第六十三話 ケルビムを倒そう ~オーディンの全力の件~
「ホッホッホ。戦いは素手のみ。参ったと言ったら負けじゃ」
人間、ライオン、牛、ワシの4つの顔を持ち4枚の天使の羽を持つ『ケルビム』。
オーディン近衛兵隊長。
「オーディン様。良いのですか? 本気でやっても」
「ホッホッホ。構わぬ。構わぬ」
ケルビムは俺を見下ろして言った。
「早めに降参してくれよ。殺してしまいたくないからな」
「は、はい……。宜しくお願いします」
俺は、こういうイケイケな感じの奴には弱い。
「ホッホッホ。それでは始め!」
オーディンが合図するとケルビムはRPを開放した。
RP3000万。
相当強い。
「どうした? 動けぬか?」
「い、いえ……。失礼します」
攻撃の瞬間だけRPを開放しケルビムを殺さないように3000万に1万ほど乗せた程度の力で……。
「ぐ、ぐはぁ!」
俺の拳がケルビムの腹にささった。
ケルビムは苦しそうにしている。
「だ、大丈夫ですか?」
「な、なかなかやるじゃないか……」
ケルビムは脂汗を流しながら言った。
「くおぉおおおおおおお!」
ケルビムのRPが4000万まで上がった。
全力で殴りかかってきた。
まるで遅い。
「ぐ、ぐぼぁ!」
ケルビムはその場に倒れた。
俺の右拳がケルビムの腹に突き刺さっている。
「ホッホッホ。アルス君、見事じゃ。
ケルビムでは相手にもならんか」
「はい、正直な所、訓練の成果を試したいです」
「ホッホッホ。そうじゃの。そうじゃの。
ワシが相手になろう」
そう言うとオーディンの表情が変わった。
「ホッホッホ。全力で来なさい」
RP5000万。
RP6000万。
まだ、あがっていく。
今の俺には数値がわからない。
「す、すごいです」
「ホッホッホ。アルス君も本気で来なさい」
「いきます」
俺はRPを集中した。
この場所に来てからの一ヶ月ほどの間。
寝ている時間、休息している時間のRPを今この瞬間にたぐりよせる。
「ホッホッホ。これは想定外じゃよ」
オーディンのRPは9800万。
そして、俺のRPは1億3000万。
少なくともRPだけはオーディンを越えた。
だが、ブライスとの戦いの時のような事がある。
RPだけが上回っていても戦いの勝敗は別の話。
「いきます」
「ホッホッホ。きなさい」
オーディンに一気に特攻をしかけた。
だが、俺の拳は空を切った。
「ホッホッホ。恐ろしいほどのスピードじゃの」
オーディンは余裕でかわしている。
そして、俺の背面から一撃入れられた。
「ホッホッホ。強いの」
RPの差があるためか攻撃力自体はそれほどでもない。
振り向きざまに裏拳をオーディンに放つ。
だが、次も余裕でかわされる。
「ホッホッホ。すさまじいの」
オーディンのケリが俺の右腹に入る。
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30分ほど攻防が続いている。
と言っても俺の攻撃が外れ、オーディンの攻撃が入る。
だが、俺にはダメージがほとんど無い。
この繰り返しだ。
「ホッホッホ。このまま続けると最後はお主の方が先にRPが尽きる可能性があるぞい」
その通りだ。
おそらくこのままでは俺が自滅して終わりだ。
このスピードの差は一体何なのか?
「ホッホッホ。赤と青の魔法陣で何を学んでいたのか思い出すんじゃ」
魔法陣を攻略した時、意思により自分の周囲の時間をもコントロールした。
「そうか」
「ホッホッホ。気づいたかね?」
オーディンのこのスピード。
俺の時間さえもコントロールしているんだ。
RPを集中させオーディンの時間をコントロールする。
「うおおおおおおおおおおお!」
「ホッホッホ。ワシも負けんよ」
俺の中にオーディンが俺より先に動くイメージが入ってくる。
俺は、そのオーディンよりも早く動くイメージを練る。
だが、オーディンはその俺よりも更に早く動く。
しかし、俺はそのオーディンよりも更に早く動く。
頭の中にイメージが繰り返させる。
何十回。
何百回。
何千回。
イメージの攻防が続く。
「うおおおおおおおおおおお!」
「うむ。ここまでワシを追い詰めるとは想定外じゃ」
オーディンから余裕の笑みが消えた。
いける!
攻防のイメージは続く。
その数は数万に達しただろうか?
「うむ……。よくやった……」
俺の一撃がオーディンに入った。
オーディンは膝をついた。
「大丈夫ですか?」
俺はオーディンに方を貸して起こしながら言った。
「ホッホッホ。ちぃと久しぶりに運動しすぎたようじゃの」
「本当は俺を倒そうと思ったら一撃で倒せたんじゃないですか?
攻撃する瞬間、その箇所だけにRPを集中させるぐらいアナタなら簡単だったんじゃ?」
「ホッホッホ。バレておったか。
じゃが、今のお主にワシは敵わないじゃろうな。
訓練はこれにて終了じゃ!」




