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第五十二話 宿屋に泊まろう ~アールヴヘイムの層の件~

「ここがエルフの街です」


 ヘルはそう言うとローブを頭まですっぽりと被った。


「ハーフエルフの私が見られると奇異の目で見られますので」

「どうせ召喚者や亜人のパーティーなんだし気にするなよ」


 俺はローブの頭の部分を掴んでヘルの顔が見えるようにしてやった。


「え? でも、本当に迷惑かけますし……」

「大丈夫、大丈夫、心配しなくていいから」


 俺がそう言うとカールも横からヘルを励ました。


「もし馬鹿にしたり絡んでくる奴居たら俺が二度と歯向かえないようにしてやるよ」


 そう言うとカールは笑った。


「そうだニャ!」

「ちょっと、カール、ノルちゃん、暴力はダメよ」


 フレイヤが心配そうに言った。


「じょ、冗談だって」

「じょ、冗談ニャ……」


 カールとノルはバツが悪そうに返事した。

 街の中へ入ると金髪で色白の美しい妖精が行き交っていた。

 ギルドに道具屋、武器屋とダークエルフの街とうり二つだ。

 ただし、建物や石畳の道路から街なかのありとあらゆる物が眩しいほどの白で統一されている。

 

「アルス殿、あそこに宿屋があります」


 アイラの指差す先にダークエルフの街で見た宿とうり二つ、ただしこちらは、もちろん建物全て白色で統一されていた。

 

「まずは宿屋に行って泊まる場所の確保だ」


 ノルの魔法の扉でホームに戻ることも出来るが、現地に泊まれた方が情報収集も出来るしノルの負担が無くてすむ。


「こんにちわ」


 宿屋に入ると一瞬目を疑った。


「ド、ドラウさん?」


 いや、ドラウさんと見た目がまったく同じだが肌の色が真っ白だ。


「いらっしゃい。アンタ達、下の世界から来たんだね」


 色白のドラウさんは笑顔で言った。


「アタシはエゼル。ドラウの姉よ」

「は、はじめまして」


 俺達は全員挨拶した。

 ドラウさんにお世話になった話も、もちろんエゼルさんへと伝えた。


「ほう。ドラウのヤツもしっかりやってるみたいだね。

 アタシとあの子の父親はダークエルフ、母親はエルフ。

 アタシはエルフの血が強く、ドラウはダークエルフの血が強い」


 特別に『スヴェルトアールヴヘイムの層』のお金で泊めてもらうことになった。

 いつかドラウさんの宿屋に行った時にでも使うから大丈夫だとのことだ。

 結局、今回もエゼルさんにお世話になってしまうことになった。


「宿代をすぐに払えるように、まずはギルドに行って仕事を探してきます」


 俺が意気揚々と話すと、エゼルさんは神妙な顔をして言った。


「ギルドは辞めときな」

「何かあったんですか?」

「エルフ王の兵で固められエルフ以外の者が近づくと不当に逮捕されるって噂よ」

「な、なんでまた、そんな」


 ある日、突然、エルフの王妃『フェイ』が狂ってしまい。

 手をこまねいているうちに王妃は行方不明となってしまったらしい。

 その後、エルフ王『アールヴ』はエルフ以外の者の弾圧をはじめたのだ。


「待ってくだい。王妃の名前はフェイ?」

「ああ、そうだよ」

「この層に来る前、『スヴェルトアールヴヘイムの層』で圧政を敷いていたのがフェイです」

「な、なんだって! お優しい王妃だったのに」

「そして、フェイは俺達が討伐しました」

「なんてこったい」


 まさかこの世界の王妃がフェイだったなんて……。

 フェイの記憶、エルフの街の記憶、それに飢餓。

 一体何があったんだろうか?

 それにこの世界のエルフ王『アールヴ』に何が起きたのか。



---



 夕食のために俺達6人に十分すぎるほどの部屋を用意された。

 一階の食堂はエルフも来るためエゼルさんが気を使ってくれたのだ。

 エゼルさんの用意してくれた食事は、グラタンにスパゲッティー、サラダ、ジュースにフルーツとドラウさんに負けないぐらいの料理だった。

 味も最高だ。

 

「フェイがまさか王妃だったなんて」

「元々は平和を愛する王妃様だったらしいわね。何かあったのかも……」


 フレイヤは食事の手を止めると悲しそうに言った。


「ダークエルフ、エルフ、どちらの世界も平和だったらしいですね。

 それが最近になっておかしくなったようです」


 アイラが口を開いた。


「フェイを倒した時。

 あの時、フェイの記憶が俺の中に入ってきたんだ。

 おそらく場所はこの『アールヴヘイムの層』の世界。

 そこで飢餓に苦しんでいた」

「でも、エゼルさんの話を聞いても『アールヴヘイムの層』は最近まで平和な世界で飢餓なんて無かったようだけど」


 カールはメロンのような大きなフルーツを頬張りながら言った。


「よし。明日、王様の元へ行ってみよう」


 俺がそう言うとフレイヤが答えた。


「危険じゃない?」

「いずれにしろ危険は承知の上、次の層へ向かうためには避けては通れない道だし、それに俺達が全員で連携して危険な戦いになるなんて考えにくいよ」

「そうだニャ! そうだニャ!」


 ノルも俺に賛成のようだ。


「オレも賛成。めんどくさいこと嫌いだしストレートに行こうぜ」


 カールも乗り気だ。

 フレイヤとアイラは少し心配そうな顔をしていたが最終的に賛成してくれた。

 ダークエルフ、エルフの世界に何が起きているのか……。

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