎とマグマで満たされている。
しかし、すべてがぼんやりとしている。
全てがぼやけていて地平線まで揺らぎ、天もあるか無いかわからないほどに揺らいでいる。
まるで夢の中にいるような感じだ。
前へと進むが、ただぼんやりとした世界が続くだけだ。
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俺はイズン師匠の元へと戻った。
「どうだったわさ?」
「『第七層 ムスッペルスヘイムの層』は強烈な熱で覆われていましたが全てがぼんやりとしていました」
「やはりだわさ……」
「師匠は何か知ってるんですか?」
「いや、知ってるんではなく推測だわさ。
扉を使った転移の魔法。
あれは場所と場所を繋ぐというより、転移したい者の存在を再構築するイメージだわさ」
「つまり、どういうことでしょう?」
「つまり、アンタの記憶のイメージだけだと転移先での再構築が難しいってことだわさ」
「行ったことの無い場所へ転移するのは難しいということですね……」
「残念ながらね」
ディシデリーズの塔は一層ずつ攻略していくしか無いようだ。
「イズン師匠、俺は『第六層 ヴァナヘイムの層』へ戻り一層ずつ攻略して行きます」
「今度こそだわさね。
何かあったら何時でも戻って来なさい。
残念ながらアタシは足手まといになるだけだから着いて行けないわさ」
「はい、ありがとうございます」
俺は『第六層 ヴァナヘイムの層』への転移をイメージした。
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どこまでも白い世界。
周囲を見渡すと白い塔が見えた。
あの塔を登れば次の層『第七層 ムスッペルスヘイムの層』へ行けるはずだ。
「フレイヤ、ノル、アイラ、カール、今行くからな」
俺は現実の世界へ戻るため。
フレイヤを現実の世界へと戻すために旅をしてきた。
そう思った時、現実世界での思い出が急に頭の中へと浮かんだ。




